クーデターから1年半。ミャンマーに関するニュースが相次いでいる。先月には数十年以上ぶりに政治犯に死刑が執行され、日本人が拘束された。ミャンマーの最新情勢について、ANNバンコク支局・久須美慎記者はこう話す。

【映像】やつれた様子で椅子に座るスーチー氏(画像あり)※15:20ごろ〜

「現地では、日本人ジャーナリストの久保田徹さんが拘束されています。久保田さんはデモ隊の様子をカメラで撮影していたところ、治安当局によって拘束されました。大使館によると、直接連絡はとれていないそうですが、健康状態は問題ないとみられていて、大使館は当局に早期の解放を求めています」(以下、久須美記者)

77歳のスーチー氏、刑期100年超えか「国全体が疑心暗鬼」ミャンマーのいま
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77歳のスーチー氏、刑期100年超えか「国全体が疑心暗鬼」ミャンマーのいま
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 報道では“拘束”といった表現が使われているが、逮捕されているわけではないのか。

「司法手続き上、逮捕されているかどうかは不透明です。去年4月、ミャンマーで拘束されたジャーナリストの北角(きたずみ)裕樹さんは『虚偽の情報を広めた』とする刑法違反で訴追されましたが、これが取り消され、およそ3週間後に解放されました」

 国軍が全権を掌握しているミャンマー。場合によっては今後、久保田さんの拘束が長期化する懸念もあるという。

「国軍は『法律に沿って〜』と主張するものの、実質、国軍の良きように何かと理由をつけて逮捕・拘束することができてしまう状況です。北角さんのように国軍当局によって訴追され、司法手続きが進むということになれば、拘束が長期化する可能性もあります。大使館にとっても、なかなか動きが見えづらいところです」

 久保田さんは現地で撮影していただけで拘束されたのだろうか。

「国軍は久保田さんについて『デモ隊とのつながりがあった』と主張しています。本当にそのつながりがあったのかどうか、取り調べの中で確認している状況でしょう。国軍から疑いをかけられている可能性はあります」

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 クーデターから1年半。いま、ミャンマーの現状はどのようになっているのだろうか。

「日常はあります。ショッピングモールなども開いていて、人々も生活費を稼ぐために、仕事をしないといけない。ミャンマー最大都市のヤンゴンでも、マーケットでは多くの人々が行き交っていますし『国軍によって何もかもができない』といった状況ではありません。ただ、一見、平和に見えますが、突然中心部で爆発が起きて、けが人や死者が出ることもあります。それが国軍によるものなのか、民主派の武装組織によるものなのか、わからないケースもあります。中には、民間人であっても当局側に情報提供をする国軍支持者もいます。こうした人がどこにいるかわからないので、抗議する人も非常に慎重にならざるを得ません。撮影なども非常に難しく、カメラで撮影していると『何に使うのか?』と不安になる人も多くいます。国全体が疑心暗鬼になっている状態です」

 現地では新型コロナの影響もあり、あらゆる商品がクーデター前の2倍近くに値上がりしているという。また、日本企業を含む外資系企業の撤退なども相次ぎ、外貨が不足している。

「去年2月のクーデターから1年半が経ちましたが、実際に抗議活動がなくなったわけではありません。国軍側、治安当局の激しい弾圧によってデモに参加していた市民に多くの死者が出ました。その後、こうした弾圧を避けるために短時間で集まって、治安部隊が到着する前に解散する、いわゆる『フラッシュモブ』と呼ばれるゲリラ的なデモが行われるようになっています。今年2月、クーデターから1年のタイミングでは『サイレントデモ』と呼ばれる、逆に外に出ずに社会活動を停止させる形式の抗議活動も行われました。決して国軍に対する抗議の動きがなくなったわけではなく、各地での小規模なデモの様子をとらえた映像がSNSなどでシェアされている状況です。最近の抗議活動では身元がわからないよう、目出し帽をかぶって顔を隠しながらデモを行う人もいました」

 先月には政治犯に死刑が執行されたミャンマー。現地メディアによると、国内で実際に死刑が執行されたのは30年以上ぶりだという。

「民主派に向けた『脅し』『見せしめ』の面もあったように感じます。国軍側は『法律に基づく』と正当性を主張していますが、国際社会からは非難が相次いでいます。今後、民主派側も含め、反発の声が高まることは想像に難くないですし、これによって対話による解決の道が、さらに遠のいたように思います」

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 同国の初代国家顧問で非暴力民主化運動の元指導者であるアウンサンスーチー氏は、去年2月のクーデターで拘束された後、軟禁状態が続いているとみられている。日本でもよく知られている彼女だが、今後死刑になってしまうのだろうか。

「スーチー氏の拘束後の姿が報じられたのは去年5月ですが、その後は映像・写真が公にならず、拘束の長期化に伴う健康状態などが心配されています。そんな中、今年の6月下旬に首都・ネピドーにある刑務所に身柄が移されたと報道されました。刑務所内の特別な建物に収容されているそうですが、詳しい状況はわかっていません。スーチー氏は、複数の容疑で訴追されていて、一部ではすでに判決も出ています。ミャンマーの司法制度では、それぞれの刑が加算されることになります。スーチー氏はこれまでに6件の罪で有罪判決を受けていて、刑期は禁錮11年。まだ裁判中の容疑もあるため、刑期は今後増えていくとみられています。現地メディアでは、裁判がこのまま進み、有罪判決が相次げば刑期は100年を超えるのではないかといわれています。スーチー氏は、6月に77歳になりましたが、このまま拘束・軟禁を長期化させることで、民主派を弱体化させたいという意向があるようにみえます」

ABEMA/「倍速ニュース」より)

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