YouTubeのチャンネル登録者数が21万人を超える在日ロシア人YouTuberで、母国によるウクライナ侵攻について一貫して反対の意思表明を続けているピロシキーズ(小原ブラスさん、中庭アレクサンドラさん)が「傘で突かれ毒殺されたケースもある」と述べ、反戦の声を上げるうえで向き合う恐怖と覚悟を明かした。
今回のウクライナ侵攻を巡って、ロシア当局は言論弾圧の姿勢を強めている。実際に「虚偽情報を流した」として、独立系テレビやラジオ放送の遮断を決定。さらに当局が虚偽とみなした報道などに対し、最大で15年の禁錮や懲役が科される法案を可決したばかりだ。
ピロシキーズはこれまで、あらゆるテーマに沿った文化の違いなどを笑いにして面白おかしく、分かりやすく発信することでチャンネル登録者数を増やしてきたが、母国によるウクライナ侵攻を受け、その姿勢に変化が生じたという。
その理由について小原さんは「この侵攻まではなるべく中立な意見。自分の考えを言うのではなく、日本の側から見たらこういう風に物事は見えるし、ロシア側から見たらこういう風に見えるよね? というところで意見を留めるようにしていた。つまり、自分たちがどう思うかということを言わないようにしていた」と説明。その一方で「自分の身に危険が及ぶというのはまだいいにしても、家族であったり、子どもであったり…。それはロシア国内でも『勇気がないのか』と叩かれてしまってる人もいる。自分だけの問題だけじゃない。家族…そこって、すごく縛りが大きい。私たちもそういう考えはあったのだけど、ウクライナ侵攻に対しては我慢を逸脱する。民衆が我慢できなくなるタイミングが来るという意見もあるが、私たちの中では、それが今回の侵攻だった」と方針を転換し、“反戦”の意思を明確に表明するに至った経緯について述べた。
一連の発言を受け、千原ジュニアが「そういったこと(反戦)を発信することに家族の反対はないのか」とたずねると、中庭さんは「私の家族は結構敏感になっている。そういう話はしないで、触れないで。危ないかもしれないからとは言われている」と難しい立場であると応じた。
小原さんは「実際、ソ連時代に海外で反政府寄りの発言を繰り返していた人が傘で突かれて毒殺されたケースがあった。さすがにこの時代にそういうことはないのではとは考えているが、それでもやっぱり、頭の中にそういった考えがよぎることはある」と恐怖と隣り合わせであることを認めたうえで「人混みには近づかないようにしよう。マスクに帽子しておこうという考えで行動はしている」と日頃の対策についても言及。
その一方では「反対の声を上げたとしても、プロパガンダを見ている人たちに止められたり、警察に捕まってしまったりということがある。どこまで届くのか。例えば今回、反戦の声が物凄く大きくなったとして、ソ連の頃のように多くの人数がクレムリンに集まったとき、果たして発砲されたりされないのか。最悪は核のボタンを押すということにならないのか。反戦の声を上げ続けることが、歴史上、本当に正しいこととして評価されるのか、今の段階でははっきり分からない。でもいまは、それを信じている」など、複雑な心境も明かした。
ロシア政治が専門で旧ソビエト崩壊時にモスクワにいた筑波大学の中村逸郎教授は「日本を含めた外国にいるロシア人はもちろん、ロシアのことが好き。プーチン政権が流す情報だけでなく、別の角度から自分の国っていうものを見れる立場にいる」と指摘するも「声高に“反プーチン”、そして“反戦運動”といったような形の声を上げることができるかというと、実際はそれも非常に難しい。一言で言えば国境を越えて毒殺するケースもある。外国にいるから自分の身は安全というわけにはいかない」と続けた。(ABEMA『ABEMA的ニュースショー』)
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