「家族にも仕事内容を明かせなかった」「中国からは2万人超のエージェントが」…『シン・ウルトラマン』では長澤まさみの出向元、「公安調査庁」の実態とは
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 東京・霞が関にある庁舎で法務大臣も出席のもと開かれていた会議。「組織運営を担う皆さまにおかれましては自らを厳しく律することはもちろん、部下職員に対しても順法精神と高い倫理観をもって職務に励むよう指導を徹底していただきたい」と挨拶したのは、公安調査庁の和田雅樹長官だ。

【映像】「公安調査庁」をガッツリ取材

 公開中の映画『シン・ウルトラマン』で、長澤まさみ演じる浅見弘子分析官の出向元の設定となっている公安調査庁。しかし、その実像についてはあまり知られていない。『ABEMA Prime』が取材した。

■日々の努力の積み重ねみたいなものが重視される世界

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 国家の存在を脅かしかねない暴力的な活動を行う団体を調査するため、1952年に設置された公安調査庁。情報収集や分析の上「活動制限」「解散指定」の規制などを請求する法務省の外局で、警察庁や都道府県警察の公安部門、いわゆる“公安警察”のような逮捕権はない。

 横尾洋一次長は「情報の力で国を守るということで、国際テロなどを分析して内閣官房や官邸などに提供、国の政策に反映していただくという活動を主に行っている」と説明する。

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 国内にあっては過激派組織、国外についても国際テロ組織や北朝鮮や中国、ロシアの動向などに目を光らせる。過去に無差別大量殺人を行った団体に対する観察処分や再発防止処分の請求も行えるため、オウム真理教に対する調査については報道で耳にする機会も多い。さらに近年ではサイバー攻撃や、技術やデータの海外流出への注意喚起など、経済安全保障分野にも及んでいる。

 その仕事ぶりについて古川禎久法務大臣は先月23日、「公安調査庁の業務の大半は世間からは見えづらいというよりも、見えてはいけない、という性質のものだ。陰の努力一ひとつひとつが国民の生命や財産などを守ってきた」と評価。横尾次長も「裏で色々と好き勝手やっているであろうというイメージを持たれるかもしれないが、かなり地道な活動だ。日々の努力の積み重ねみたいなものが重視されるような世界だ」と語った。

■今どんな仕事をしているか、家族にも言えなかった

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 公安調査庁で調査官や分析官を歴任、現在は日本戦略研究フォーラム政策提言委員の藤谷昌敏氏は、北海道を振り出しに国内を担当、後に国外の担当として北朝鮮や、ロシア、中国の動向を分析してきた。

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 「非常に困難な仕事だが、要するに、“端緒”を掴み、“未然防止”するのが我々の一番の職務だ。日本国内にこういう不穏な奴がいるという外国の情報機関からの情報を元に調べる場合もあるし、あるいは東アジア反日武装戦線のような、爆弾を作っているグループがどこにあるのか、といったことを調べていく。

 私が入庁した頃には“変装の道具”もあったが、これだけカメラが精密になった時代に、そんなことやっても意味がない(笑)。それでも現場の調査官時代は私も“フリーのルポライター”という設定で潜入調査を行った。また、本庁への異動後は分析官としてテロ対策のため海外の諜報機関との連携などを担当していた。

 もちろん、家に資料を持ち帰るなどありえないし、今どんな仕事をしているか、家族にも言えなかった。そういうことに不満を持っている』職員もいるが、やはり国の重要な職務だということで割り切っていくしかないし、それは辞めてからも同じだ。なぜかといえば、現状に影響を与えてしまうからだ。調査というのは常に現在進行形で、終わりがないものだ」。

■基本的人権への配慮は最も気にしなければならない

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 現場では“協力者”を得ることが欠かせないようだ。現役職員は「何よりも協力してくれる人との人間関係が重要であると感じている。必ず相手の立場に立って考えるということと、自分に対して快く協力し続けてくれるような関係を維持するということに気を配っていた」と明かす。

 藤谷氏もこう語る。

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 「ある組織について、誰が一番求める情報を持っているのかとか、そういうことを調べていく。そしてターゲットが見つかれば、どう接触をして、こっちに協力をしてくれるようにするのかを考える。ある意味で活動しやすいということで、ジャーナリストの中には協力者になっている方もいらっしゃるだろう。

 また、特に民主主義国家の情報機関である以上、基本的人権への配慮は最も気にしなければならない。つまり強制したり、ダーティーなことをしたりすることはできない。もちろん多い・少ないはあるが、危険度などを勘案し、情報の対価をお支払いすることもある。具体的なことは言えないが、常識的な範囲だ。それでも、なるべくご本人に納得していただいて、自ら協力いただくというのが最高の形。そうでなければ良い情報は取れない。

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 そうやって現場の調査官が集めた情報を、本庁の分析官が過去の経験やパターンに当てはめたり、別の情報との矛盾を見つけたりして取捨選択していき、複数のシナリオから最も可能性の高いものをチョイスする」。

■中国からは2~2万5000人ぐらいのエージェントが

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 取材のため、パレスチナのイスラム原理主義組織「ハマス」を接触したり、北朝鮮に渡航したりした経験のあるジャーナリストの堀潤氏は「実を言うと、僕も公安調査庁の方に照会された一人だと思っている」と苦笑する。

 「公安調査庁の協力者になっていると思われる方か“堀さんってどういう人ですか、という人に会ったよ”と言われた(笑)。やっぱりいろいろ調べているんだなということを実感した。僕がスーダンに渡航するという時も、携帯電話に外務省の方から“堀さん、状況はお分かりですよね。私たちは行かないでくださいと、行った場合どうなるかなどお伝えしましたからね”と。やはり様々なインテリジェンス網があるんだなと思った」。

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 藤谷氏は「やはり北朝鮮などに出入りしている方々は“要注意人物”として見てピックアップしていくのが調査の初歩的な段階だし、国内にいてもシンパの集会などに行ってもターゲットになる可能性はある」と回答。

 さらに堀氏が「いわゆるスパイと呼ばれるような人たちは、海外からどれくらい入り込んでいるものなのだろうか」と尋ねると、「海外の情報機関との連携によって、例えば中国からは2~2万5000人ぐらいは入っているだろうな、という予測がある。北朝鮮、ロシアも加えれば、かなりの数のエージェントが日本国内にいるはずだ。しかし公安調査庁の職員は1700人しかいないので、警察と合わせても全く追いつかない。それでも決まった予算の中でやらなければならないということだ」とした。

■日本はインテリジェンスというものを隠しすぎてきた

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 視聴者からは「藤谷さんは現役の監視職員に監視されているんじゃない?」との質問も届いた。藤谷氏は「それはない。元同僚にも後輩にもたまに会うし、飲む。でもメディアに出ているし、マークされている人に会うことがあるとすれば、監視される可能性ゼロとはいいきれない。ただ、今まで日本はインテリジェンスというものを隠しすぎてきたと思うし、もっと言えば国民が学ぶ機会もない。これは絶対に良くないことなので、僕は発信をしていきたい」と語った。

 堀氏は「原発や基地の取材に行くと、必ずカメラを持って記録している国家権力の姿を見かける。それが暮らしを守りたい、人権を守りたい、いい国にしたいという人たちにとってプレッシャーになっているという事実もある。安全保障のために大事なものであることはわかりつつも、不透明さが良くない方へ向かった場合のことも考えた。僕は香港で中国共産党による若者たちへの弾圧を目の当たりにしたし、逆に何のための調査なのか、ということは取材をし、発信し続けなきゃいけないなと思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
 

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