母親の脱会を機に弁護士になった男性が語る旧統一教会…脱カルト協会理事「宗教とカルト団体を一緒にしてはいけない」
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 安倍元総理を銃撃した山上容疑者は、母親が旧統一教会に入会し、およそ1億円もの献金をして破産したことから、“教団を恨んでいた”という旨の供述をしているという。

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 また、報道各社の取材に応じた山上容疑者の伯父は「(母親は)何も思わないだろう。思うんだったら脱会している」と話している。

 20日の『ABEMA Prime』では、母親を脱会させた経験から法律に関心を抱き弁護士になった男性と、「日本脱カルト協会」の代表理事も務める西田公昭・立正大学教授に話を聞いた。

■2、3年も経てば関心も変わるのではないかと考えていた

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 松野さん(仮名)の母親が旧統一教会と関わるようになったのは1990年2月のことだった。

 「当時、私は大学進学で関東に出てきていたが、家庭内では父方の祖父の介護をめぐってトラブルが起きていた。父が守りきれず、母は孤立して悩んでいた。そこにやってきた印鑑の訪問販売の方に、思わず愚痴をこぼしてしまい購入。そこをきっかけに入っていき、壺のようなものも購入するようになったようだ。こうした経緯を妹に聞き、原理研究会の勧誘を受けた経験もあった私は“統一教会ではないか”と感じた。

 帰省の時に高麗人参茶を飲まされたり『原理講論』という旧統一教会の教典を勧められたり、『メッコール』という麦で作ったコーラのような飲料水を下宿に送りつけてきたりということもあった。あるいは教会に対して批判的なことを言うと会話にならないということもあった。こうしたことを苦々しく思いながらも、言動は普段の母と大して変わらなかったし、もともと多趣味な人間だったので、2、3年も経てば関心も変わるのではないかと考え、時が経ってしまった」。

■父も感化され、いつしか取り込まれてしまった

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 しかし1995年、母から“父と二度目の結婚をした”と聞かされ、愕然としたという。

 「1994年に結婚をする際に妻の実家にあいさつに行き、母が旧統一教会という問題のある宗教に入信している一方、父はそこそこ大きな会社の部長を務めているし、ちゃんと見守っているから大丈夫だと説明をした。ところが1年ほどが経った頃、母が妻に“実はお父さんと祝福を受けた”と話した。

 この“祝福”というのは、文鮮明の名の下に男女がマッチングをされる合同結婚式のことだ。すでに結婚している夫婦についても改めて契りを結ぶ“既成祝福”と呼ばれるものがある。はっきり言って信者からお金を取るための手段だし、父もかなり足を踏み入れてしまっているということに気がついた。

 旧統一教会は“夫を呼んできなさい”“いずれは子どもも入信させなさい”と、隙あらば家族を取り込もうとしてくる団体だ。入信後の母が家庭のトラブルに対処できるようになった様子を見て、父も感化され、いつしか取り込まれてしまったのだろうと推測している」。

■自分の頭で考えられるようにすることが肝要

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 危機感を抱いた松野さん。両親の脱会に向けて乗り出す。

 「旧統一教会の教えによって救われるのであればいいが、残念ながらこの団体はカルトであって、宗教ではない。そこで92年に桜田淳子さんなどが合同結婚式に参加して大騒ぎになったときに参照されていた『マインド・コントロールの恐怖』(スティーヴン・ハッサン著、浅見定雄訳)を読んだ。そして、組織として、ある意味で“統一教会”的な人格を作り上げる団体であって、単なる新興宗教で、2、3年で興味が移れば抜けられるような、そんなものではないということを学んだ。そこから妻と妹と3人で模索する日々が始まった。

 脱会カウンセリングの本も読み、知識を得た上で弁護士に相談に行ったが、脱会後の返金交渉はできても、脱会についてはカウンセラーにお願いしたほうがいいとアドバイスされ、牧師さんを紹介してもらった。カルトの信者というのは自分の頭では考えることができない状況にさせられていて、旧統一教会でも疑問があれば“アベル”と呼ぶ上司に判断を仰ぐ。それどころか、教義に反するような考えは邪なものだとして、頭に浮かんだときは“自分の中にサタンが入った”と考える。こうしたマインドコントロールを解き、自分の頭で考えられるようにすることが肝要になってくるからだ。

