ほぼ“白紙”状態の「国民皆歯科健診」 現場からは「歯科衛生士の賃金上げ」求める声
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(3枚)

 7日に閣議決定し、経済財政運営の指針「骨太の方針」に盛り込まれた「国民皆歯科健診」。開始時期について、日本歯科医師会の堀会長は「3年から5年後がめど」だと話している。

【映像】ウクライナ侵攻で銀歯の原材料「パラジウム」が高騰…歯科医の声(8:43ごろ〜)

 政府の「骨太の方針」と言えば経済政策といった社会改革の大きな方針を示すものだが、今「国民皆歯科健診の検討」が盛り込まれたのは、なぜなのか。

 テレビ朝日社会部の岩本京子記者は「これまでは『生涯にわたって歯科検診を強化すべき』でした。今年は『生涯を通じた歯科検診の具体的な検討』になっていて、これだけしか書かれていません。詳細はこれから議論していくものとみられます」と話す。

「日本歯科医師会の堀会長は『健康増進』『健康寿命の延伸』を目的として、口腔と全身の健康のかかわりについて、もっとエビデンスを示して理解を深めたいとコメントしています。結果として、医療費の抑制も期待されるとのことです。たとえば、歯周病を予防することで、糖尿病や早産、脳梗塞などの予防につながるのではないかと期待されています」(以下、岩本記者)

ほぼ“白紙”状態の「国民皆歯科健診」 現場からは「歯科衛生士の賃金上げ」求める声
拡大する

 いきなり「国民皆歯科健診」という言葉が「骨太の方針」に盛り込まれた印象だが、どのような背景があるのか。

「日本歯科医師会はこれまでも5年間提言し続けていて、実は骨太の方針に歯科関連の言及がされるのは今回で6回目なので、真新しく出てきた話ではないというスタンスです。今回は国民皆歯科健診と具体的に書き込まれたことで、議論の深まりが期待されています。厚労省はこれまでも80歳で自らの歯を20本残す『8020運動』を進めていて、日本歯科医師会も『歯科健診の受診率を上げたい』と要望していました」

 現在、日本では高校生まで歯科健診が義務付けられているが、大学生や社会人は対象となっておらず、自治体や企業などによって健診の在り方が異なる状態だ。全国民に健診を義務付けるかについては、堀会長は「その議論に今こだわるのは時期尚早だ」とコメントしている。

ほぼ“白紙”状態の「国民皆歯科健診」 現場からは「歯科衛生士の賃金上げ」求める声
拡大する

▲テレビ朝日社会部・岩本京子記者

 岩本記者は「実施の主体や費用面をどうするか、議論を深める必要がある」とした上で「歯科衛生士の不足も深刻な問題だ」と指摘。

「入学者の勧誘や、免許を持っていても現在は仕事から離れている潜在の衛生士も多くいるとみられていて、復職を呼びかけることが必要になってきます。費用も全額公費でできるのか、その議論もこれからです。制度化するために、場合によっては、法改正が必要になってくる可能性もあります」

 「コンビニの数より多い」と言われる歯科だが、現場の歯科医は国民皆歯科健診に賛成しているのだろうか。

「歯科医の反応はさまざまです。自治体の健診を担当している歯科医は『日本では歯科の受診率が非常に低く、痛くなったら歯医者を受診するという人が多い。義務化にしたところで何人来るのか未知数だ』と話していた。保険診療を中心に行っている歯医者からは『いまはロシアのウクライナ侵攻の問題で、銀歯に使われるパラジウムが高騰しているので、かなり痛手を負っている。材料費や診療報酬の点数を引き上げ、歯科衛生士の賃金を引き上げるべきだ』という声もありました。医療従事者に何らかのメリットがないと、手を挙げてくれるところは少ないと思います」

 現状ではほぼ白紙に近い、国民皆歯科健診の検討。今後の課題について、岩本記者は「やはり人材の確保が壁になってくる」と話す。

「歯科衛生士などの専門職の人材確保や、歯科医師が偏在して地方で不足している問題をクリアしなければなりません。あとは、検診を受けることで身体にどのようなメリットがあるのか、口腔が健康に与える影響などを一般の人により理解を深めてもらうことも課題です」

ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)

この記事の画像一覧
【映像】「国民皆歯科健診」いつから実施? 費用はどうなるのか
【映像】「国民皆歯科健診」いつから実施? 費用はどうなるのか
【映像】新理事長に林真理子さん 日大の思惑は
【映像】新理事長に林真理子さん 日大の思惑は
【映像】対ロ最前線 スウェーデン要衝の地で異変
【映像】対ロ最前線 スウェーデン要衝の地で異変
この記事の写真をみる(3枚)