日本でも人気がある中国・三国志時代の天才軍師、諸葛孔明。蜀だけでも劉備、関羽、張飛など、有名な武将が多くいる中、他の軍師たちも羨む抜群の知性を発揮したことは、三国志に触れたことがある人であれば、知らない人はいない。芸人仲間との雑談をきっかけに、今から20年ほど前に三国志の魅力に触れたスピードワゴン・井戸田潤も、この稀代の天才については絶賛だ。「今の世の中、『3』に縛られてるんですよ。これも『天下三分の計』なんじゃないですかね」。漫画、書籍を読み込み、番組ロケでは諸葛孔明ゆかりの地にも行ったことのある井戸田に、三国志の魅力を聞いた。
井戸田が初めて三国志に触れたのは、20年ほど前のこと。大部屋の楽屋で、周囲の芸人仲間たちが三国志の話題で盛り上がっていたのが、耳に入っていた。そして翌日、学校のロケに行ったところ、教室の後ろに日本史と中国史の年表が並んで貼ってあった。
井戸田 「昨日、三国志の話をしてたな」と思って年表を見たんですよ。三国時代を探したら、日本はその時まだ邪馬台国だった。これはちょっととんでもないなと思ったんです。中国の三国時代を、日本の戦国時代に重ねていたんですけど、それよりもはるか昔に計略のある戦いがあるんだと驚いて。その仕事終わりに横山光輝さんの三国志の漫画を全巻買って帰りました(笑)。
序盤では董卓や呂布の「残忍さがヤバい」と言い、井戸田が大好きな関羽は、その後に劉備、張飛と義兄弟の契りを結び、仁義に厚い猛将として大活躍する。登場人物の多さ、歴史をもとにしたストーリーの広大さなど、次々と魅力を見つけては、ハマっていった。
井戸田 三国志の内容をよく知らない人でも「三国志」というワードは知っていますよね。もう日本の中でもスタンダードに落とし込まれている。漫画の作品も多いですよね。
井戸田の三国志好きが知られるようになると、イベントや番組出演の機会も増えた。有名な「赤壁の戦い」を描いた映画『レッドクリフ Part II -未来への最終決戦-』のDVD発売&第2回三国志検定のPRイベントにも出演し、三国志検定にも挑戦。NHKの番組では、諸葛孔明の末裔が住むという八卦村も訪れた。また、国内外にある関帝廟(神格化された関羽=関帝を祀っている場所)にも足を運んだという。
三国志の話になると、井戸田がよく周囲にするのが「3」の話だ。群雄割拠だった中国を、魏・呉・蜀の3つに分けようという諸葛孔明の「天下三分の計」。これがなければ、中国の歴史も大きく変わっていたことだろう。
井戸田 僕がよく唱えているのが、世の中は「3」に縛られているってことです。僕らの業界だったら、1クールといえは3カ月。学校だって1学期、2学期、3学期じゃないですか。だいたい、なんでも「3」。女の子とデートしても、3回目でキスできそうだし、お笑いだって三段落ち。これも「天下三分の計」で、孔明の案に沿って生きてるんじゃないですかね。結果、孔明が全てのものを操っているんですよ(笑)。
笑いながら語ってはいたものの、割り切れる偶数ではなく、絶妙にバランスが取れている気がする「3」。今から約1800年前に考え出された計略に、現代人もコントロールされているとしても、不思議はないかもしれない。
不世出の天才、諸葛孔明をメインに描いた作品も多い中、2022年4月5日(火)からは同名の漫画を原作とした新作TVアニメ「パリピ孔明」も放送開始となる。五丈原の戦いで死期を迎えたと思われたが、ふと意識を取り戻すと若きころの肉体で、現代の東京・渋谷に転生するというストーリーだ。クラブで出会う月見英子の歌声に惹かれ、歌手を目指す彼女の軍師となり、次々と策を授けていくあたりが、三国志ファンにもおもしろいポイントになってくる。
井戸田 最初、孔明が渋谷に降り立つんですけど、ハロウィンの日なんですよね。あれがすごくスッと入ってきました。それから孔明が、スマホをたった1日でマスターするんですよ。あれだけの天才だから、合点がいっちゃうんですよね。1800年前の人間がスマホをクリアするのに、1日でできる。そんなわけないのに「孔明だから」で全てがクリアになっちゃうというか(笑)。三国志に出てくる人も天才ばかりですけど、孔明と同じ時代に生まれたことを、みんな憂いていますよね。それでも孔明がパソコンで調べ物をしていた時に、自分は「聖徳太子ほどではない」というリスペクトが入っていたのは、日本人としてはうれしかったです。
三国志の軍師に、渋谷のクラブにいた歌手志望の女の子。まるで共通点が見つけられなそうな組み合わせでも「諸葛孔明だから」で解決してしまうあたりも、それだけ日本でもその存在が絶対的であるという証明だろう。最後に、もし井戸田のマネージャーをしてくれるとしたらどうか、という質問を受けるとこう答えた。
井戸田 「ハンバーグ師匠」のこの先をどうしたらいいか聞きたいですね(笑)。ここまでなんとか自力で焼き上げてきましたけど。新たなひき肉料理のキャラを作るかもしれないですね(笑)。「パリピ孔明」には、悩んでいる若者も結構出てくるから、見れば登場人物の誰かの境遇に感銘できると思うので、若い子にも見てほしいですし、孔明側から見るとしたら普段アニメを見ないおじさんにもおすすめです。
(C)四葉夕卜・小川亮・講談社/「パリピ孔明」製作委員会