 例えば旧統一教会は『世界基督教統一神霊協会』と名乗っていたように、キリスト教をベースに“アダムとエバ”といったところから説き起こしているので、教義の矛盾を突くという意味ではプロテスタントの牧師さんが適任だ。実際、脱会カウンセラーの方の大半が牧師さんだった」。

■悩みを抱いていた頃に戻ってしまうケースも

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 その後、1998年に無事に母親を脱会させることができたが、自身のケースについては“ラッキーだった”とも話す。

 「私の場合、就職もして自活できている状況にあったこと、また、父を亡くしたことで救い出すのが1人になり、母も父の生命保険金によって生活ができたということがある。今は私と一緒に住んでいるし、妹に子どもがうまれたことで孫ができ、“あの期間はなんだったろうな”というのはありつつも、元来が陽気な性格だったし、現在はとても幸せに暮らしている。

 ただし一般的によく言われるのが、“入信した時に戻る”という問題だ。例えば就職や恋愛、自己実現などの悩みの中で入ってしまい、10年ぐらい経って抜け出せたけど、“この10年はなんだったんだ”という現実に直面し、悩みを抱いていた頃に戻ってしまい、大変な思いをされる方もいる」。

 そして司法試験に合格、現在は弁護士として活躍する松野さんは、献金をめぐる訴訟に変化も見られると明かす。

 「私もこの数年で2、3件の訴訟に関わっていて、現在も1件抱えている状況だ。ただ、私が弁護士になりたての15年ほど前は詐欺だとか、社会的相当性を欠く献金だということが認められる勝訴が続いたことにより100%に近い金額で返していた。ただし教団上層部の考え方や資金の状況にもよるのか、昨今は渋るようになっている。我々はずっと発信し続けてはいたが、やはり今回のような事件が起きないとメディアに触れていただけない現実もある。これを機にカルトの怖さについての認識を共有し、深めていただければと思っている」。

■宗教とカルト団体を一緒にしてはいけない

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 こうした問題を論じる際の注意点について、西田教授は「宗教と一緒にしてはいけない」と警鐘を鳴らす。 
 「これは宗教の問題ではなく、“宗教っぽく見せているカルト団体”の問題だ。本来、宗教というのは信じることによって救われなきゃいけないし、だからこそ魂が解放される。ところがカルトの場合、何らかの条件や名目の下、奉仕してようやく救われる。だから必死になってお金を貢いだりする。つまり金銭を搾取したり、会員の人権を侵害したりする団体だ。宗教は救われるもの、カルトは逆に魂を捕囚するもの。そこが大きな違いだ」。
 
 その上で脱会へのプロセスについて、次のように説明した。

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 「カルト側は脱会させないよう対策を練ってくるので、細かいノウハウをここで説明することはできないが、こんなに一生懸命“おかしい”と言っているんだから、家族を愛しているのなら考え直してくれないか、と動機づけること。そして、教義の矛盾を突いたり、カルト、マインドコントロールについて説明したりしてくれる知識や実績を持った専門家だ。加えて、元気に、幸せに生きている元信者さんが現実にいるということを見せられると、恐怖感を抱いている信者さんに安心感を持たせることができる。こうした方々のサポートを得ながら、自分自身で間違いに気づいていくというプロセスが大事だ。

 やはり信じているものに対してああだこうだと説得しても大抵は失敗する。信念がワクチンのようになって拒否してしまう。そこは松野さんのように、どうして関心を持ったのか、魅力を感じたか。あるいはなぜ引っ張り込まれたのか。そこを理解した上で、ちゃんと手当てしていくための準備が大切だ。知らずに行くと逆にやられてしまうし、場合によっては1年も2年もかかるだろう。そもそも日本にはこうしたことに関する教育がない。高校生とかのレベルでやっておかないとダメだ」。(『ABEMA Prime』より)

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