韓国の尹錫悦大統領が17日、ソウルで初の公式記者会見を開いた。会見では「国民の応援も、厳しい叱責もあった」と最近の支持率低下などに言及した。
【映像】ファンクラブも人気に 白い衣装が似合う尹大統領の妻・金建希氏（画像あり）※7：00ごろ〜
“就任100日”で臨んだ今回の会見。国民は尹大統領のこれらの発言について、どのように受け止めているのだろうか。ANNソウル支局の河村聡記者は「“国民に近い大統領”を目指した100日だった」と見解を述べる。
「韓国人は“100日”の区切りを大事にします。今月17日がちょうど就任100日目でした。会場で配られた20ページほどの冊子のタイトルには『国民と共にした100日』と記載されていて、中をみると『国民に近づいた』『帝王的権力を手放した』などの10項目が挙げられていました。頻繁なマスコミ対応や、青瓦台の解放をアピールしているのでしょう」
就任“100日”を記念した会見を見た国民の反応はどのようなものだったのだろうか。
「残念ながら尹大統領は“片思い”で終わっています。支持率は極めて低く、下落が続き、今は20％台をさまよっています。30％を切ると『政権運営の赤信号』とされています。低支持率の原因として、まず言われているのは閣僚予定者の相次ぐスキャンダルです。『潔白さ』『腐敗撲滅』を武器に選挙を戦った尹大統領だけに国民の落胆は大きい。さらに与党内すらもまとめきれておらず、韓国は保守派3割・革新派3割・中道派4割と言われていますが、その3割も割ってしまっています」
さらに、SNSでは、尹大統領が議員に送ったメッセージが流出。「わが党もうまくやっていますね」「内部射撃なんかを繰り返していた党代表が交代してから変わりました」といったメッセージが、ネット上で拡散され、スキャンダルの渦中にいる党代表への「陰口」とみられる内容に落胆の声が集まっている。
「尹大統領の夫人である金建希氏もファッションなどが注目され、ファンクラブなども人気を集めていましたが、そもそもこれが『支持率』につながっていたかどうかは疑問です。むしろ、大統領室内で私的な写真撮影をするなど、いろいろと批判も多く、韓国メディアから『支持率低下を受け、活動を控えている』といった指摘もあります」
会見で「世界経済の不安定性が拡大する危機状況に体系的に対応する中、経済を回復させるため努力してきた」「経済の未来のため産業の高度化、未来戦略産業の育成にまい進してきた」と自己評価を述べた尹大統領。その一方で、自身の低支持率にも「応援も、厳しい叱責もあった。国民が心配しないよう、最善を尽くして国民の意を汲み取りたい」とコメントした。
日本については、政策協議団派遣や羽田金浦路線の再開、日米韓首脳会議を例に「歴代最悪の日本との関係も迅速に回復して発展させている」と述べ、先日15日光復節の演説では「力を合わせて共に歩むべき隣人だ」と、引き続き融和的なメッセージを送っている。
これらの対日発言に河村記者は「理想論が多く、具体性にかけるといった指摘も寄せられています」と話す。
「ただ、この支持率で安易に反日に走らず、特に『光復節』という反日感情が高まる日にも、一貫して融和的なメッセージを発信したことについては、専門家からも一定の評価がありました。一方で、尹大統領は北朝鮮について『（非核化の）確固たる意志を示せば、支援できる』として、光復節の日の演説では大規模食糧供給、インフラ支援、港湾と空港の現代化プロジェクト、農業技術支援、医療インフラの現代化支援、金融支援プログラムなどを“大胆な構想”を提案しました」
しかし、尹大統領の就任“100日”会見同日に、北朝鮮は巡行ミサイル2発を発射。これにはどのような意図があるのだろうか。
「北朝鮮の巡行ミサイルを『演説の返事だ』と解釈する見方もあります。15日、日本では終戦の日でしたが、光復節といって、韓国では日本から独立した日として祝日となっています。この日の演説で、尹大統領が北朝鮮に触れていましたし、就任“100日”会見同日のミサイル発射は、それに向けたメッセージにもみえます。また、来週韓国は米軍との共同軍事訓練も予定されていますので、その牽制の可能性もあるでしょう」
