10日に控えた韓国、尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の就任式。3月に行われた大統領選挙では、事実上の一騎打ちとなった与党の李在明(イ・ジェミョン)候補を大接戦の末、破った。
【映像】大勢の現地女性が…韓国「慰安婦問題」集会の様子(冒頭VTR)
5年ぶりの政権交代となったが、文在寅政権で戦後最悪レベルと呼ばれるまで落ち込んだ日韓関係は今後どのようになっていくのだろうか。そして任期を終える文大統領は歴代大統領のように悲惨な末路をたどるのか。ニュース番組『ABEMA Prime』では、専門家と共に考えた。
■ 尹次期大統領「未来志向的な日韓関係を作る」今後は国益に基づいた外交関係に?
先月、尹次期大統領は就任前にもかかわらず日本に政策協議代表団を派遣した。25日には岸田総理大臣や松野官房長官と面会し、日本側と意見交換を行った。また、次期駐日大使に知日派で知られる元国立外交院長の尹徳敏氏を起用する方向で調整するなど、日韓関係改善に意欲を見せている。
一方で、韓国の国会では政党「共に民主党」が6割と多数を占めていることから、国民世論に反して、元徴用工や慰安婦問題で日本側の要求に答えることは難しいのではといった声もある。
政治的には最悪の状況が続いているが、今後日韓関係はどのようになっていくのだろうか。元在韓特命全権大使の武藤正敏氏は「明らかにこれまでとは違うだろう」と話す。その上で「ただ歴史的な問題について、日本側は国際法に則った対応を求めている。これを前提として、韓国側がどのように対応するかが決め手になる。韓国側は『日韓の間で協議をしていこう。片方だけでどうにかする問題ではなく、双方が努力する問題だ』と言っている」とコメントした。
ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「結局、日韓関係をよくすることにメリットがあまりないと思う」と発言。「日本のことを嫌いだと言っている韓国の人もいるし、日本の中でも韓国を嫌いだと言っている人はいる。でも、ビジネスは現状すごく密接にやっている。なので、嫌いあっている人はいるけれど、ビジネスはちゃんとできている。もうそれでいいのではないか。無理して何かを変えて、ビジネス関係が余計悪くなると考えたら『文句を言っている人たちは口で言っているだけで、実害ないよね』くらいの関係性がいいのではないか」と話した。
3月10日、選挙勝利後の会見で「未来志向的な日韓関係を作る」と述べた尹次期大統領。この発言にひろゆき氏は「“未来志向”は言葉としていいし、表向きは『仲良くしようね』と言える。ただ、具体的に『韓国はこれをこう変えます』とできないと思う。徴用工問題も慰安婦問題も『法律通りやりました』とできないじゃないか。反対勢力が強くなってしまうので、仲良くするというきれいごとを言うだけで実態として変えるのは無理なのでは」と指摘する。
武藤氏は「今までこういう問題が起きると日本側が譲歩してきた。今回は韓国側が一方的に持ち出してきた案件だから譲歩する余地はない」と話す。
「ただ、韓国には『日本がなんとかしてくれるだろう』という期待感があった。もうこれからの日韓関係は、今までのような特殊な関係ではなく、通常の世界各国にあるような外交関係に変えていかなければならない。それが前提になる。しかし、歴史問題については韓国はまだまだこだわりがある。文在寅氏はこれを『包括的な解決』と言っていた。日本側も歴史問題で譲ることはできない。たとえば今、韓国が経済的に非常に困っているのは戦略物資の輸出規制だ。この規制が日本から強化された。文政権だったら戦略物資が北朝鮮に流れたり、中国に流れたりする恐れがあったけれども、尹錫悦次期大統領だったら、そこはちゃんとやると思う。これから、日韓関係は両国がそれぞれ国益に基づいた外交関係に変えていかなきゃいけない」
実際に韓国における尹次期大統領の評判はどうなのか。在日朝鮮人3世として大阪で生まれ、北朝鮮に渡った後、2009年に脱北、現在はソウル在住の作家・金柱聖氏は「ちょっと特別な人物だ」と話す。
