「3時間後同じ場所にいたら僕も死んでいた…」スパイに間違われる? 強いストレスで闇市に? 23歳日本人ジャーナリストが明かすキエフの今
【映像】キエフ取材中の日本人ジャーナリストが明かす「2時間だけの闇市」とは(5:30ごろ)
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 NATO(北大西洋条約機構)の臨時首脳会議で24日、ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで演説を行った。

「1%の戦車でいい」

 ロシア軍と戦うため、武器の支援を訴えたゼレンスキー大統領。侵攻から約1カ月経った今も、首都キエフでは、いまだウクライナ軍とロシア軍の攻防が続いている。

【映像】ミサイル攻撃を受けたマンションで…血痕が生々しいベッド(1:22ごろ)

 26日、首都キエフを取材中の日本人ジャーナリスト・小西遊馬氏(23)がニュース番組「ABEMA Prime」に生中継で出演。キエフの今を語った。

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「僕自身もキエフに入る前はかなり緊張感があると思っていたが、予想ほどではなく、日中は外出も可能だ。夜の8時から朝の7時まで外出禁止令が出されているが、それ以外の日中は人々もコーヒーを飲みに行ったり、公園に遊びに行ったりできる。不足しているのはタバコくらいだ」(以下、小西遊馬氏)

 日々攻撃にさらされる住民の姿を伝えたいと、今月16日に首都キエフに入った小西氏。ショッピングモールは営業していないが、道端にある小さいコーヒー店やコンビニ、スーパーマーケットなど、必需品を売っている店は営業しているという。

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 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏が「お酒は入ってくるのか。火炎瓶に使われているのか」と質問すると、小西氏は「お酒は今買うことができない状況だ」と回答。

「火炎瓶用に使っているというよりも、夜中にいつ爆撃がきても対応できるように、基本的に飲酒があまり推奨されていない。ただ、このように非常に強いストレス下の中で、逆に飲んで一時でも忘れたい人もいるので、日中に2時間だけ開く闇市みたいなところで、並んで買っている」

 CNNによると23日、独立系ニュースサイトのロシア人ジャーナリストのオクサナ・バウリナ氏が、ロシア軍の砲撃によって死亡した。そのほか、複数のジャーナリストがキエフ近郊で命を落としている。

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 こうした状況を受け、大手メディアのほとんどがキエフから撤退。日本メディアも、海外メディアや小西氏のようなフリージャーナリストに最前線の情報を頼らざるを得なくなっている。

 大手メディアのジャーナリストが首都キエフを去る中、現地の人から「なぜここにいるのか?」と聞かれないのだろうか。

 小西氏は「危険性で『なんでここにいるの?』というよりも、2日前にゼレンスキー大統領の側近が『ジャーナリストもスパイになり得る』と発言した。そのせいで今取材がかなり厳しくなっている。本当にカメラを持って歩いているだけで、市民の人から『お前、何撮ってんだ』と言われる」と話す。

 ウクライナ入りする際に、報道機関のジャーナリストである証明書などは特に発行されなかった。しかし、取材には申請が必要だといい、小西氏は「フリーとしては非常に厳しくはあったが、今までいろいろ取材をさせていただいていたので、そこから証明してもらった」と説明する。

「香港の民主化運動のときも、現地で取材をした。そこでは、まだ催涙弾やゴム弾だったので、本物の実弾や爆弾が飛び交う場所は僕も初めてだ」

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 小西氏自身、ウクライナ語は全く分からず、現地の人に通訳を手伝ってもらっているという。街に住む人たちの雰囲気はどう感じているのだろうか。諦めているようなムードはあるのだろうか。

「諦めムードは全くと言っていいほどない。日本にいるとなかなか分からないが、こちらの人たちはロシアという国、プーチン大統領という人間がどういう人かをよく理解している。一度でも降伏してどこか一部を諦めたとしたら、次またどんどん来ると知っている。『諦めるなんてあり得ない』という感じだ。ただ、爆撃の音はどんどん近くなっていて、回数も増えている。それに対してはみんな『いつ死ぬか分からない』という気持ちは抱いている。今、僕は現地の人に家にステイさせていただいているが、毎日闇市で買ったお酒を飲んでいる。本当に明日死ぬかもしれないから、できるだけ楽しんでいる」

 ロシア軍が攻撃する場所に、何か傾向はあるのだろうか。完全に無差別なのだろうか。小西氏は「2パターンあると思う」とした上で「1つはやはり、軍事的に関わりがある場所を狙っている。もう1つは、ある程度無差別かつキエフ市内の広域に爆弾を徐々に落としていくことで、心理的に疲弊させていく狙いがあるのではないかと思う」と述べた。

 実際に地元の人たちと生活する中で1カ月経つが、どんなことを感じているだろうか。

「一番に感じるのは結束力の高さだ。そこにとても感動する。みんながそれぞれの持ち場をもって、本当に戦っているという感じだ。例えば、僕は今このアパートメントで現地の人に泊めていただいているが、彼らはこういう外国からのジャーナリストを全力で支える役割をやっている。市内の学校は今、完全にやっていないので学校の給食室を開いて、市民の方々が無償で毎日、1000〜2000食ぐらい作って最前線の兵士の人たちにお弁当を届けている。本当に、みんながそれぞれの役割をもって結束して戦っている」

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 ロシアの工作兵が首都キエフに入っているといった報道もある。小西氏は、前述のゼレンスキー大統領の側近による発言「ジャーナリストもスパイになり得る」に触れた上で「キエフ市内の軍事施設がかなり爆撃を受けたのも、やはりロシアの工作員が位置を特定しているからだ。ちょうど2日前、一日中外出禁止令が出た。これは一気に工作員を排除する目的がメインだった。僕の住んでいる場所からは、銃声がかなり聞こえる。かけ合いで銃を発砲していたし、そのために市民を1回外出禁止にして、絶対に巻き込まれないようにしていた」と話す。

 ロシア軍の攻撃で命を落とす可能性だけでなく、同時にウクライナ側からスパイ容疑をかけられて撃たれてしまうリスクもある。小西氏は「ロシアのジャーナリストが一昨日ぐらいにキエフで亡くなった。僕も3時間前に全く同じ場所にいた。3時間後、そこにいたら自分が死んでいた」という。

「今日も取材をしていて、兵隊に『お前、何してるんだ。身分証を見せろ』と言われた。酩酊している感じの兵隊で、後々聞いたら、2日前にマリウポリで息子さんが殺されていた。精神的に安定していない状態でマシンガンを持って『お前何してるんだ』と聞かれたら、やはり怖い」

 ゼレンスキー大統領の側近の発言によって「市民の人たちもピリついてきている。もう取材自体がすごく難しい」と話す小西氏。近日中にキエフを発つ予定だという。

 最後に、現地からリスクを冒してでも伝える意味について、小西氏はどう考えているのだろうか。

「昨日、個人のジャーナリストと一緒にいて話をした。そこで思ったのが、僕たちジャーナリストは1枚の写真だったり、一瞬の映像だったり、そういうものが、世界を変えられるんじゃないかと信じている。そこがとても大きいと思う。過去に写真家のユージン・スミスが世界に水俣病の実態を伝えたり、ケビン・カーターがアフリカで『ハゲワシと少女』という有名な写真を撮ったりしている。そういう、何か1つが、伝えることを超えて、人を変えていくことができるんじゃないか。僕はそれを信じている」

(「ABEMA Prime」より)

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