前理事長時代は“結論が決まっていた”理事会… 林真理子氏は日大の“マッチョな体質”を変えられるか 選出の背景と思惑
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 日本大学は3日の理事会で、同大学の芸術学部出身で直木賞作家の林真理子氏(68)を新しい理事長として承認した。7月1日に正式に就任する予定だ。

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 2018年には、アメフト部の悪質タックル問題で大きな注目を浴びた日本大学。その後、田中英寿前理事長(75)の脱税事件などを受け経営体制を見直しており、後任の理事長候補を選ぶため、外部有識者などによる「理事長選考委員会」を設置していた。

 林氏の理事長就任に周囲からはどのような声があがっているのか。また、日本大学は変わるのか。テレビ朝日社会部の松本拓也記者が解説する。

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 林氏は1982年、『ルンルンを買っておうちに帰ろう』でデビューし、1986年には『最終便に間に合えば』『京都まで』で直木賞を受賞。アメフト部のタックル問題で日大が開いた会見を受けては、当時、週刊文春2018年6月7日号のコラムで「イメージがとことん落ちた母校のために、ひと肌もふた肌も脱ごうではないか。あのガバナンス全くなしオヤジばかりのオレ様主義の学校を、オバさんの力で何とか変えてみたい」と言及していた。次期理事長として名前が浮上した2日には「心をずっと痛めていた。やるせない思いだった」と、不祥事が相次ぐ日大に対する思いを取材に明かしていた。

 林氏は3日に文科省を訪問し、末松文科大臣と面会。その後の会見では、「とにかく古くマッチョで、上の人が言ったことに下は黙って従う、そういう組織になっていると聞いている。『それは違うんじゃないか』とはっきり言える組織を目指したい」「こんなことまでするのかという、びっくりするようなこともやりたいと思っている」と、意欲をのぞかせた。

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 とはいえ、学校法人を代表する“社長”ともいえる大学の理事長として、作家の林氏は適任なのか。日本大学の“思惑”について、松本記者は次のように説明する。

 「脱税事件の発覚後に日大が設置した第三者委員会は、5期13年にわたって理事長を務めた田中英寿前理事長による『専制的な体制』、つまり独裁的な体制や、理事らに女性や外部出身者がいない多様性の無さを不祥事の原因にあげていた。日大関係者によると、一連の事件後には女性登用を訴える幹部も多くいて、田中前理事長の逮捕後まもなくの理事会では『理事会は多様性を重んじ、女性を必ず理事にすること』といった意見が出ていて、多くの学部長の間でこの考えは共感されていた。選考委員会によると、林さんは『大学の利益は学生生徒のためであり、一般企業における営利追求とは一線を画すものである』という信念を持っていると。何よりも、『学生生徒の幸せのために、今思い切った改革をすることが必要なんだ』という強い意志を持っていたことも決め手になったようだ」

 では、林氏の選出を周囲はどのように受け止めているのか。日大関係者からは、「日大の印象が変わる、センセーショナルな出来事だと思っている」「林さんはよくこの状況で引き受けてくれたと思う。外部から日大とは関係のない、文科省から天下りで来るような人が就任するのではないかと思っていた。ふたを開けてみれば、日大の卒業生で、しかも女性ということで期待が持てる」。一方、ある文科省幹部からは、「再発防止策に沿った改革が徐々に進んでいる中、脱旧体制をどう構築するのか手腕が問われる」「日大のような巨大な組織を率いた経験がないから、実務に詳しい複数の補佐役が必要」「風通しのいい組織づくりが必要とされるなかで、いい人選だと思う」といった声が聞かれるという。

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 日本大学を再建するために林氏に期待されているのは「風通しをよくすること」だと松本記者は説明した。

 「日本大学は2500億円超えの収入があり、経済面で改革の必要はあまりなく、どちらかというと風通しのよい組織づくりへの期待が大きい。大学を評価する外部機関・大学基準協会は3日、日本大学について、管理運営で特定の役員による恣意的な人事が行われていて、評議員会や監事による理事会に対するチェック機能が果たされていなかったことなどから『不適合』という判定を下している。また、第三者委員会の報告書でも、田中前理事長の在任中は、理事会で議論される段階で事実上、結論が決まっていて、『理事会は議論をする場になっていなかった』と記載されている。こうした権限の集中や理事会の形骸化が、新体制下でどう変わるのかが最も注目される」

ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)
 

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