中国の地方銀行で8000億円の預金が引き出せなくなった問題。預金者ら1000人規模のデモが発生し、地元警察が力づくで排除するなど、抗議活動が一層激しくなっている。
事件は今どのような状況なのか。その大規模な抗議活動を取材したANN中国総局の李志善記者に聞く。
Q.現地の抗議活動の様子は?
10日の抗議活動は早朝4、5時からと早い時間からだった。そもそも抗議活動は河南省・鄭州市で、地元政府の銀行監督当局庁舎の前で何度か行われてきたが、今はそこにつながる道が封鎖されて近づけないようになっている。車はもちろん入れないし、歩いて行こうとしても制止される。どうやって声をあげようかということで考えたのが、誰も予想できない時間と場所で抗議をするということだったようだ。今回の場所が中国人民銀行の河南省の支店で、ここは地方銀行の上級機関にあたる。ちょっとでも声が上に届いてほしいということで、その上級機関の前で抗議することになった。
中国の公務員がよく使うスローガンで「為人民服務」、つまり人民のために奉仕するという言葉がある。今回、現場で起きていたことはこれと真逆だったと言えると思う。被害者である預金者を強制的に排除したり、預金者に抗議活動に参加するなと電話をかける圧力をかけている。取材した預金者の「私たちは被害者であって、権利を守りたいだけだ」という言葉に尽き、それに耳を傾けるべきだと思う。
Q.行政の対応は?
11日夜にニュースが入ってきた。小口の5万元、日本円で100万円以下の預金について、地元政府が肩代わりするかたちで先に預金を返還すると発表した。それは1つ進展だと言えるが、一方で大口の預金者については追って対応を発表するとしていて、まだまだ安心できない。
このように地元政府は何もしていないわけではなく、警察当局とも連携をしながら事態の全容解明に動いている。事件のスキームとして、投資会社が傘下の銀行を操って預金を集めていたが、それ以外にも複雑な状況があり、捜査に非常に時間がかかっている。多数の預金者がいることや個別のケースがあって、お金の行き先を調べたり、資金の凍結や差し押さえたりと徐々にやっている。
実は、この銀行は農村や農民、中小企業を助けるとうたっていたことから、地元政府は何度も模範的な金融機関として表彰していた。そのため、監督責任を追及する声があがっていて、地元政府としては事を荒げたくないということで封殺するように動いている。
地元警察は関係する容疑者を逮捕したと何度か発表していて、少しずつ進展はしていると思う。また、名指ししている主犯格とされる男がいて、この人物は今地中海のキプロスの国籍を取得したと。その男が海外に資金を移した後、アメリカに逃げたとも報じられている。中国籍ではなくなった人物がアメリカに逃げているということで、捜査も難しい部分がある。その男が関係しているという先に取材をかけたが、残念ながら有力な情報は得られなかった。
Q.今後この事件が収束する見通しは?
見通しは難しい。ただ、中央政府に対してもなんとかしてくれという声もあがっていて、国が乗り出してくるのか、地元政府がなんとかするのか。国としても座視できない状況になってきているので、そこのバランスになってくると思う。(ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)