「日本維新の会」初となる代表選が27日に行われる。結党10年目になる同党だが、なぜ今回が初めての代表選挙となるのだろうか。テレビ朝日政治部・野党担当の森本優記者はこう話す。
【映像】「身を切る改革」どうなる? 候補者3人の主張まとめ(画像あり)※2:54ごろ〜
「日本維新の会は、地域政党である『大阪維新の会』が国政進出のために立ち上げた党です。橋下徹代表、松井一郎代表と、カリスマ的存在が代表として率いてきましたが、松井代表が今回『大阪都構想』が否決された責任を取る形で辞任を表明したため、今回の代表選挙が行われることになりました。橋下代表から松井代表に変わるときは無投票でしたので、今回が初めての代表選になります」(以下、森本記者)
大阪府の吉村知事は日本維新の会の副代表でもある。吉村知事はなぜ、今回の代表選に出馬しなかったのだろうか。
「松井代表の辞任表明の直後、吉村知事は『知事の仕事に集中したい』と言って、出馬しませんでした。立候補者は、届け出順に足立康史衆議院議員、馬場伸幸衆議院議員、梅村みずほ参議院議員の3人になります。足立衆議院議員は当選4回で、経済産業省の官僚を20年にわたり務めました。現在、党の国会議員団の政調会長で政策通です。馬場衆議院議員は、足立議員と同じく当選4回の同期で、現在は共同代表を務めています。国会議員の前は大阪の堺市議会議員を19年間務めていました。維新の会結成当時からのメンバーであり、松井代表と吉村大阪府知事も支持を表明しています。3人目は、唯一の女性候補である梅村参議院議員です。梅村議員は2019年に初当選し、現在4年目です。フリーアナウンサーなどの経験があり、お子さんが2人いて、若い女性リーダー誕生を強く訴えています」
今回の代表選では、どのような投票方法で決まるのだろうか。
「今回の選挙の特徴は、投票するすべての人が平等、つまり同じ1票ということです。投票権は国会議員、地方議員などの『特別党員』およそ600人と、2年間党費を払っている『一般党員』であるおよそ2万人に与えられていて、議員も一般党員も票の重みに格差がありません。およそ2万人の一般党員の投票は郵送で行われていて、きょう(26日)必着のため、すでに、ほぼ投票が終わっています。あす(27日)、特別党員の投票と開票が臨時党大会で行われることになります」
現在の情勢としては、馬場議員が優勢との見方が強いという。
「推薦人の数は馬場議員が306人、足立議員が39人、梅村議員が30人です。維新関係者の中では馬場さんが優勢とみられていますね。一般党員になるには特別党員の紹介が必要で、候補者に党員名簿も配られない仕組みのため『各特別党員が持っている党員名簿にアクセスできる人数が多い方が有利だ』と話す関係者もいました」
松井代表や吉村知事も支持を表明している馬場議員。このまま勝ち抜けるのだろうか。
「関係者からもそういった意見が出ているのも事実です。今回の代表選では代表を決めるほかに党勢拡大、維新をアピールする場としても捉えられている部分があります。というのは、先ほど言った一般党員2万人の中の1万2000人は大阪なんですね。ですから、大阪でほとんど決まってしまうのが実情です。しかし、街頭演説は東京や神奈川、埼玉、名古屋、兵庫で行っています。足立議員は北海道で演説をしたり、梅村議員はオンラインを活用したりして選挙活動を行なっていました」
松井代表は「来年春に政界を完全に引退する」と発表している。日本維新の会は、大阪発の政党だったが、今後は変わっていくのだろうか。
「今まで大阪の行政の長が代表を務めていた日本維新の会ですので、変わってくると思います。今回立候補した3人とも大阪維新の会所属でもありますが、大阪維新の会はほとんどが県議や市議会議員です。大阪との距離についてどうなるのか、注目ポイントでもありますが、ある幹部は『やるしかない』と話していました。松井代表は来年の大阪市長の任期満了で政界を引退することを表明していて、政治とは一切距離を置くと話しています。松井代表は周辺に『一切やめる。世間がせまくなる』と話していて、どうなるかわかりませんが、引退した後は維新から離れ、橋下徹さんをロールモデルに、コメンテーターなど違った形で世間に出てくる可能性はあります。党員も辞めると言っていますが、大阪維新の会との関係は今後も注目が集まっています」
当初は、元大阪府議会議員の東徹参議院議員が出馬の意向を示していた。なぜ、出馬を断念したのだろうか。
「東参議院議員は、党内の亀裂を生まず融和を優先する方が維新のためになるということを理由に、出馬を断念しました。党幹部は『出たとしても馬場さんが勝つが、大阪側でしこりがのこる』話していましたので、東さんを推薦しようとしていた大阪府議会との分断を避けた形です」
橋下徹氏に続き、松井代表が政界引退となると、全国的知名度にも影響があるかもしれない。今後の課題について、森本記者は「野党第一党を目指すためには存在感を出すことだ」と話す。
「知名度に関しては、ある一般党員の方が『吉村知事も最初はそうだった。地位が人を作るので心配していない』と話していました。ただ、野党第一党を目指すためにはまだ課題もあります。立憲民主党の国対委員長が安住さんに変わり、今後野党第一党として存在感を発揮されてしまうと、維新はどのようにしていくのか。文通費改革のような“ヒット作”で注目を集められるかなど、課題が残ります。日本維新の会は、先月の参院選でも選挙区当選は大阪、兵庫、神奈川の3か所にとどまり、東京や京都などで議席を獲得できませんでした。比例で野党第一党になったとはいえ、選挙区で見ると、まだまだ課題が残る結果です。大阪以外の勢力を拡大できるか、新しい代表にとっては、来年春の統一地方選で議席を増やすことがまず目標になってきます」