BACKSTAGE TALK #35  T-STONE

ABEMAMIX出演の合間に、HIPHOPライター 渡辺志保 氏がアーティストにインタビューを実施!
ココでしか聞けないBACKSTAGE TALKをお届けします!

T-STONE「 ”音楽を作る”って結構スピリチュアルなこと。"気持ちいい"と思って作った曲は聴く側も気持ちいいんかなと思ったり」地元・出会い・上京、想いの詰まったNEW ALBUMについて語る
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―1stアルバム『Type 1 Diabetes』のリリース、おめでとうございます。周りからの反応はどうですか?

T-STONE:いろんな人からコメントやいいお言葉を頂いて、皆さんからのリスペクトを感じます。母親についてラップした「Woman ft.空音」って曲があるんですけど、女性のDJの方から「泣いた」って言われたこともありました。

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T-STONE「 ”音楽を作る”って結構スピリチュアルなこと。"気持ちいい"と思って作った曲は聴く側も気持ちいいんかなと思ったり」地元・出会い・上京、想いの詰まったNEW ALBUMについて語る

―イントロから最後まで、聴いていてエモくなってしまうところが何箇所もあったし、何というか、人生を感じるアルバムだなと感じました。客演や曲の構成も見事だし、どのように作っていったのでしょうか。

T-STONE:事務所と打ち合わせしたり、そこで提案してくれたりした内容も元にしながら、「確かにこっちの方がいいな」と思うことを採用して、チームで決めていった感じです。

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 ―去年、地元の徳島から上京して事務所に所属してらっしゃいますよね。1人で制作していた頃と比べて、変化はありましたか?

T-STONE:一歩踏み出すこと自体は簡単なことやのに、その一歩を踏み出すにあたっていろんな人の許可をもらわないと前に進めない。いろんな人を巻き込んで動かなあかんところは違うかなと思いますね。僕、そもそも集団行動がめっちゃ苦手なんです(笑)。あとはやっぱり、これまでは手に届かなかった人――プレーヤーの人も含めてーーとリンクしてアルバムに参加してもらうことも、自分1人じゃできひんかったことですね。東京に来て、周りの人と一緒に動くことによって夢が実現していったなと感じます。

―そもそも、上京のきっかけは何だったんですか?徳島で活動していくことより、1人で東京に来ることを選んだ理由は?

T-STONE:勢いっすね。22歳くらいの時かな、徳島でワンマン・ライブをやったんです。地元にいる僕の周りのラッパーやプレイヤーを見ても、そんなことをしている人は1人もおらんかった。ある程度、自分の知名度が上がっていくことも実感していたし、そうなったらもう僕が“徳島の天井”みたいなところがあったと思うんです。
自分の伸び代はちょっとずつ伸びていく一方やったし、もっと大幅に成長したいと思った。そうしたら、「東京に行くしかないな」って。今の事務所の社長が徳島出身の方だったので、その人がいるからということもあり、上京を決めました。

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―今も地元にいて、「上京したいけど、どうしよう」と迷っている方にアドバイスするとしたら?

T-STONE:「行くしかない」っていうか。でも、目的もないのに東京に来たら飲まれてしまうだけなんですよ。東京に来て、活躍している人よりも人生を棒に振るみたいな人の方が多いと思うんです。
だから、強固な意志があるんだったら東京に来るのがいいと思います。

―アルバムにも、地元のアーティストが参加していますよね。「IDNFF」にはG:ntさんとRiinさんが。

T-STONE:この曲のトラックメイカーであるAnan Kaminakaってやつも徳島出身なので、この曲はマジで徳島シットです。今回の1stアルバムに参加してもらいたい地元のアーティスト、たくさんいたんです。
でも特にG(:nt)が一番古い付き合いで、16、7の時から知っている。いっぱいおるけど、「誰かに絞らなあかん」と思ったら、GとRiinしかおらんかった。

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―今の徳島のシーンはどんな感じですか?

T-STONE:今はめっちゃ盛り上がってると思います。同じ地元だと、Watsonくんもめちゃくちゃ活躍しているし。僕が徳島を出てから一年半くらい経ちますけど、若い子もたくさん出てきているからもう分からないくらい。下の世代から追われてるなっていうのはすごく感じますね。
僕を追い越そうとしているというか。でも、後ろを振り向く暇はないので。

―アルバムの―曲ごとにテーマがはっきりしているなと感じました。制作を進めていく中で、「これだけは外せない」というか、デカいポイントにしていた部分はありましたか?

T-STONE:一曲目の「Intro ~Famous and Rich~」と、「Don Da Da」ですかね。「Intro〜」は、NAOtheLAIZAさんのビートを聴いた瞬間に「これは絶対にアルバムの一曲目だ!」と思って。リリックでも言ってるんですけど、ANARCHYのライブをはじめて観た時にめちゃくちゃ泣いて。これはマジで実話なんです。

―「ANARCHYのLive初めて見た日/溢れ出てくる涙流し/まるで映画のOne Scene/地べたから来た私」という箇所ですよね。実際にはどんなシチュエーションだったのでしょうか?

