安倍元総理が銃撃で亡くなってから8日で1カ月。日本中に衝撃を与えたこの事件は、宗教を信仰する親を持つ子ども、いわゆる“宗教2世”の人々の悩みを明るみに。民間団体「全国統一協会(教会)被害者家族の会」に寄せられた相談件数は急増し、6月の8件から、7月は10倍以上の94件に上った。
宗教2世の人から聞かれる、「周りに相談できず、1人で抱え込んでいる」「苦しんでいる人がいっぱいいることを理解してほしい」という苦悩や葛藤。それを周りはどのようにサポートできるのか、8日の『ABEMA Prime』は当事者に話を聞いた。
母親がキリスト教系新宗教を信仰していた元2世信者で、自助グループを主宰している京都府立大学准教授の横道誠氏。自身が置かれてきた環境について、次のように話す。
「世間的な習慣を悪魔の仕業と考えているので、誕生日やクリスマスのお祝いごとができなかった。物心がついて母の日を知った時、妹と一緒にカーネーションを買いに行ってプレゼントすると母親が激怒して、何が起こったのかわからなかったのがすごくショックな思い出として残っている。一般的な世界と違うのは、教義を教え込みながら、洗脳しながら日常的に暴力を振るうところ。母にとって気に食わない言動をすると、毎日ガスホースで殴られていた」
自身が信者だったのは小学生までで、「勉強が好きで、いろいろな本を読んでいくと教義に矛盾があることがわかってきた」という。実家を出る19歳までは教義に沿って毎日を過ごしながら、「関わりたくないなと思って悶々としていた」というが、その環境から抜け出す難しさについても明かす。
「厳しい家庭の場合だと親や親族の存在があるが、さらに教団というファクターがある。完全に教義に染まるように考える力を奪いながら教育されるので、相対的に見ることができず、なかなか洗脳が解けない。しつけられた動物と同じようなもので、自分で考えることができなくなっていく」
通常、どのようなタイミングで「自分の環境はおかしいのでは?」という違和感を覚えるのか。
「現代だとインターネットが発達しているので、中学校ぐらいで自分の家の教団について検索して、『ヤバい』と言われていることを知って驚く若者が多いようだ。私自身は友達と話す中で、“他の友達の家ではOKだけど、自分の家では禁止”ということが多かった。その違和感について家で話をすると反応が悪いので、『これはどういうことなんだろう?』と疑いを抱くのが出発点かもしれない」
安倍元総理の銃撃事件があったことで取り沙汰されるようになった宗教2世の問題だが、横道氏は「カルトと言われていない宗教でも同じ問題は起こっている」と指摘する。
「親は教団との関係では被害者だが、子どもに対しては加害者になる面がある。親が穏健な人物であれば、カルトと呼ばれる宗教に入っていても家はそんな風にならないケースもある。一方で問題がない宗教だとされていても、親によって家ではカルト的で、子どもが苦しむこともある。親が重要なファクターだ」
外部に助けを求めても、宗教絡みであると、取り合ってもらえないことも多いようだ。
「よく自助グループの参加者から聞くのが、ホットラインに相談して『虐待が行われているんだ』と言っても、宗教が絡んでいるとなると『おうちでなんとかしてくださいね』と電話を切られると。実際にこれは信教の自由の問題なのだが、子どもの信教の自由が侵されている、子どもの人権が軽んじられているということをよく考えないといけない」
横道氏が2年3カ月前から主宰する自助グループでは、当事者研究の手法を用いて、宗教2世(特に元信者)や宗教被害全般に関する悩みを語り合って緩和を試みる取り組みを実施している。その経験を踏まえ、状況の改善には行政のサポートが必要だと訴えた。
「自助グループでは法的な解決はできないが、苦しんでいる人にとっては効果的だ。結局、人間は苦しい時にいろいろと混乱するので、本人同士が語り合うことによって冷静になっていく。そこに安心感があって、参加してくれた人も喜んで帰っていただけている。ただ、行政側が何か考えて改善していかなければいけないとも思う。例えば、各自治体の区役所や市役所などに研修を受けさせてもらって、“こういう問題がある”とわかっている人が福祉サービスにつくということになると、どんどん変わっていくと思う」
(『ABEMA Prime』より)
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