今月10日に投開票が迫った今回の参院選。焦点の一つが、長引くウクライナ情勢や円安の影響による、エネルギーや食料品をはじめとした物価高騰対策だ。各党は一体どのような対策を打ち出しているのか。
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ABEMA「倍速ニュース」では、参院選企画として9党の公約をジャンルごとに紹介。第2弾の「物価高騰対策」ではテレビ朝日・政治部の杉本慎司記者が解説する。
「与野党とも物価高騰対策は公約で最重要な政策と位置付けています。国民生活に密着したエネルギー価格や食料品価格などの高騰は家計への直接の負担になっています。ウクライナ情勢が不透明で、現在の物価高騰がいつまで続くのか、さらに値上がりするのかなど、国民の関心が最も大きなテーマが物価高騰だからです」(以下、杉本記者)
具体的に与党と野党で、物価高騰対策で違いはあるのだろうか。
「大きく分けると、与党では事業者への補助金などを通じて家計を支援する一方、野党は家計への直接支援に重きを置いています。例えば、ロシアへの制裁などの影響によって高騰している燃油価格について、政府はこれまでも続けている石油の元売り会社への補助の継続や、海外からの輸入が大部分を占める小麦の国産化の支援などを打ち出しています。野党は時限的なものも含めた消費税減税、あるいは消費税の撤廃で足並みが揃っていて、物価高騰でかさばる負担分を一律に軽減する狙いです」
物価高騰対策で注目が集まっているのが消費税だ。与党はどのように考えているのだろうか。
「与党はこれまで岸田総理はじめ国会などで答弁している通り、消費税は社会保障の安定財源であり、また消費税率を返上することによるコストを考えると現実的ではないとして、消費税に触れる可能性については明確に否定しています」
物価対策には方針の違いが見られる与野党。逆に与野党で足並みが揃っている政策はあるのだろうか。
「詳細についてはそれぞれ違いがあるものの、岸田政権の目玉政策の一つでもある賃上げがまさに与野党共に揃うところです。物価高騰と同水準、またはそれ以上の賃上げを行うことにより、景気の上昇を促したい考えです。与野党ともに賃上げの必要性では一致しています」
自民党は公約に「25年ぶりの本格的な賃金増時代を創る」と盛り込んでいる。また、公明党も2020年代前半には最低賃金が全国平均で1000円を超すことを目標としている。
「ただ、野党側からは政権に対して、岸田総理が掲げる『成長と分配』の分配について『トーンが落ちている』という批判の声も出ています。野党はより抜本的な賃上げを訴えており、立憲民主党、社民党、共産党、れいわ新選組については最低賃金を1500円とすることなどを主張しています。れいわ新撰組などは、賃上げを速やかに行い、中小零細企業など、賃上げを行う余裕がない企業に関しては、国が補助を行うことで、同率の賃上げを目指すとしています。いずれにしても賃上げをどのように実現していくのかという事については、与野党ともに具体的な説明が求められます」
とりわけ金融政策の見直しを訴えているのが野党第一党である立憲民主党だ。
「立憲民主党は政府がウクライナ情勢による世界的な物価高だと主張する現在の状況を『日銀による異次元の金融緩和によって悪い物価高が引きおこされている』とし、政府と日銀の物価安定目標の前年比上昇2%を見直すとしています。国会の終盤から現下の物価高を『岸田インフレ』であり、金融緩和の方針を改めない政府を批判しています。消費減税については、時限的に5%への引き下げを主張していて、将来的な最低賃金1500円へむけて、中小零細企業を中心に公的助成を行いつつ、段階的に引き上げを行うとしています」
各党が掲げる物価高騰対策。公約をみると、賃上げについては与野党共に訴えており、物価高に負けない賃上げを実現することで、消費や投資を喚起し、景気の上昇を目指すとしている。
「冒頭でも申し上げた通り、今、物価高騰対策は有権者の関心が最も高いテーマのひとつです。選挙も最終盤、与野党共に対策の裏付けとなる財源を含め、実効性など、現実に沿ったものとして、具体的な方途を示すことができるかどうかが焦点になります」
(ABEMA/倍速ニュース)