杉野遥亮の2冊目となるPHOTOBOOK『8』(読み:はち、ワニブックス刊)が9月22日に発売される。北海道、沖縄、東京で撮影された同写真集。真っ白な雪景色や、真っ青な海と共に魅せるさまざまな表情。まるで、穏やかに旅をしているような感覚になる一冊だ。タイトルである『8』は、どこまでも広がっていく、無限大などの意味を持つ。読む人それぞれの感受性を大切にしたいという思いからこのタイトルに決めたという杉野。作品ごとに新たな魅力を発信し続け、無限の可能性を秘める彼そのものを指している言葉のようにも感じる。今大注目の俳優、杉野遥亮に写真集の撮影中の思い出、仕事、今考えることを聞いた。
正真正銘の自分でぶつかっていくことを意識
――本日はよろしくお願いいたします。東京、沖縄、北海道で撮影されていますが、3つの撮影地を選んだ理由、それぞれの場所でこだわったシチュエーションを教えてください。
最初は、北と南と真ん中、暑いところと寒いところ、陰と陽みたいな、イメージが異なる場所で撮影したらどうなるかな、という気持ちがありました。コンセプトもあったほうがいいかなと思いましたが、それを決めることで、自分で枠組みとか限界をつくってしまうような気がして辞めました。その場その場でいろんなことを感じているはずなので、最初の段階で、コンセプトにはこだわらないようにしました。
――枠にとらわれない、自然体の杉野さんの姿ということでしょうか。
前回『あくび』という写真集を出しましたが、そのときも自然体だったと思うんです。でも、今回はまた違う形の自然体。時間が経って、仕事への向き合い方も悩みも変化しているし、この写真集を撮影している間にも成長はあります。そこは面白いところだと思います。
――前回の写真集から4年が経っていますが、どんな変化がありましたか。
具体的にはわからないけれど、僕は、一つの作品を経るごとに成長したなって思えるようにとにかく一所懸命に作品と向き合っています。今回、写真集の沖縄と北海道での撮影の間にも撮影していた作品が一つありました。そこで戦ったり、向き合ったりした変化も、4年越しの変化や違いもあると思います。
――成長を感じるように意識して仕事をしているのでしょうか。
意識しているわけではなく、成長を感じるようになったという感覚に近いです。
――多くの人の課題だと思いますが、どうしたら成長を感じられるようになるのでしょうか。
自分の信念や軸を絶対にぶらさないことだと思っています。自分の気持ちに素直に向き合うとか、嘘をつかないとか、そうしていたら自然と成長している実感が持てるようになった気がします。自分に嘘をついてやりすごしていた時期もありましたが、そのときはあまり成長していませんでした。表面的な見せ方はうまくなったかもしれないけれど、本当の意味では成長できていない。ここ最近は、正真正銘の自分でぶつかっていくことを意識しています。
――いつごろから変化したんですか。
徐々にです。もともと嘘をつくことって一番よくないというのが根幹にあったんだと思います。噓をつくということを繰り返していると本来の自分から離れていってしまうと思います。嘘つく人とかごまかす人とは心を通わせ辛いです。
――素直になることによって成長を感じられるようになったんですね。
それに尽きます。その分、傷つくこともありますが、得るものは大きいです。
――今回、北海道や沖縄の自然に触れたと思いますが、プライベートも含めて行ってみたい場所はありますか。
宇宙に行きたい…。現実逃避をしたいという思いがあるのかもしれないです。バリ島の水上コテージに行って、のんびり過ごしたいです。国内なら長野とかがいいな。空気がキレイな印象がありますし、神社など静かな場所で癒されたいです。
――かなりお疲れのようですね。撮影中に癒される景色はありましたか。
ありました。北海道でコンセプト写真をとったとき、真っ白な景色だったことが印象に残っています。雪って音を吸収するらしくて、無音の空間が広がっていました。次元が変わったような感覚になりました。
――東京にいると音がない時間ってなかなかないですよね。
東京だと気づいたらスマホを触っているという時間が多いことに気が付きました。だからこそ、自然の中でただその場にいることを嬉しく思えました。
――デジタルネイティブだと思いますが、昔からそうですか。
子どものころから外で遊ぶのが好きでした。鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたり、新しい遊びを創作したりもしていました。
コロナ禍、一人の時間が増えたことでどうしたら元気に仕事ができるか明確になった
――お忙しい毎日だと思いますが、リフレッシュする時間はありますか。
一人のときです。あとは仕事から離れているとき。離れる時間は、仕事に集中するためにも大事な時間です。その時間で、悩みをリセットしたり、スッキリさせるようにしています。
――具体的にどんなことをしていますか。
最近、本格的にインテリアを揃えたくて選んだり買い始めたりしています。そうしていると、自分の心が落ち着いて、ホッとします。自分がワクワクするものや、心がときめくものを探したりすることで、元気になるしポジティブにもなれます。
――仲良くなったり、気が合うのはどんな人ですか。
癖が強い人だと思います。あとは、ピュアだったり素直だったりすること、なにげないことの感動を共感できることとかは大事です。心を打ち解けられる相手は、人生で数人いたらいいかなと思っています。コロナ禍で、自分を見つめる時間が増えました。どういうことをしたら健康でいられるのか、元気に仕事へ行くことができるのか、そういうことが明確になった気がします。
――杉野さんとお話していると、いろんなことをいっぱい考えているんだろうなという印象です。そんな杉野さんが俳優を目指した理由を聞いてみたいです。
小さいころから俳優になりたいって思っていました。なんとなく、魅力的に思っていました。でも何者でもない一人の少年が俳優を目指したいというのは恥ずかしい、現実的じゃないなというのもあったんです。ほかにも道を模索したこともありましたが、やっぱり俳優以外に見つかりませんでした。
――少年時代に思い描いていた未来を叶えられている感じでしょうか。
まだ過程なのでわからないけれど、自分がやりたいなって思うことや、いいなと思うことに忠実になれている気はします。具体的にどうなりたいとか思っていたわけではないですが、表に出る機会が増えて、戦うことも増えたし、だんだんと進化している実感はあります。
――ありがとうございます。最後に、『8』を購入するファンのみなさんにメッセージをお願いします。
表紙のところの『8』(通常版のみ加工あり)が、あれはなかなかいいです。ツルツルしていて触り心地が気持ちいいです。僕は、芸術ってぼんやり見ていてハッとしたり、感じるものだと思っているんです。今回の写真集でもそれを感じられると思います。とはいえ、僕の顔がバーンと写っているので、そこが気になっちゃうかもしれないです(笑)。景色もキレイだから、色んな楽しみ方をしてほしいです。
――ありがとうございます!今後も杉野さんのご活躍を楽しみにしています。
テキスト・取材:氏家裕子
撮影:You Ishii
ヘアメイク:KOTARO for SENSE OF HUMOUR
スタイリスト:TAKAFUMI KAWASAKI
書誌情報
杉野遥亮 『8』
撮影:今城純
ワニブックス刊
※通常版、豪華版 同時発売