『魔女の宅急便』のモデルとされる北欧の島で予備兵志願者が急増、街のいたるところにはシェルター ロシアの“隣国”日本にできる備えは
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 NATO(=北大西洋条約機構)への加盟を申請したスウェーデンでは、市民の防衛意識が高まっている。特にバルト海に浮かぶゴットランド島は、ロシアと接する最前線の場所で、予備兵の志願者が普段の10倍に急増している。

【映像】のどかなゴットランド島

 アニメ映画『魔女の宅急便』のモデルになったとも言われているのどかな島で、今何が起きているのか。また、同じくロシアの隣国である現地を取材したANNロンドン支局の佐藤裕樹記者が伝える。

Q.ゴットランド島はどんな場所?
 面積は約3000キロ平方メートルで、東京都の1.5倍ほどの大きさがある。スウェーデン本土から船で3時間ほど、首都・ストックホルムからは飛行機で45分の場所。スウェーデンの人たちも観光にもよく訪れる場所ということで、リゾート地で有名だ。

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 ゴットランド島からバルト海を隔てた約300キロの場所に、ロシアの飛び地(1つの国の領土が地理的に分離して存在している場所)・カリーニングラードがある。ここにロシア軍が駐留していて、戦術ミサイルも配備しているという情報もある。スウェーデンにとっては、ゴットランド島がロシアの最前線の場所になっているということで、世界から注目されている。

 200年以上も前の1808年に、当時のロシア帝国がゴットランド島の南東部に上陸して、数週間占領したという歴史がある。島の人たちは「ロシアが島に軍を駐留させたいと思っているのではないか」という危機感を現時点で持っている。物流の観点でも、島を乗っ取られるとバルト海を自由に使えなくなるという危機感もあるようだ。

Q.スウェーデンの防衛への対応は?
 スウェーデンは2010年に一度徴兵制をやめたが、ロシアがクリミア併合やバルト海で軍事配備を強めている背景もあり、2018年に復活させた。徴兵制があることで、もし何かあった時に軍を経験した人が国内にたくさんいることが国としての防衛を高めていると、地元の人は話していた。

 今回のロシアによるウクライナ侵攻で、200年以上中立の立場をとっていたスウェーデンがNATOへ加盟を申請するという、大きな転換を迎えた。ウクライナ情勢が世界を大きく変えたということが、このスウェーデンの動きからわかると思う。

Q.ゴットランド島では予備兵の志願者が急増しているということだが、それ以外の街の備えは?
 街の至るところに、核にも対応できるようなシェルターがあった。特にロシアだと思うが、常に第三国からの攻撃を想定して生活をしているということ。何かあった時に自分がどこに避難しなければならないか、どのシェルターに行くかを常に頭に入れている。

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 島には大きなフェリー乗り場があって、その近くにレンタサイクルのお店がある。そこにはシェルターを示す三角のマークがついていて、有事の際はお店がシェルターとして避難先になる。

Q.日本もロシアの隣国だが、備えや意識の違いとして感じる点は?
 私は2018年から2年間、北海道の釧路市に駐在していた。根室や北方領土の取材を担当していたが、その中でシェルターは見たことも聞いたこともない。日本はビザなし交流などを通じて、ロシアと友好関係を深めることで領土問題の解決を図ろうとしてきた。なので、ロシアの攻撃を想定してシェルターを作ろうなんていうことは、頭にもなかったわけだ。今回、根室市役所に一応聞いてみたところ、「今すぐ使える防空壕はない」と。友好関係を深めて領土問題の解決を図っていこうとしていた地域からすれば、ロシアからの攻撃を考えるのは難しいのかなと思う。

 北方領土は日本固有の領土なわけだが、現実としてロシア軍が駐留し、実効支配されている。北海道はロシアと経済的な結びつきが強いが、ロシアの脅威も考えなければならないというのは、住んでいた人間として、スウェーデン、フィンランドを見た者として感じた。

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 ただ、シェルターが必要かどうかの前に、考えることが必要だと思う。もし、日本にシェルターをすぐに作ろうとしても、なかなか難しい。フィンランドは1940年頃、当時のソ連に攻められた経験から、都市計画の1つとしてシェルターを配備してきた。取材したのは市民プールで、有事の時には72時間以内にシェルターにできるという。つまり、都市計画の中からシェルター×市民プール、シェルター×体育館といったものを長い歴史の中で準備してきたので、すぐに日本で整えるのは難しい。ただ、ウクライナ情勢を受けてロシアの脅威を考えるのは、1つ大事なことだと思う。(ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)

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