中国政府は先月、北京と台湾の台北を結ぶ道路網の整備計画を発表した。風が非常に強く、波も高い福建省の平潭島をまたぐ形で、高速鉄道や道路の建設を模索しているという。
【映像】2008年は2つだけ…激増した今の「中国高速鉄道」路線図(画像あり)※5:30ごろ〜
はたして2035年に北京から台湾まで高速鉄道で行けるようになるのだろうか。ANN・中国総局記者の李志善記者はこう話す。
「古くは40年代、中国全土の交通整備計画に盛り込まれてきたものです。そもそも現実味はありませんでしたが、国民党政権時代に台湾との関係好転で具体化しました。全長130キロ、総工費は5兆円から7兆円とも言われています。2035年完成とすると、もう工事が始まらないといけないタイミングです」(以下、李志善記者)
アメリカ下院のナンシー・ペロシ議長の台湾訪問以降、この計画が携帯電話の地図アプリに表示され、46分で北京から台北に行けると出ている。なぜ今になって高速鉄道や道路計画が大々的に発表されたのだろうか。
「簡単に言うと圧力強化です。インフラは国力の現れです。目に見えやすいし実感しやすいです。日本で言えば、貧富の格差を解消すると日本列島改造論で新幹線網が張り巡らされた。壮大な計画で国民を鼓舞し、インフラ整備で経済をけん引できる側面もあります」
新しい橋や道路ができることで、中国と台湾を往来しやすくなる。喜ばれると思いきや、李記者は「どちら側から見るかによって真逆になる。中国にとっては統一は悲願ですが、台湾の反対派から見れば安全保障の意味で悪夢との指摘もある」という。
「2020年、中国初の海を渡る新幹線と高速鉄道の橋が完成しました。これは、福州と平潭島をつなぐ橋です。つまり、中国政府の有言実行は目に見えていて、地元の人や観光客などは『統一は悲願だ』と話しています。中国にいる台湾のビジネスマンの人も『実現できるなら経済面から見て悪いことはない』と言っていました。その一方で、台湾の現政権やメディアは一笑している、今の状況で実現できるものではないことは確かです」
先月1日の香港返還25周年式典に、高速鉄道を使って香港入りした習近平主席。高速鉄道を使用することで、中国本土と香港の一体化をアピールする狙いもあったとみられている。今回、中国政府はどれくらい台湾を意識しているのだろうか。
「先週、22年ぶりに台湾白書を発表しました。平和統一や、一つの国家に異なる制度の存在を認める『一国二制度』の導入が基本方針で『武力行使の放棄は承諾しない』と明記されていました。香港返還25周年で一国二制度の優位性を強調しましたが、その香港に習主席は前回は飛行機だったのに、今回新幹線で入りました。繋がりについて意味づけをしているとも考えられます」
国際的にも注目を集めている高速鉄道計画。実は日本とも深いかかわりと李記者は話す。
「(映像を指して)これが台湾の新幹線です。日本から購入したものです。台湾の新幹線と中国の新幹線、両方に日本の技術が入っているんです。日本と密接な関わりがあると言えますし、台湾の新幹線は2035年前後に車両交換の時期を迎えるともいわれますが、金額面などを理由に日本側との交渉がうまくいっていません。その中で中国側の整備計画の幹部は『技術的に問題ない。日本の3分の1の価格でできる』と言っています」