『ゴールデンカムイ』実写化にファンからも不安の声…漫画原作と製作委員会方式に頼らざるを得ない日本映画界
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 今週、実写映画化されることが発表された集英社の人気漫画『ゴールデンカムイ』。ところがTwitter上には、「実写化なんて望んでいない」など、ファンと思われる人たちからも否定的な意見が数多く投稿されていた。その理由の一つが、実写化されることへの不安の声だ。一体どういうことなのだろうか。

【映像】「金カム」実写化に不安の声...日本映画なぜ原作依存?製作委の功罪

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 21日の『ABEMA Prime』に出演したジャーナリストの松谷創一郎氏は「1巻が出た段階から、いつかは映像化される、ということは皆さんが思っていたことではないだろうか。それだけ力のある作品だったし、これまで多く会社から映画化のオファーが殺到したことは想像に難くない」と話す。

 「原作が人気漫画であるほど、“これだけの動員が見込める”という予測が立てやすいので、制作費を出す人たちの説得もしやすい。映画化されれば、例えば情報番組で紹介されるなど、漫画を読んでいない人、あるいはアニメを見ていない人にも認知が広がり、ひいては単行本の売り上げにつながるという循環も生まれることになる」。

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 ここで言う、“制作費を出す人たち”で作るのが、いわゆる「製作委員会」だ。

 「テレビ局や出版社、芸能プロダクション、映画会社など、複数の会社が出資をして作るもので、盛んになって25年ぐらいが経つスキームだ。それぞれの企業が自ら媒体を通して宣伝することでヒットする形にもっていく。例えば原作が15巻ある漫画の場合、出版社は“1冊10万部ずつ増刷すれば150万部になり、出資分を回収できる”と見積もる。

 そして書店に“映画化決定”というPOPを置けば宣伝にもなる。そのようにして各社がいかにリスクを減らし、いかにwin-winになれる形を作るか、というのが製作委員会のビジネスモデルだ。一方で、製作委員会方式によって“平均値”が上がるということも確かだ。80年代には『幻の湖』『さよならジュピター』など、ひどい映画も多かった」。

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 その上で松谷氏は、漫画作品の実写化に対する懸念について、次のように説明した。

 「漫画の場合、基本的は出版社が代理人を務める形になるが、自身で判断する作家もいる。たとえば『SLAM DUNK』の映像化に時間がかかったのは、それが理由だ。一方で、作者がそこまで主張をしてしまうと、オファーが来なくなってしまう可能性もある。私の友人の漫画家にも映画化の話があり、私が“やめた方がいいんじゃないか”と言ったが、やはり話は進んでいるようだ。

 もちろん実写化されて良かったものもあるが、やっぱり“コスプレ学芸会”みたいな感じになってしまう場合もある。むしろ“やめてくれよ”という意見に対して、“だったらコスプレ学芸会にしちゃおう”という手もあるだろう。あるいは『あしたのジョー』が実写化された際は、原作に思い入れのある香川照之さんが丹下段平役を演じきった結果、主演の山下智久さん以上に目立ってしまったというケースもある。

 だから『ゴールデンカムイ』についても、ちゃんと作るんなら皆オッケーと言うだろうし、ちゃんと作らないならやめてくれということだろう。ただ、現段階では座組みすら見えていないので、なんとも言えない」。

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「どうすれば高いクオリティの実写映画が作れるのか、と考えると、『鬼滅の刃』におけるufotable社、『呪術廻戦』におけるMAPPA社のように、原作のもつ世界観を高いレベルで映像化し、大ヒットに結びつけてくれる制作会社があればいいと思う。あるいは利害調整よりも突き抜けたクオリティのものを作り、観客を感動させることだけにフォーカスするプロデューサーや監督、スタッフが生まれてくれば…とも思うが、そういう人たちはNetflixなどに行ってしまい、海外のコンテンツと勝負しながら可処分時間を奪っていくわけだ」とコメント。

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 また、東洋経済新報社・会社四季報センター長の山田俊浩氏は「IP=知的財産のビジネスは、価値をいかに膨らませていくかということが大切だ。集英社は講談社を抜き、最も稼いでいる出版社になった。中でもコミックの存在が大きく、ITをうまく活用してビジネスしていて、実は『ゴールデンカムイ』も全巻をアプリで無料公開し拡散している。完結後には“全巻大人買い”を期待しているだろうし、一度実写化して終わりではなく、ポジティブにビジネスが回っていくようなことを考えていると思う」と話した。

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 松谷氏は「出版はコンテンツの根っこを持っているからまだいい。しかし朝から晩まで番組をジャックして宣伝する、というテレビ局のヒットのスキームが機能しなくなってきた。もう少し、テレビの外で露出するということも考えないといけないと思うが、でき上がってしまった昔のやりかたから、なかなか離脱ができずにいると思う。

 また、韓国の場合、K-POPと同じで、海外のマーケットを睨みながらやっている。日本の場合、ドメスティックなマーケットばかりを見ている。昔はそれでも良かった。しかしこの数年で、環境は大きく変化した。コンテンツをいかに運用していくのか、もしくはグローバルに広げていくのかというときに、日本のやり方は、今も非常にドメスティックなままだ。

 この2年間、映画業界はコロナ禍で非常に大変だった。日本は『鬼滅の刃』に救われたこともあって、アメリカや韓国よりもまだいい。しかし動画配信サービスが浸透し、映画館で作品を観るという習慣から人々が離れてしまった今、そんなに明るい未来は描きづらいと思う。それでも映像コンテンツ自体は残っていくし、それを出す場、メディアが変わっていくということだと思う」。(『ABEMA Prime』より)

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