竹中平蔵氏、刑罰による抑止力が効かない“無敵の人”対策は「ベーシック・インカムによって下部構造を豊かに」
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 安倍元総理の銃撃事件以降、“日本の安全神話が揺らいだ”として、著名人の警備体制の問題がクローズアップされている。他方、テロ行為や無差別殺傷事件が起きる度、いわゆる“無敵の人”や、背景にある貧困、経済格差の問題が論じられてきた。

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■「あらゆる暴力を排除していく、という議論もしなければ」

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 15日の『ABEMA Prime』に出演した学習院大学非常勤講師の塚越健司氏(情報社会学)は「例えばHIKAKINさんが14日のイベント出演中に不審者に接触される様子は“切り抜き動画”としてTwitterで拡散し、おそらく数十万、数百万の方が目にしたのではないか。動機は別にして、安倍元総理の事件を思い出し、“まずいことになっている”という感じた人も多いと思うが、一方で“やってもいいのだ”、あるいは“自分も”と考えた人もいると思う」と話す。

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 「そうなれば当然、厳罰化の議論が出てくるし、それによって社会がギスギスし、結果的に同様の罪を犯してしまう人が出てくるというサイクルも出てきてしまう。まずは未然に防ぐ努力が必要だ。その上で、“自分なんか誰も助けてくれない”“この社会で生きていても何も良いことはない”というタイプの、刑罰による抑止力が効かない人による連鎖の問題がある。若い人はよく知っていると思うが、“無敵の人”というものだ。昨年も、京王線の車内でジョーカーの格好をした人による事件が起きた。
 
 皆さんも感じていると思うが、残念ながらそうした人や、そうした人が起こす犯罪は増えていくのではないかと予測している。行政も助けてくれないし、20年くらい前であれば現実世界が辛い人が匿名でコミュニケーションを取ることができ、逃げ場にもなっていたインターネットも様変わりしてしまった。そうした余裕のなさから事件に走るタイプの人たちも出てきてしまうスパイラルの対応は非常に難しい」。

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 NPO法人「あなたのいばしょ」でオンライン相談を手掛ける大空幸星氏は「旧統一教会に対する批判的な報道に比べて、こうした問題に関する報道の熱量は圧倒的に少ない。もちろん、旧統一教会は批判されるべきだと思うが、それを最も喜ぶのは山上容疑者ではないか。その意味で、彼の目的は達成されてしまっている。

 また、政治家も含め、著名人にとって“親近感”は重要な要素で、社会もそれを評価している。逆に言えば、警備されていればいるほど“弱い人”と認識され、親近感が生まれにくくなってしまう。HIKAKINさんの件もそうだが、アメリカではイギリスの作家サルマン・ラシュディ氏が襲撃された。旧統一教会を批判しながらも、同時に著名人に対するあらゆる暴力を排除していく、という議論もなければならない」と指摘した。

■「私はベーシック・インカムしかないだろうと考えている」

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 閣僚を務めた経験もある経済学者の竹中平蔵氏は「私が公職にあった時はSPさんが付いてくれていたが、これは一種の抑止力でもあるし、その意味では罰則も重要だ。民主主義というのはまさに距離が重要なので、大統領候補は常にリスクを抱えながら政治活動を行う。ネットはものすごく煽るし、私も常に煽られているが、そうではない人も必ずいるというのもまたネットだ。シニカルな言い方をすると、私に対する批判が増えれば増えるほど、私の講演会を聴きにくる人は増える。そういう意味では、リスクを負って有名になる人はいるし、社会はそのための冗長性がなければならない。だからこそ、ある程度の罰則の強化も必要だと思う。

 しかしベースにあるのは、社会に不満を抱いている人がものすごく増えているという問題であって、これは解決していかなければならない。内閣府のアンケート調査を見ると、“あなたは心の豊かさと物の豊かさ、どちらを重視するか”という質問に対して、もちろん心の豊かさと応える人が多いわけだが、実はここ2年ぐらいで、物の豊かさという人が増えてきている。日本全体がんどん貧しくなっている。特に低所得層が被害を受けているわけだ。チャーチルが“成長は全ての矛盾を覆い隠す”という有名な言葉を残しているが、ネットも社会も民主主義も、矛盾がある、その部分だけを議論していても問題は解決しない。下部構造を豊かにする議論をしなければならない。

 例えば“小泉竹中時代に格差が拡大した”とよく言われるが、ジニ係数で測ると、その期間だけ格差は縮小している。これは経済財政白書にもOECDの報告書にも書いてあることだ。このことを私が200回も300回も説明しても、ネットでは同じことを言い続けていて、問題を解決するにはどうすればいいかということを誰も議論していない。日本もイギリスのように孤独担当大臣を置いたが、経済が悪ければ機能しない。私はベーシック・インカムしかないだろうと考えている。

 やり方は様々あるが、日本では部分的に始めればいいと思う。例えばマイナンバーカードに基づいて、生活に困っている人は申告してください、その日のうちに無条件で10万円を口座に振り込みます、ただし、必ず確定申告をしてください、その際に年収が一定以上になっていた場合は返してもらいますよ、政策の骨太方針に、マイナンバーカードは今年度中に全ての人に渡すという目標が掲げられている。こうしたベーシック・インカムのスタート部分は今すぐできる」。

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 これに大空氏は「“無敵の人”による無差別殺傷は、ある種の拡大自殺なわけだが、日本の場合、自殺している人はほとんどが正規雇用の男性だ。いわば安定的な経済基盤がある人が多く自殺しているということになる。つまり経済的な豊かさがあったとしても孤独を抱えているという可能性は十分にあるし、それは小泉政権時代以降に、自己責任という言葉が誤った捉え方をされ、悩みや孤独を外に出せないという社会になってしまったからではないか。ベーシック・インカムによって経済的な豊かさを保障していくと同時に、精神的な豊かさについても議論しなければならないと思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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