小説、漫画、映画、アニメにゲーム。中国の歴史ながら、日本でも多くのファンを持つのが「三国志」だ。単なる戦いだけでなく、劉備・関羽・張飛の義兄弟に代表される、人と人とのつながり「義」が強く描かれる作品も多く、ファンの心を離さない。今から20年ほど前に、この三国志に触れたのがお笑いコンビ・スピードワゴンの井戸田潤。今では三国志好きの芸人で集まれば、どの武将が好きか、あの時こうだったら、とあれこれ思いを巡らせて盛り上がるほどだ。過去には番組ロケで「諸葛孔明の村に行ったことがある」という井戸田に、長く愛される三国志の魅力を聞いた。
三国志は魏・呉・蜀という3つの国に分かれて戦いが繰り広げられた3世紀前後の話。多くの個性豊かな武将が登場し、主人公として描かれることが多い蜀の劉備だけでなく、義兄弟である関羽や張飛、劉備を支える天才軍師・諸葛孔明、敵対する曹操や孫権などにも、それぞれ多くのファンがついている。井戸田はこの武将たちや、今から約1800年前の時代に、今でもなるほどとうなずきたくなる計略が多く生まれていたことに魅力を感じたという。推し武将と聞かれれば関羽だが、戦いを統率する軍師にも魅力的な者が多く、ここを語りだしただけでも、話は尽きない。
井戸田 呉の魯粛という軍師が好きなんですよ。たとえば有名な赤壁の戦いだって、彼がいなかったら生まれていないですから。蜀の孔明、後の周瑜、どっちにも行ってうまいことつなぎ合わせたわけですから。僕も中間芸人で、MCで突出して強めで行くタイプでもないし、ひな壇に行ってくれと言われれば行きます。両方の顔色を伺う感じがわかるから、魯粛とは一番腹を割って話せる気がするんですよね。「孔明がだいぶ言いくるめてくるけどさー、ちょっと周瑜も怖いんで」とかって、番組のスタッフとか先輩芸人の愚痴を言うのと似てますよね(笑)。
ここまで三国志を知る井戸田だからこそ、取材ロケの仕事も入る。過去にNHKの番組で、諸葛孔明の末裔が住むという中国・八卦村を訪れたことがあった。
そこは孔明の末裔しか住んでいないというところで、おそらくそんなはずはないんですが(笑)。観光名所になっています。孔明が考案した饅頭がいただけて、そこで宿泊もできました。村自体が八角になっていて、真ん中に池がある。そこにはたどり着くけど、よそ者が出られないように迷路になっているんです。そこは素晴らしかったですね。相方の小沢さんは赤壁を見に行ったり、周瑜の末裔に会いに行ったりしてましたね。
ゆかりの地を訪れると、自分が三国志の時代に生きたとしたら、ということも想像する。戦いの時代において華々しいのは魏や蜀ではあるが、戦いに参加しない庶民であったなら、むしろ戦いは少ない方がありがたい。よって、呉を選んだ。
井戸田 一番幸せなのは呉でしょうね。長らく戦争もなかったし。あの時代に生まれるなら、俺は呉を選びます。あと魯粛のうちは金持ちだから「あれ食べさせて」とか言えそうじゃないですか(笑)。諸葛孔明は天才でしたけど、魯粛も聡明な人ですよ。自分の財産を打って、民に与えていましたし。
井戸田は転生したら呉を選ぶようだが、4月5日(火)からは諸葛孔明が現代の東京・渋谷に転生してきたというTVアニメ「パリピ孔明」がスタートする。ハロウィンの日、渋谷のクラブに若い頃の姿で転生した諸葛孔明が、歌手を目指す月見英子の歌声に惚れ込み、一緒にデビューに向けて奮闘するというストーリーだ。
井戸田 最初「パリピ孔明」というタイトルを聞いた時に、孔明自身がパリピだと思ったんですけど。ただお話としては、外から見るとパリピに見えるけど、一生懸命にやっている人を孔明が助けに行く話。その人間模様、バックボーンが見えて、すごくいい作品だなと思いました。これから孔明以外に、どんな武将が出てくるのかも楽しみです。
今までの三国志を題材とした作品としては、まるで異なる「パリピ孔明」。剣や弓は使わずに、諸葛孔明が渋谷でどんな戦いを繰り広げるのか。井戸田もこの春注目する作品だ。
(C)四葉夕卜・小川亮・講談社/「パリピ孔明」製作委員会