T-STONE:その時、僕はギリギリ10代で、(SNSがきっかけで人気が出た)「Let’s Get Eat」も出ていない頃だったんです。ANARCHYが徳島にライブで来るって時に、フロントアクトとして僕が出て、形式的には対バンみたいな感じでした。僕もそんなに名前が売れているわけでもなかったので、地元の先輩・後輩、友達とかからも、たくさん「(本名の)タクヤ、すごいやん。ANARCHYと一緒やん」と連絡をもらって。
俺もイキってた時だったので、「地元やし、ANARCHYよりも俺の方がカマすやろ」って返してたんです。

―それは尖ってますね…(笑)。

T-STONE:でも、それは本音だったし、ライブした後もみんなが「よかったよ」って言ってくれた。ただ、俺の中ではなんか不発だった気もするなって感じやったんですよ。その後、そのままANARCHYのライブが続いたんですけど、マジで100対ゼロでボコボコに負けました。ANARCHYの方がぶちかましていて、すごかったんです。初めてナマでANARCHYを観て「こんな覇気を持っとる人間、初めて見るわ。なんだこの人」って。

ほんだら、ANARCHYがライブ中のMCで「さっきのラッパー、名前何って言うねん?」って話し出して。「T-STONE!」ってみんなが返したら、「そしたらお前ら、T-STONEのこと応援しろよ。お前の地元のラッパーやろ」ってことを言うわけですよ。そこで「何なん、この人。ばりかっこええやん」って。

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―その後、ANARCHYさんと挨拶などは?

T-STONE:ライブが終わった後も、挨拶するタイミングは何回かあったんですけど、悔しすぎて挨拶もできんかった。僕はテキーラをボコボコに飲んだ結果、朝方、6時とか7時くらいにクラブの大通りで号泣してたんです。めっちゃゲロ吐いて、仲間からも「いけるか!?」って声を掛けられてて。

―そこまでデカいインパクトだったんですね。

T-STONE:その出来事が起こった三ヶ月後に、今度はANARCHYが徳島の上にある香川県にライブに来ることになって、ANARCHYサイドから「この間の徳島の若いやつ来えへんの?」って呼んでもらったんです。その日、僕はデイ(イベント)で京都やったんですけど、速攻、ライブが終わった後に香川まで行って。そこで、初めて「この間はすみませんでした」って挨拶して、一緒にVIPでお酒を飲みました。
 
―実際にお話ししたANARCHYさんの印象は?

T-STONE:めっちゃ優しかったですね。LINEのQRコードの見せ方すらかっこよかったのを覚えています(笑)。

―ANARCHYさんのライブを観た際、ご自身との違いというか、刺激を受けたポイントってどういうところでした?

T-STONE:DJのAKIOさんと、ほんまに阿吽(あうん)の呼吸でやってるんですよ。僕、ガキやったんで「どうやったらもっとクールにライブが出来ますかね?」って率直に聞いたんです。そしたら、ANARCHYは「お前、めっちゃ練習やリハーサルしてるやろ、それや。もう、ライブは呼吸やねん」と言ってくれて。
その時はあまり意味が分からへんかったけど、今はその言葉の意味がめっちゃ理解できるし、僕も「呼吸やな」って思うんです。

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―そうだったんですね。もう一つの「Don Da Da ft. Zeebra」は?

T-STONE:これも、重要な曲ですね。「結婚の理想と現実」(Zeebraのアルバム『BASED ON A TRUE STORY』[2000]に収録)のサンプリングをしたいということになって、DJ WATARAIさんがトラックを作ってくれたんです。最終的にドリルのトラックになってるんですけど、最初は違ったんですよ。もとのビートをブラッシュアップしていくにつれて、結果、ドリルになっていった。僕の本当の性格やったら、こういう曲って結構ウキウキしてすぐ筆が進んで、速攻「できました!」って感じになるが多いんです。
でも、この曲はなかなか納得いくヴァースが録れなくて「あれ?」みたいな。結構、時間をかけて考え抜いて作ったんです。

―「結婚の理想と現実」は、もともとT-STONEさんが小学生の時に聴いた楽曲だとも伺いました。

T-STONE:はい。この曲を教えてくれたのは僕の親父でした。親父はもう天国に行ってるんですけど、「親父が聴いて納得してくれるヴァースじゃないと、俺も納得できない」という思いがずっと心にあって…。こんな曲の書き方は初めてでしたね。

―結果、練りに練ったヴァースが完成したということですよね。Zeebraさんも、今の私生活の様子を織り交ぜてラップしていて、こうしたリリックはめっちゃレアなのでは?と思いました。「よくぞ引き出したな」と。

T-STONE:Zeebraさんも、すごく気合を入れて書いて下さったみたいで。レコーディングの現場でも、すごくヴァイブスを感じました。アルバム制作時、客演のアーティストとはほとんどみんな一緒にスタジオに入ってるんですけど、ジブさんと一緒にスタジオ入ったのが一番緊張しました。

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―『Type 1 Diabetes』を完成させたからこそ、見えてきたヴィジョンや今後の目標などはありますか?

T-STONE:まず、今はライブのツアーが20件以上決まっているんです。だから、体調管理しながら無事に回ること。年始の1月にはワンマン・ライブも開催そする予定なので、それをクリアしつつ、その前には、アルバムのデラックス版も作ろうと思っています。アルバム制作を経て、音源制作との向き合い方が成長したなと感じています。
今回、エンジニアはGiorgio Blaise Givvnさんが担当して下さって、ずっとGivvnsさんと一緒に制作していたんです。Givvnさんは将棋も強いし、マジですごい。音楽のことや、スキルだけじゃない、本質やハートの部分も教えてもらいました。
”音楽を作る”って結構スピリチュアルなことだと思うんですけど、自分が「気持ちいい」と思って作った曲は、聴く側も気持ちいいんかなと思ったり。そういうことを意識しながら、これからもいい曲を作っていきたいです。

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