15日、公明党は代表選を告示したが、他に候補者が立候補しなかったため、選挙戦にならずに8期目の「続投」が早々に決まった公明党・山口那津男代表。今年7月の参院選では、比例代表で「800万票・7議席」の獲得を掲げたが、結果は「618万票・6議席」という大惨敗に終わった。
【映像】「カラオケはうまい」「好きな食べ物は納豆」公明党・山口代表のプロフィール(画像あり)※1:45ごろ〜
長年、政治の現場を取材してきたアベマニュース政治担当の今野忍記者は、こう分析する。
「公明党はブラックボックスみたいな政党です。他の政党と違うのは、支持母体が創価学会という宗教団体であるということ。20年以上にわたって自民党と連立政権を組み、大臣も輩出している。宗教団体を支持母体にした政党がこれほど政権中枢まで深く入り込んだ例は日本の政治史において公明党以外はなく、その意味で日本の政治は公明党なしでは語れません。参院選惨敗の背景には、その創価学会の高齢化、新型コロナで彼らが得意とする小規模の集会や戸別訪問などを重ねて支持を広げていく“人海戦術”が取りづらかったことや、会員の高齢化などが挙げられています」(以下、今野忍記者)
2009年、民主党への政権交代によって自公両党が下野した第45回衆議院議員総選挙で、落選して代表を辞任した太田昭宏氏の後任として、公明党代表に就任した山口代表。就任当時は、緊急リリーフで、一時的な代表と見るむきもあった。それが、代表在任はすでに13年にわたり、山口氏自身も今年70歳を迎えた。
「実は今回、公明党の代表交代が“既定路線”と言われていました。実際に、山口代表自身が2020年に7選を決めたとき『次の世代に党運営の主体を移す移行期になる』と話していました。続投が決まった先日も、山口代表は7期目を振り返り『次の世代にバトンを渡せる体制をつくりたい思いでスタートした』と話しているぐらいです」
世代交代を見据えていた7期。選挙に負け、責任を取って代表をやめるケースはあるが、なぜ逆の“続投”なのか。
「それがまさに今回の話の肝です。7月の参院選に惨敗したことで、一気に風向きが変わってしまった。ネックになったのが、今後の政治スケジュールと自民党との関係です。本来、既定路線として後継だと思われていた石井啓一幹事長ですが、ぶっちゃけ期待したほど評価が得られなかったようです。永田町の話では、自民党・茂木敏充幹事長とソリが合わなかった。菅前総理と幹事長が二階俊博氏だった時代は自公の関係が良かったと言われています。幹事長同士は毎週一緒にご飯を食べていたぐらいですから。しかし、来年4月には統一地方選、さらに10増10減で自民党とは選挙区の取り合いというタフな調整が待っています。石井幹事長は、自民党との参院選の相互推薦の調整に苦戦し、22年度補正予算でもギクシャクしました」
山口代表続投という判断は、支持母体である創価学会の意向が強かったという。
「公明党の選挙実働部隊といわれている創価学会の女性部(婦人部)には、“なっちゃん”の愛称で親しまれ、圧倒的人気がいまでもあります」
世代交代の準備を進めてきたにもかかわらず、代表選も行われない公明党。なかなか人事刷新に踏み込めない印象があるが、今野記者は「立場が人を育てるという意味で、公明党は機会を失い続けている」と指摘する。
「山口代表は8期すべて代表選挙にならず、無投票で公明党の代表に決まっています。それに対して、日本維新の会はどうだったか?タレント出身で人気も知名度も抜群だった橋下徹氏が引退し、後継として大阪市長になったのが、いまは大阪府知事の吉村洋文氏です。市長になったばかりのころは何かと橋下徹氏と比べられましたが、コロナ対応などでマスコミ露出が増えたこともあり、いまでは“吉村グッズ”が売れるほど、地元で人気を集めています。山口代表自身も『後輩に道を譲った方がいいのではないかという声をいただいた』と認めつつも、『経験を後輩に伝えるのにもう少し時間が必要だ』と話しています。ただ、本人が後継に期待を寄せる石井幹事長もすでに64歳です。山口代表も石井幹事長もほぼ同年代みたいなもので、そこまで大きな年齢差はありません。衆院解散がなければ3年間は国政選挙が行われないなかでの山口代表続投ですから、今後はますます人事刷新が難しくなっていくと思います」
(ABEMA NEWS)