経済制裁で核使用の確率が上昇? ロシア“北朝鮮化”に懸念の声も…戦争を終わらせる策は
【映像】ロシアは“巨大な北朝鮮”になる――排除と孤立化
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「(プーチン大統領は)ウクライナに対して非人道的な戦争を始めた“人殺しの独裁者”で、“生粋の悪党”に団結して立ち向かわなければならない」

【映像】ロシア・モスクワ市内ではATMに長い行列が(1:05〜)

 アメリカのバイデン大統領が、これまでにない強い表現でプーチン大統領を非難した。すでにアメリカ、日本、EU(ヨーロッパ連合)など、世界各国から政府要人や大富豪の資産凍結、国際的決算システム「SWIFT」からの排除など経済制裁を受けているロシア。AppleやAmazon、マクドナルドといった大企業も次々と撤退や営業停止を表明し、孤立を深めている。

 今後、ロシアの孤立化が加速すると、何が起こるのか。ニュース番組『ABEMA Prime』では、専門家とともに議論した。

 18日に行われた米中首脳会談でバイデン大統領は「ロシアを支援すれば、その結果が伴う」と述べ、ロシア支援に制裁で応じる構えを習主席に示した。ただ、中国側の発表にはこのバイデン大統領の発言に関する部分はなく、習主席がどのように応じたのかも明らかにされていない。中国は今後ロシアを支えるつもりなのだろうか。

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 東京大学公共政策大学院教授で、国連安保理イラン制裁委員会専門家パネルの委員を務めた経験がある鈴木一人氏は「表立っては支えないだろう」と話す。

「ロシアが孤立している中で『負け組に与するのはあまり得ではない』と、中国もよく分かっている。ただ、アメリカと対立する意味で、ロシアと中国は利益を共有するから、倒れたら困る。ロシアがボロボロになってしまっても困るので、ある程度の密貿易、そういった裏側の見えない形で支援や関与はしていくだろう。基本的に表立ってロシアを支えたり、大っぴらに軍事支援をすることはないと思う」

 今行われているロシアへの制裁は、どのくらい効果が出ているのだろうか。
「最も効いているのは金融制裁。国債のデフォルトだ。これによってロシアは戦費の調達が難しくなっていく。今やっている経済制裁は『プーチン政権を倒す』『ロシアを崩壊させる』ではない。一番大きいのは“戦争のコスト”を高めることだ。戦争を続けるにはとてもお金がかかる。お金の調達が難しい状況を作り出す必要があり、これに一番効いているのが金融制裁だ」

 『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「ロシアはSWIFTから外されて、国際経済取引ができなくなった。これがけっこう強い制裁なので、逆にこれ以上強い経済制裁はあまりないのではないか」と疑問。鈴木氏に「戦費自体がロシアの自国通貨であるルーブル建てだったら、何の問題もなく戦争を続けてしまうのではないか」と聞いた。

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 鈴木氏は「ロシア国内から全ての戦費を調達できるほど、ロシアは豊かではない」と回答。必ず外国から借りなくてはいけなくなる。外国から戦費を借りるために必要なお金、要するにロシア国債を発行する必要がある。ルーブルは刷れば刷るほど価値がなくなる。刷る量を増やしても、お金の価値は増えない。ルーブルを刷ったところで戦費が賄えるわけではない。これはどこでもそうだが、日本も(戦時中は)何の価値もない軍票をどんどん出した。こういうことをやっても、基本的には戦費の調達にならない」と述べた。

 IMF(国際通貨基金)が発表した2021年のロシアのGDP(国内総生産)は11位。ロシアの“軍事大国”というイメージは、実質を伴っていない“ハリボテ”なのだろうか。

 鈴木氏は「北朝鮮もそうだが、自分たちの経済で何を優先するかだ。軍事を優先することは可能だと思う。ただ『戦争をやる』はまた別で、派遣する兵士や食糧、撃つ弾の調達など、兵隊を整えるためにすごいお金がかかる。桁が違うお金のかかり方になるので無謀だ」とコメント。その上で、ロシアが“北朝鮮化”する懸念について、こう話す。

「北朝鮮もずっと経済制裁が課せられているが、ロシアにも似たような展開がありえる。すでに現地でマクドナルドが閉まったり、ユニクロがなくなったりしているが、制裁の一番の負担は国民にいく。お金がなくなったら、権力者が国民に向かって『お前、金を寄こせ』『言うことを聞かなかったら逮捕するぞ』と脅す。ターゲット制裁といって、プーチン大統領の個人資産なども全部凍結されているが、プーチン大統領は自分の資産よりも戦争に勝つ方が大事だと思っている。大統領なので自分の個人資産じゃなくてもご飯は食べられるし、プーチン大統領の生きる術をなくすには、ロシアという国家自体を壊さなきゃいけなくなる。だから、プーチン大統領自身を困らせて、戦争を終わらせることは難しい。先ほども言ったように、戦争するためのお金がない状態を作るしかない」

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 ここで脳科学者の茂木健一郎氏が「SWIFTの制裁は、どれくらいの時間でクリティカルなところにいくのか」と質問。鈴木氏は「実は、そもそもSWIFTの制裁そのものがあまり問題になっていない。SWIFTでは、ロシア銀行最大手のズベルバンクと第3位のガスプロムバンクが切り離されていない」と答える。

「今、おそらく70億ドルくらいの現金預金がロシアにあるはずだ。私が勝手に思っている停戦の『Xデー』は5月9日の対独戦勝記念日だ。対独戦勝記念日は、ロシアにとっては輝かしい栄光の日。その日までに決着がついていないと、みじめな対独戦勝記念日になる。プーチン大統領もこの日までに決着をつけないとまずいと思っているはず」

 プーチン大統領は18日、ウクライナへの侵攻について、「ジェノサイドに苦しむ市民を救うことが軍事作戦の目的だ」と述べ、国民に支持を呼びかけた。今後、ウクライナとの停戦協議がまとまらない場合、ロシアが核兵器を使う選択肢はあるのだろうか。

 ひろゆき氏は「これ以上強い経済制裁があまりない気がしていて“今さら核撃っても変わんないんじゃね”ということでむしろ核撃つ確率上げているんじゃないか」と推測する。

 鈴木氏も「確率は低いが選択肢はあると思う」と回答。「ただ、ロシアが核兵器を本気で使って、その後どうなるか。何もしなかったらシリアの二の舞になるので、西側も困って、何らかの行動をとるだろう。そうなるとプーチン大統領もアメリカと直接戦火を交える覚悟でやらないとダメだ」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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