堅く囲って壊されかけたら、また直す。相穴熊戦の魅力が存分に出た戦いが続出した。将棋界の早指し団体戦「第5回ABEMAトーナメント」の予選Bリーグ第2試合、チーム菅井とチーム斎藤の対戦が5月21日に放送されたが、第4局でチーム菅井のリーダー菅井竜也八段(30)と、チーム斎藤・佐々木勇気七段(27)が対戦。両者とも超早指しのフィッシャールールを得意にしているが、持ち時間が短くても自玉の耐久力を維持しやすい穴熊を用いると、相手に壊されては再建して耐えるという応酬に。ファンも息詰まる内容に熱狂した。
持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算というフィッシャールールは、瞬時の判断に優れる若手棋士、早見え早指しの棋士でも苦労するほどタフなもの。最終盤ともなれば、1手につき10秒もない状況が連続するケースも珍しくなく、対局者としては読みを入れる余裕もなく、咄嗟に手がいいところに伸びるかどうかという勝負にもなる。その点、自玉を隅に置いて金銀で守る穴熊は徹底して粘る展開に向いており、金駒を持ち駒にした場合には、壊れかけてもまた打ち直して強度を高めることもできる、超早指し戦においては優秀な戦法と言われている。
第4局は先手の佐々木七段が居飛車穴熊、菅井八段が三間飛車穴熊を採用。まずはお互い、がっちりと玉を囲い合ってから戦闘開始、という一局になった。すると終盤、両者ともに譲れない局面が訪れ、千日手が成立。先後を入れ替えての指し直しとなった。先手の菅井八段が1分19秒、後手の佐々木七段が31秒と、さらに持ち時間が少ない状況から指し直し局が始まると、お互い同じ戦型を選び相穴熊に一直線。今回もまた終盤には、穴熊を崩されかけては作り直し、また相手を攻めるという連続になった。
結果的には佐々木七段が164手で勝利を収めたが、ファンからは熱狂気味のコメントが殺到した。なお第7局、チーム菅井・佐藤和俊七段(43)と佐々木七段の対戦も相穴熊戦となり、こちらも似たような展開に進んだ。早指しで戦うことも多いアマチュアにとっても、今後の指し方の参考にもなり、何より見ていて興奮する対局になったことだろう。
◆第5回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名を漏れた棋士がトーナメントを実施、上位3人がチームとなり全15チームで戦う。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選リーグ、本戦トーナメント通じて5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)