来年4月に新設されることが決まった「こども家庭庁」。これに伴い、政府は17日、設立準備室を設置した。
【映像】「こども家庭庁」と「文科省」「厚労省」の関係図(画像あり)※1:25ごろ〜
こども家庭庁は、これまで各省庁で別々に担当していた子ども政策を一元化し、省庁間の縦割り、国と自治体などとの連携の間で抜け落ちていた子どもに対する支援を行っていくために新たに創設される組織だ。実際に子どものいじめや虐待、貧困、少子化対策はどこまで解決できるのだろうか。
現場を取材しているテレビ朝日・政治部の土田沙織記者は「総理大臣直属の機関として、こども政策担当の内閣府特命担当大臣のもとに、内閣府の外局に設置され、300人程度の職員が配属される予定だ」と話す。
「こども家庭庁には、内閣府の子ども・子育て本部や厚労省の子ども家庭局などが医官されます。一方で、厚労省の医療分野など一部と文科省については移管されず、現在の体制のままとなります。そのため野党側からは、『また一つ省庁が増えて、さらに行政縦割りの弊害を生むのではないか?』という指摘も出ています。政府としてはこども家庭庁は、ほかの省庁にこども政策の改善を求めることができる『勧告権』をあわせて持つことで、強い司令塔機能を持ってこども政策を主導していく組織だとしています」(以下、土田記者)
「また、こども家庭庁では、子どもの性被害を防ぐため子どもとかかわる仕事をする学校や塾の先生などの犯罪歴をチェックする日本版『DBS(Disclosureand Barring Service ※犯罪証明管理および発行システム)』の導入や、こどもが事故などで死亡した際に、その経緯を検証し、再発防止につなげる『CDR(チャイルドデスレビュー)』という制度を導入しようとしています」
これまでこどもの死について、なぜ亡くなったのか、どうして防げなかったのか、検証や再発防止策の蓄積がなかったという。そのため、対応する省庁や自治体によって対応に差があった」と土田記者は話す。
「そこで、どの地域に住んでいても同じ質の対応を受けられるように、こども家庭庁で子どもの死因究明を一元的に担おうと検討されています。ただ、自治体や文科省など様々な部署と連携して取り組む必要のある新しい制度であり、こども家庭庁のうちどこの部署が担当するのかと“綱引き”にもなっているという話もあります。ただ、そうした省庁の綱引きが政策に大きく影響しないように、実務経験のある民間人も積極的に登用したいとされています」
「こども家庭庁」創設は、菅政権時代の目玉政策だった。
「こども家庭庁には、『保育園』と『認定こども園』が一元化されますが、『幼稚園』は文科省所管のままです。構想が浮上した当初は、幼稚園も一体運用しようと幼保一元化の議論がありました。しかし、この案が浮上すると文科省はすぐに、文科大臣経験者などいわれる“文科族”といわれる自民党議員のところに直接出向いて、『文科省が担ってきた義務教育を中心とする教育分野を手放したくない』などと強い抵抗を見せていました。改革は教育分野に切り込めず、文科省は移管されないことになりました」
国会でおよそ50時間にわたる「こども家庭庁」に関する審議を聞いてきた土田記者。その上で「課題は山積みだ」と指摘する。
「岸田総理は『子ども関連予算の倍増』に向けて取り組む考えを表明しましたが、いつまでにどれくらいの増額なのか、財源はどうするのか具体的に示していません」
参院選が間近に迫る中、岸田総理としては「国民にとって負担感のある議論は避けたい」といった思惑もあると見られている。
「さらに、日本の現状の子ども関連予算全体を政府は把握できていません。国会の審議の中で野党が追及したところ、野田大臣は『現時点で申し上げるのは困難だ。こども庁設置後に体系的に取りまとめる』と答弁していました。なぜ、今まで子ども予算全体を把握してこなかったのか関係者に聞いてみたところ、『各省庁に予算がバラバラで省庁をまたがって調べて取りまとめることのできる権限がどこにもなかったからだ』と言っていました。こども家庭庁が発足すれば、ほかの省庁に対する総合調整権限で予算をとりまとめることができるだろうとされています。少子化が深刻化する中、子ども関連予算の倍増への道筋をしっかり示せるのか、子ども政策の抜本的な改革には、岸田総理の本気度が問われることになります」
(ABEMA NEWSより)