上海市ではロックダウンが始まってから2週間が経った。14日間感染者が出ていない地区では外出が許されるようになったが、感染してしまった場合は居住するマンションの住民全員が再び隔離されることになるため、外を出歩く人は少なく、町は閑散としている。
玄関から一歩も出ることが許されない「閉鎖管理」下に置かれているANN上海支局の高橋大作支局長が、過酷な生活の現状について解説する。
Q.現在の上海の状況は?
3月27日の夜8時、テレビの緊急特番が始まった。「あすの午前5時から上海市内の東側をロックダウンする」という発表で、当該のエリアは実質9時間しか猶予のないままロックダウンが始まった。私の住むエリアは4月1日からのロックダウンだったため、4日間の猶予があった。当時は「4月5日でロックダウンを終える」と言われていたため、余裕をもって1週間分の食料を買い込んでいた。しかし4月14日のきょうになっても解除されず、食料はほとんど底をついた状況。
Q.食料は手に入る? どのように手に入れている?
中国政府からは合計3回の配給があったが、そのうち1回は米5kg、残り2回はすべて野菜。この食料でなんとか粘っている。ただ、食料を手に入れる手段は配給以外にもある。馴染みがあるのは配達員に持ってきてもらうデリバリーサービスだが、これはほとんど機能停止していて、私もロックダウン中に何度もチャレンジしたがすべて失敗していた。しかしきのう、初めて成功した。コーラと水を手に入れることができて、「やったー!」という気持ちだった。
そのほかには、「集団購入」=「グループ購入」というものが行われている。例えば肉を買う場合、数十、数百kg単位から買うことができる。そうなると1人では購入・消費できないので、「5、60人集めて買おう(=1人あたり約1.5kg)」ということになる。グループ購入のために、マンション内では住民によるグループチャットが作られている。「肉を買いたい人」と呼びかけられたら手を挙げて、60人の需要が集まれば取引が成立。リーダーが注文し、何日後か分からないが配達されてくる。こうして必要な物資を手に入れてくるという状況。
Q.グループチャットは会話に入らないと買えない……となると、言葉の通じない外国人の生活は厳しいのでは?
中国語と英語のチャットで、高速でやりとりされている。例えば私が「お米が欲しい」と思い待っていたら、お米の団体購入が行われることになった。「お米が欲しい人が60人いたら購入する」ということで、「よし応募しよう!」と思っても、60人集まらなければ取引は不成立になる。そうしているうちに肉の募集が始まって、応募しようと思う頃には、締め切りが過ぎていた……こんなことがずっと行われている。ずっとスマホを見ていないと、食料調達もままならない状況。
Q.上海の厳しいロックダウン、改善の兆しはある?
日本では、中国は「ゼロコロナ政策」のためにこうしたロックダウンを行っていると報じられている。しかし中国国内では「ゼロコロナ」に代わって「ダイナミックゼロ」という概念が出てきている。
「ゼロコロナ」というのは、「感染者を一人も出さない」という考え方。一方で「ダイナミックゼロ」は、「感染者が1人2人出るのは仕方ない。出てしまっても、部分的に隔離をし、社会を動かしたまま感染者ゼロにもっていこう」というもの。デルタ株の流行が主流だった北京オリンピックまでは、こういう考え方のもとで局所的なロックダウンで抑え込めた。そのため、中国は世界中がコロナ禍だったとしても「コロナを抑え込めた」という自信があった。
ところがオミクロン(BA.2)が現れ、ロックダウンを突破するような感染力を見せるようになった。果たしてこのまま「ダイナミックゼロ」で感染者が収まるのかどうか……。一部では、ロックダウンを解除するという実験的な試みも行われている。上海の動きが「ダイナミックゼロ」を見直す転換点になるか注目される。
Q.上海でロックダウンを経験して思うことは。
上海で暮らす身としては、たまったもんじゃない。外は何も変わらない風景なのに、何も自由にならない、食べられない。お腹を空かせている人がたくさんいる状況だ。私は空腹感も持って中国政府のあり方、中国の考え方がお腹の底から理解できた気がする。上海には2500万人が暮らしているが、中国の14億人という人口と比べると一部だ。この一部の街を徹底的に隔離してでも、14億人の安全と安心を勝ち取らなければならない。そういう思いで「ダイナミックゼロ」、ロックダウンが進んでいる。
国営メディアなどは、この上海の動きを感動的な、「上海の戦い」「みんな頑張って乗り越えようとしている」「上海を応援しよう」という文脈で報道している。しかし、今どれだけつらいかというのは広く発信しなければいけないと思っている。上海は世界でも日本人が多い地域で、4万人近い日本人が暮らしている。多くの日本人が困っていることに、ぜひ思いを馳せていただけたらと思う。
(ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)