新型コロナの再拡大は中国・上海でも深刻だ。上海市内各地では再封鎖が相次ぎ、1000万人を対象にした大規模検査も行われている。
【映像】人工芝のような壁 上海市“再封鎖エリア”(画像あり)※04:05ごろ〜
7月1日にはゼロコロナに「完全勝利」を宣言していた上海市。わずか2週間で何があったのだろうか。現地を取材中のANN上海支局の高橋大作支局長はこの状況について「本当にガラッと変わった。上海に暮らす人はまさに一喜一憂。市内ではオミクロン株の別系統BA.5も今週初確認されていて、戦々恐々としている状況だ」と話す。
「7月3日に大規模なクラスター感染が見つかり、徐々に感染者が増えてきました。7月に入って累計500人弱の感染者が出ています。ここ数日は感染者50人前後で横ばいですが『このまま増えると大変だ』ということで、市民はビクビクしています」(以下、高橋支局長)
いま1000万人の大規模検査も行っている上海市。街では暑さの中、PCR検査の行列に並ぶ人々の姿がある。
「陽性者が市内のあちこちを移動していたため、濃厚接触者やその関係者を対象に1000万人規模のPCR検査がおととい、きのう、きょうに渡って行われています。私自身も検査の対象者です。私には『火曜、水曜、金曜、日曜と合計4回PCR検査を受けてください』と通達がありました。上海は昨日(13日)の最高気温が40.9度と観測史上最高を記録していて、今日もとんでもない暑さです。その中でPCR検査の行列に並んで受けなきゃいけない状況です」
すでに上海では街のいたるところで“再封鎖エリア”があり、感染者や濃厚接触者の住宅など、上海市内でおよそ230カ所以上あるという。今後、再びロックダウンが発令される可能性もあるのだろうか。
「市の当局者を取材すると、政府は上海市の大規模ロックダウンは避けたいと思っています。その代わり、小規模な封鎖は多くの場所で行っています。ANN上海支局のメンバーも、今月に入って4人中2人の自宅が一時的に隔離されました。それだけ身近に封鎖されるエリアがあります」
中国全土でBA.5の感染確認が相次いで報告される中、高橋支局長によると「3つの問題」が起きているという。
■(1)SNSで繋がっているだけなのに「赤コード」
「私たちは、2日~3日に検査を受けて、問題なければこの緑コードが発行されます。緑コードが無ければ、お店に入れず、交通機関も使えません。また、赤コードだと、陽性者・濃厚接触者扱いで、身動きが取れなくなります・隔離の人です」
上海市では、この赤コードを発行される人が相次いだという。
「陽性者と同じSNSのグループチャットに入っていたという理由だけで、コードが赤になって、実質一時的に隔離された人もいます。また、検査を受けて、陰性を証明した後、赤コード取り消しの手続きをしないと緑コードに戻すことができない人が相次ぎました」
上海市当局は、開きなおって当初は「感染の可能性がある人を素早く特定する必要があった」「念のため検査して、緑になったから良いではないか」という説明だったが、批判を受けて謝罪した。
■(2)元陽性者への就職差別
「元陽性者の就職差別問題もあります。上海にはたくさんの出稼ぎ労働者・日雇い労働者がいます。中にはロックダウン期間中に感染した人もいますが『元陽性者は雇用しない』という会社が相次ぎました」
「7月でもお金が尽きた人たちが、駅のトイレや橋の下に集団で寝泊まりする姿見られた」と話す高橋支局長。現在、新型コロナの影響もあり、中国全土で「就職難」が起きており、最新の統計によると16歳から24歳の失業率は18.4%。ただでさえ就職が難しい中、新型コロナに罹患した経験があるだけで、より仕事が見つからないという状況が社会問題になっている。
■(3)公式!?「買いだめ推奨通知」
「また、上海の一部の住民委員会・町内会のような組織が住民に向けて『14日分の食料や常備薬などは、備蓄をしておくように』と通知を出しました。これまで上海市当局は『不要な買いだめはしないように』と、冷静さを促すのが基本姿勢でしたが、一点『買いだめ』を正面から推奨する姿勢に『またロックダウンがあるのではないか』といった憶測がひろがっています」
この状況に上海の住民委員会は「コロナが増えているので、部分的な封鎖が増えている」「ある程度の備えは必要」と説明しているという。
「中国全体のロックダウンは、もうやらない・できないという感じです。ただ、自分の自宅も含めた“部分的封鎖”はいつ通知されるかわからない。『今晩から封鎖です』言われても、おかしくない状況です」