東京都内の新型コロナウイルス新規感染者が増加に転じる中、都内の公立小学校で今季初めてインフルエンザによる学年閉鎖が起きた。東京都の小池知事は同時流行への警戒を強めている。
なぜ、この学校でインフルエンザが集団発生したのか。テレビ朝日・社会部で都庁担当の油田隼武(ゆだはやたけ)記者に詳しく話を聞いた。
「学年閉鎖したのは立川の小学校です。3年生で16、17日に複数人、その後19日にも感染者が確認されました」(以下、油田記者)
同小学校では、学年45人中14人が陽性となり、20日に学年閉鎖を決定。3年生2クラスが21、22日に閉鎖した。一方で、他校では、インフルエンザの集団感染は確認されていない。
最後に都内公立学校で起きたのはおととし3月、新型コロナの流行が始まった頃だった。この2年間、インフルエンザの目立った流行がなかった理由について、油田記者はこう話す。
「インフルエンザは世界的に見てもこの2年間、大きな流行はありません。インフルエンザは9月初旬で1シーズンとカウントしますが、2020年9月からのシーズンは学校の閉鎖は0件でした。さかのぼった限り、この10年、閉鎖が0だったのはこのシーズンのみです。原因としては、新型コロナの感染対策がインフルエンザにも有効だったとみられています」
インフルエンザといえば、冬に流行するイメージだが、都の担当者によると過去「夏にも学級閉鎖があったこともある」という。
「インフルエンザに冬のイメージがあるのは、乾燥していることで流行しやすいから。順天堂大学大学院の堀賢(ほりさとし)教授によると、沖縄などの熱帯地方に1年中いて、渡り鳥や旅行者が運んでくるということです。北半球、日本では南から北に向かって広がるといわれています。流行りはじめた原因はよくわかっていませんが、23日のモニタリング会議で専門家は規制緩和で予防ができなくなってきたこと、社会全体のインフルエンザ免疫が落ちてきたことを指摘しています」
現在、冬のオーストラリアでは爆発的なインフルエンザ感染が発生している。都内の集団感染と何か関連性はあるのだろうか。
「オーストラリアでは2月から外国人観光客を受け入れています。WHO(世界保健機関)によると、オーストラリアでインフルエンザ陽性になった検体の数は3月末くらいから徐々に出始めていました。5月頭くらいから増え始めて、最新の数字を見ると6月中旬も増えつつあるようです。先週は1400検体ほど確認されています。国全体の感染者数などは不明で、陽性検体の数なので検査数が増えれば数も増えます。立川の小学校における集団感染との因果関係はわかっていません」
都の専門家によると「日本の感染対策は意識が高く、オーストラリアのような爆発的増加が起きるかはわからないとしている」という。その上で、油田記者は「例年と違う動きは興味深い」と指摘する。
「東京都が公開している『インフルエンザ患者報告数(東京都:定点あたり患者報告数)』を見ると、2009年は例年と違う動きをしていたことがわかります。この年は新型インフルエンザが出てきたときで、つまり免疫がない時期でした。いまオーストラリアで広がっているのは新型ではなく、今までにあったインフルエンザです。全く同じ状況ではありませんが、社会全体の免疫が落ちている中では『夏にインフルは拡大しない』と過信せず、日本でも注意が必要かもしれません」
今後、新型コロナとインフルエンザが同時流行する可能性はあるのだろうか。都の専門家は「症例の報告はあるようだが、学術上、いまのところ詳しいことはわかっていない」とした上で「動物が両方に感染する実験結果はある」という。
「同時流行については、オーストラリアでは新型コロナも流行していることから“あり得る”という認識です。一方で、まだわからないことが多く、同時感染についてはこれから知見が出てくるとみられています」
16日、小池都知事は国に対し、同時流行に対応できる体制の構築、高齢者などへのインフルエンザワクチン接種について、国が進めることなどを要望。「具体的な対策について、早急に取りまとめていきたい」と発言した。
「インフルエンザと新型コロナの感染経路は似ていて、手指の消毒やマスクが有効といった対策も似ています。インフルエンザの予防接種の持続期間はシーズンプラス2〜3カ月といわれています。秋に打ったら春先には切れるイメージです。流通を考えると、今ワクチンは生産中なので、すぐに打てるものではありません」