「とりあえず、韓国政府が左右(ひだりみぎ)に両極化しているのは、他の国と比べてもひどすぎる。日韓関係もそうだ。僕の個人的な考えだが、文大統領時代には日韓関係の良し悪しを利用して、自分の政治的勢力や政治的方式に利用したふうに見える。今回で政権がひっくり返って、まさしく保守政権に移った。尹次期大統領は、文大統領がやっていたようなやり方は絶対にやらないと思う。方向も変えるだろう。今までの大統領からしてみると、尹次期大統領はちょっと特別な人物。ご存じのように検察上がりで、酒と人が好き。みんなから好かれるようなタイプだ」
その上で、金氏は慰安婦問題について「徴用工であれ慰安婦であれ、遡れば結局は北朝鮮が問題に絡んでいる。韓国でも北朝鮮の拉致問題がある。韓国としても歴史問題を解決するのは重要だと思うが、何でもかんでも『まず歴史問題から解決しないと何もやらない』は、子どもじみている。僕も武藤さんの意見には賛成で、ちゃんと国と国の間で外交に持っていって、その後の余地や順序をたどって、歴史問題を持っていくのが当たり前じゃないか。韓国の場合は、国民感情も尊重する必要があるので、今この番組でその問題をひきずり出したところで、答えははっきり出ない。(外交の)日韓関係をうまくいかしながら、この問題は後々、徐々に形になっていくのではないかと思う」と述べた。
■ 文政権、検察の捜査権を大幅縮小…退任後の「報復捜査」避ける狙いか
民主化以降、悲惨な末路をたどるケースが指摘されている歴代の韓国大統領。そんな中、韓国では検察の捜査権を大幅に制限する法案が可決された。退任する文在寅大統領を検察の「報復捜査」から守る狙いがあるとみられている。
ひろゆき氏は「尹次期大統領が検察出身なら、手足のように検察が使える状態だ。『過去に悪いことをやった人を捕まえたほうがいい』となると、やはり文大統領は刑務所に行く確率が上がるのではないか」と質問。
金氏は「僕個人の考えと判断だ」とした上で「尹次期大統領は、少し前に朴槿恵元大統領を釈放した。文大統領のライバルだった人を監獄に自分で送って、自分の手で出した。これは一般の韓国国民ならご存じだ。歴代大統領は自殺でなければ、絶対に刑務所行きになっている。だから、文大統領も辞めた後にどうなるか。朴槿恵元大統領を釈放することで『恩を売った』と思っている人もいるだろう。結局は尹次期大統領の検察力だ。大統領になっても彼は検察畑の人間だ。どれだけ頑張っても、文大統領は辞めた後に心配事があるのではないか」との見方を示した。
また、ひろゆき氏の「文大統領を『捕まえない』と判断した場合『さすが尹大統領』となる可能性はあるのか」という質問には、金氏は「支持率は上がるかもしれないが、絶対に保守派の人間は黙っていない」と回答。
武藤氏は「保守派の大統領は前の革新派の大統領をそこまで捕まえていない。むしろ革新派が前の保守派を捕まえている。ある意味、革新政権の保守に対する報復だ。朝鮮日報や中央日報のような保守系の新聞社も『政治報復をやめよう』と言っている。尹次期大統領も検察に指示して『文在寅氏を捕まえろ』とは言わないだろう」と見解をコメント。
その上で、武藤氏は「だが、尹次期大統領は『不正があればそれなりに捜査しなければいけない』とも言っている。そうなってくると文在寅大統領が捕まる可能性は大いにある。そもそも、相当悪いことをやっていると自覚して、こういう法律を作ったとしか考えられない。こういう法律は法曹界の多くの人が憲法違反だと判断する。それを国会でもほとんど審議せずに強引に通してしまう。これは民主主義の破壊だ。(文在寅氏は)絶体絶命のような雰囲気があって、やっていると思う」
日韓関係改善に意欲を見せている尹次期大統領。そして、文在寅大統領の退任。今後の動向に注目していきたい。(「ABEMA Prime」より)
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