「ロシアは北海道の権利を有している」仰天主張を機に考える日本の防衛 「台湾有事が起きれば南西諸島は中国の軍事的なコントロール下に置かれる」
【映像】「北海道もロシアの領土」仰天発言をした人物の正体
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 ロシアによって続けられるウクライナ侵攻。この悲劇は近い将来、日本にとって対岸の火事ではなくなるかもしれない。では、日本が有事に巻き込まれたら、どうなってしまうのか。10日、ABEMAABEMA的ニュースショー』では日本の防衛について検証した。

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 岸田総理は一連のロシアによる侵攻について「断じて許されない戦争犯罪」と厳しい口調で非難を行うなど、ロシアの脅威に対する対応は来る参議院選挙の争点にもなっている。さらに岸田総理は「今回のような力による一方的な現状変更をインド太平洋、とりわけ東アジアにおいて決して許してはいけない。あらゆる選択肢を排除せずに検討し、防衛力を抜本的に強化する」とも述べている。

 日本の防衛費は今年度予算で過去最大となる約5兆4000億円が計上されている。自民党の茂木幹事長は先月4日にBS朝日の取材に応じた際「GDPと比べて何%というよりも、本当にこれだけの脅威がある。新たな脅威が生まれている。そこから国民、主権、領土を守り切るにはどれだけの体制が必要なのか。その体制を作るには、どれだけの予算が必要なのか。こういう発想に変えていかなくちゃいけない」とする認識を示している。

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 7日には自衛隊の解消や日米安保条約の破棄を主張する日本共産党の志位和夫委員長も「急迫不正の主権侵害が起こった場合には自衛隊を含むあらゆる手段を行使して国民の命と日本の主権を守り抜く」と述べるなど、従来の方針と異なる発言が物議を醸したが、この発言は参議院選挙への布石という見方もある。

 物議を醸したといえば、先日、ロシア「公正なロシア」のセルゲイ・ミロノフ党首が「どの国にも願望があれば隣国に領土要求を提出することができる。専門家によれば、ロシアは北海道の権利を有している」などとする驚きの発言を行った。ミロノフ氏の発言はプロパガンダの一環とみられているが、いざとなれば北海道もロシアの領土であるという正当な理由を見出すことができ、侵攻の脅しともとることができる。

 事実、ロシアが実効支配を続ける北方領土では、ロシア軍による大規模な軍事演習が行われ、ロシア海軍の艦艇が津軽海峡を通過するなど、緊張を煽る行為が続けられている。「もしも」の脅威は防衛力を保持したい保守派などによって利用されるケースがあるが、もしもの脅威に対して、現在の日本ではどのような対処ができるのか。

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 元航空自衛官のアキキンさんが「守るというのがまず第一で、守るためにやはり攻撃もしないといけないということで、攻撃を磨いているという感じ」と話せば、元海上自衛隊の高本剛志さんは「護衛艦、艦艇に飛んでくる敵からのミサイルを撃ち落としたりとか、防衛の訓練をしている。その準備はできている」と続ける。さらに元陸上自衛隊のトッカグン小野寺さんは「やることは物資補給関係が多いのかなと思う。例えば輸送機を出す、必要な物資食料などがあれば運ぶとか、あとは警備」とする考えを述べた。

 日本が外国から侵攻される“日本有事”の際は、同盟国の米軍との戦いになるため回避される見通しだが、2021年夏には、日本が戦争に巻き込まれる可能性について関係者によるシミュレーションが行われている。参加したのは元政府高官や自衛隊元最高幹部、政治家らおよそ30人。専門家が想定した有事とは、台湾有事である。

 中国の習近平国家主席は「祖国の完全統一という歴史的任務は必ず実現しなければならず、また必ず実現できる」と発言。これに対して、元米インド太平洋軍の司令官であるフィリップ・デービッドソン氏は米議会で「中国統一を目指す台湾有事が6年以内に起こる可能性がある」と私見を述べている。

 具体的に台湾有事とは、独立を主張する台湾を中国が武力で制圧する事態のこと。ではなぜ、台湾有事が日本有事へとつながっていくのだろう。

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 笹川平和財団上席研究員で安全保障の専門家である小原凡司氏は「もし中国が台湾に武力侵攻しようとすれば、台湾から非常に近い与那国島、石垣島、宮古島をはじめとする日本南西諸島は中国の軍事的なコントロール下に置かれる。そこに住んでいる住民の生命や財産が危険にさらされるということになり、日本にとっての直接の安全保障の脅威だということができる」とその理由を説明する。

 また小原氏からすると、中国による台湾統一は「やる」「やらない」ではなく、“いつやるか”の問題。台湾が有事となった場合、日本はどうなるのか――。そこに日本の防衛の現状と課題が見えてくると小原氏は指摘する。

「アメリカが台湾の防衛のために軍事力を使用するとなると、今度は中国がアメリカに攻撃をした時には、日本がアメリカの船や飛行機を守らなければいけなくなる。安保条約や同盟では、相互に防衛する義務を負う。一方的にアメリカが日本を守るというものではなく、日本もアメリカを守る義務を負っているのが同盟ということになる」
 
 実際に台湾有事が発生した場合のシミュレーションについて小原氏は「中国が広い海域、広い空域を封鎖して、そこに他国の軍隊が入れないようにするというオペレーションを必ずやってくる」と話す。つまり、台湾から100キロの南西諸島が戦地となってしまうのだ。

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 いざ、有事が起きてしまったら、日本政府、自衛隊はどう動くのか。じつは前述した元政府高官や自衛隊元最高幹部、政治家らのシミュレーションで解決できなかった問題も存在しているという。

 国際政治学者の舛添要一氏はウクライナと台湾では状況が異なると主張する。「ウクライナは独立国。それに攻めて行ったので完全な国際法違反。しかし、中国と台湾の関係は国際法上も台湾は中国の一部と認めていて、それを代表する政府が北京にあるとしている。私たちは台湾を国と言ってはならず、地域という。香港は中国に戻った。ああいう形で話し合いで戻ればいいが、しびれを切らして力でやるときが一番の問題。国際世論で台湾がやられたからアメリカや日本が助けに行くといった説得力がどこまであるか。非常に難しい問題だ」とする認識を示した舛添氏は、一方で「ただ、そういうことがあり得る。その時に日本の自衛隊で十分任務を果たせるかどうか。自衛隊は攻められたときに守るだけ。他所の国を攻めて行くために作られた軍隊ではない。そこは若干の限界がある」と続けた。

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【映像】台湾有事で想定される恐ろしいシミュレーション
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