10日に投開票が迫る参議院選挙。今年2月、ロシアがウクライナに侵攻し、世界が一変する中、焦点の一つになっているのが、今後の「外交・安全保障」だ。
【映像】中国・北朝鮮のミサイル発射を想定した訓練の様子(素材提供:航空自衛隊)※0:50~
ABEMA「倍速ニュース」では、参院選企画として9党の公約をジャンルごとに紹介。第3弾の「外交・安全保障」ではテレビ朝日・政治部の車田慶介記者が解説する。
「東アジアでも覇権的動きを強める中国、北朝鮮の核・ミサイル問題もあって、日本でも安全保障や防衛費増額について議論が繰り広げられるようになりました。今回の参議院選挙においては、有権者から安全保障環境における対策が不十分だと判断されれば、投票への影響も避けられないとして、各党が直面する課題への対応を前面に打ち出しています」(以下、車田記者)
そうした中で「外交・安全保障」について、各党の公約ではどのような特徴があるのだろうか。
「自民党は『外交・安全保障』を公約の冒頭に配置しました。高市政調会長は会見で、冒頭に配置したことについて『国民の関心にかなったもので、自民党らしさを打ち出せる』と説明しています。特に防衛予算については『NATO加盟国が防衛費の対GDP比2%以上を目標にしていることを念頭に、5年以内に必要な予算水準を達成する」と打ち出しました。また、岸田総理は22日の第一声で『国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているのか。これを見直していく』と訴えています」
自民党と連立を組む公明党も、公約では「防衛力強化」を明記している。
「山口代表は公約発表の記者会見で『安全保障への関心が極めて高まっている。防衛力、日米同盟の抑止力、対処力について強化が必要を訴えていきたい』と話していました。防衛力強化の具体策としては、AI=人工知能など先端技術を導入した装備品の早期実用化や自衛官の人材確保などを挙げています」
防衛力の強化といった視点では、自民党との距離を縮めた形となる公明党。一方で、防衛費について、車田記者はこう話す。
「防衛費については『予算額ありきではなく国民を守るために必要な予算を確保する』として、大幅な増額を求める自民党との差別化を図りました。また、アメリカの核兵器を自国領土内に配備して共同で運用する『核共有』について『断固反対し、非核三原則を堅持する』と明確に打ち出しました。また『核兵器禁止条約批准の環境を整備する』ことも掲げています」
与党内でも温度差があるように見える防衛費の考え方。野党はどのような公約を掲げているのだろうか。
「野党は、防衛力の強化を打ち出す党がある一方で、平和外交の重要性を強調する党もあるなど、主張が分かれています。立憲民主党は防衛費の増額を容認した上で『総額ありきではなくメリハリのある防衛予算で質的向上を図る』としています。泉代表は青森での第一声で、自民党の増額を念頭に踏まえて『防衛費だけ2倍にしたら国家予算はどうなるのか』と有権者に訴えていました」
立憲民主党が掲げる「メリハリのある防衛予算で質的向上する」は、具体的にどのような提言なのだろうか。
「公約にはミサイル防衛、迎撃能力の向上をはかるなど、相手の戦力を無力化する能力の研究、開発を進めるといったことを明記していて、従来よりも踏み込んだ内容になっています。また、公約における安全保障の記述の分量も昨年の衆院選の公約よりかなり増量しているのがわかります」
与党とは違う姿勢を出しつつも、防衛力強化に向けてこれまでよりもかなり積極的になっている印象がある立憲民主党。
「もちろんロシアによるウクライナ侵略を受けてですが、それに加えて、これまで立憲民主党は『反対、批判ばかりしている』と指摘されることもあり、そういう点も意識しているのではないかと思われます」
今回の参議院で、争点の一つとなっている防衛費のあり方。一方で、日本維新の会は「これまで日本政府が取っていた防衛費のGDP比1%をやめてGDP比2%を目安として増額するべきとしています。これは自民党の公約とも近い内容です」と話す。
また、国民民主党も防衛費増額を掲げているが、車田記者は「防衛の新領域と言われるサイバー、宇宙、電磁波などに対処できるように必要な防衛費を増額するとしています。また、同盟国などとの協力を検証して戦争を始めさせない抑止力の強化と攻撃を受けた場合の自衛のための打撃力、公約では『反撃力』と記載していますが、そういったことを整備したいのでしょう。NHK党も防衛費増額に賛成しています」と説明する。
日本維新の会と国民民主党、そしてNHK党が増額に賛成を示している防衛費。逆に防衛費増額に反対している政党について、車田記者は「共産党と社民党が明確に反対しています」と明かす。
「共産党に関しては、自民党が掲げる防衛費の増額において、岸田総理が財源について発言しないことを指摘しています。その上で、増額するなら消費税の大幅増税か、社会保障や教育などの予算の大削減はあきらかだと訴えて強く反対しています。志位委員長は都内で行われた第一声で『消費税で賄えば2%以上の増税。医療費負担に押し付ければ窓口負担が2倍になる。現役負担は6割負担になる年金にしわ寄せするならば年12万円も年金が減ってしまう』と訴えていました」
一方で、社民党は「防衛費を倍増すると憲法9条が改悪され、暮らしと平和が壊れる」として防衛費増額に強く反対している。
「福島党首は都内での第一声で『二度と戦争をしないと決めた憲法9条をもって平和国家としてあり続けるのか、それとも戦争のできる国、まさに軍事大国の社会にこの国がなってしまうのか、それが問われる選挙だ』と訴えています」
れいわ新選組は防衛費増額に関して、明確に反対とは掲げていない。車田記者はどうみているのか。
「れいわ新選組は専守防衛と徹底した平和外交で周辺諸国との信頼を強化して、北東アジアの平和と安定に寄与していくべきだと訴えています。一方、敵基地攻撃能力の保有については反対ではなく不可能だと記載しています。日本は国連憲章の敵国条項によって敵基地攻撃能力や核配備などの重武装は不可能だとしています」
政府は国家安全保障戦略の改定を年内に行う予定だ。選挙の後、議論が本格化する見通しだが、選挙の結果次第で議論の方向なども変わってくるとみられている。(ABEMA/倍速ニュース)