安倍元総理を銃撃した山上徹也容疑者の供述から再び注目を集めている「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)。宗教と政治の問題に詳しいジャーナリストで作家の鈴木エイト氏はその勧誘の実態について、次のように明かす。
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「旧統一教会が日本に入って来てから約60年が経過しているが、その間の様々な失敗例も踏まえ、“こうすればスムーズに導くことができる”という勧誘の道筋が洗練され、システマティックに、組織的に行われている。
また、下の世代、次の世代への指導も行われていて、いま街頭で勧誘しているのは、ほとんどが二世信者だ。教団の考え方の中で生きてきた子たちは、“騙して連れて来たとしても、本当に素晴らしいものに導くことが出来るのであれば、その嘘は徳を積むものだ”と教え込まれているからだ。
ただし、2015年以前はこうして街頭で勧誘された信者が勧誘員をやるという、入れ子構造も多く見られていたが、近年はなかなか信者が獲得できなくなっている。また二世信者の中にも葛藤を覚え離れたいと悩み離れていく子もいる」。
それでも、大学構内での信者獲得は今も続いていると警鐘を鳴らす。
「もともと河川清掃ボランディアといったものを入口にすることが非常に多かったが、最近よく掲げているのが“SDGs”を旗頭にした、“カレッジサミット”や“オンラインセミナー”などを開催、学生や教員を引き込む。知らずに参加している人は大勢いると思う。SDGsには要注意だ。大学のサークルの中にいる偽の学生が教団の施設に連れて行くという事例もあるし、身近にいた2世から誘われる可能性もある」。
先週には東京大学の学生新聞『東京大学新聞』が「近年活動を活発化させている新宗教団体・世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と歩調を合わせる『東大新報』は、当社とは関係ありません。当社は、電話による勧誘などは一切行っておりません。」との声明を発表した。
こうした名前のよく似た学生新聞は全国の複数の大学で発行されており、その母体が、旧統一教会の組織した学生団体といわれる「原理研究会」であることが指摘されているのだ。
鈴木氏は「これは略称でCARP(カープ)とよばれるもので、表向きは旧統一教会とは別団体ということになっているが、実際は一緒で、構成しているのはほとんどが2世信者だ。大学OBや教員からの講読料が資金獲得の手段にもなっている」と説明した。
■「1人で歩いている人がターゲット」
過去20年ほどにわたり街頭での勧誘を取材してきたという鈴木氏によれば、その具体例は次のようなものだ。
「特定商取引法などの関係からマイナーチェンジしているところもあるが、1人で歩いている人を必ずターゲットにし、同じくらいの年齢の同性の会員が声をかける。そこで相手が首尾良く立ち止まって会話が始まり、“この人はビデオセンターに連れていけそうだな”となると、髪の毛を触ってみるとか、足を後ろに組むといった、予め決められた“協助”の“サイン”を出す。
すると物陰から見ていた仲間が偶然を装って“一緒に勉強している者だ”とか“久しぶりだね”と言いながら合流する。2対1にして囲むことによって相手を逃げられなくしつつ、一人が個人情報を聞きつつ友好関係を築きながら、もう一人がビデオセンターと連絡を取って作戦を立てていく。これが今も続く特徴的な手口だ。
特に狙われやすいのは、学生時代に部活のキャプテンをやっていそうな人物だ。そういう人を引き込むことができれば、勧誘する側に回したときに非常に高い成績を上げることが期待できるからだ。あるいは学食に一人でいる学生や、地方から出てきたばかりで友達がいなさそうな学生も声をかけられやすい。逆に言えば、病気や障害のある方は貢献できないので声をかけられない。落ち込んでいる人、悩んでいる人が対象、というイメージも持たれがちだが、それは違う。
具体的には、かつては“手相の勉強をしていて…”とか、“青年意識調査アンケートで…”といった形で正体と目的を偽って声をかけ、個人情報を聞き出し、そして“偽装教化施設”である『ビデオセンター』に連れて行くという形が多かった。また、このような“入口”の段階でも高額な受講料を取ったり、商品を買わせたりするケースもよくあった。
それが2009年、2010年を境に“コンプライアンス”を主張し出して、高額な受講料や商品の部分は収まってきた。ただ、団体名はアンケート用紙に小さめに書くとか、パンフレットに教祖の写真を掲載するとか、教義である『原理講論』を学ぶことを匂わせる程度で、伝道活動であることを偽っている点は今も変わらない。
また、“統一教会”と聞けば霊感商法のことを知っている人もいるだろうが、“世界平和統一家庭連合”に団体名が変わって以降は“家庭連合”と名乗られても分かりづらいという問題もある」。
■「まずはその場で判断しないこと」
鈴木氏によると、その先のプロセスもまた非常に洗練されたものになっているという。
「仕事や学校の帰りにセミナーに行くと、お菓子や食事を用意してくれたり、担当者が付いて手紙も含めた細かいケアをしてくれたりする。そのようにして人間関係を築き、1カ月ほどが経つと“合宿セミナー”に誘い、教義を刷り込んで飢餓感を煽る。“社会にはこんな大変なことがあって、どうなるか分からないけど、ちゃんと救ってくれる人がいる”と期待感を抱かせる。
そして仕上げ段階として“4DAYSセミナー”というのが出てくる。ここで初めて“ここは宗教団体で、文鮮明が教祖で、素晴らしい方々がいらっしゃって、あなたはそこに導かれた”と明かされる。するとその瞬間、滂沱の涙を流してしまう。さらに最初に声を掛けた信者が花束を持って現れ、抱き合って一緒に泣く。そういう演出がなされる。この時点で、完全に思考の枠組みが変わってしまい、いわば“一丁上がり”ということだ。
以前は最初の声掛けからビデオセンターに通って2カ月、ということでシステム化されていたが、近年はもっと早いスパンだったという子もいれば、数カ月、半年通っても合宿に行かなかったという子もいる。
とにかく誰であっても、こうした内情を知っていたとしても引っかかってしまう可能性はある。身近な問題で、自分とは全く関係のないことではないことを、理解して欲しいと思うし、まずはその場で判断せず、一旦は調べる、周りの人、特に上の世代の人に相談する。簡単にLINEの交換や個人情報を教えるといったこともしないほうがいい」。(『ABEMA Prime』より)
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