23日、西九州新幹線が開業し、日本一短い新幹線として話題を集めている。
約66km離れた長崎と武雄温泉間を最高時速260kmで走り、最短23分で結ぶ西九州新幹線。しかし、ネットでは「あんな田舎で誰が乗るのか」「これ必要?」といった批判的な声も寄せられている。
【映像】大阪→東京が約60分に! 「リニア新幹線」のルート図(画像あり)
物議を醸しているのは、西九州新幹線だけではない。当初2027年に開業予定だった東京と大阪を約1時間で結ぶリニア中央新幹線も「本当に必要?」といった指摘が寄せられている。また、東京・名古屋間の開業が工事遅れで困難になり、その責任を巡ってJR東海・静岡県・神奈川県の3者で、責任のなすりつけ合いのような状態だ。
人口が減少し、経済も落ち込む日本で、本当に新しい新幹線は必要なのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、専門家を招き、議論を行った。
「鉄道はオワコンじゃない」と話すのは、JR東日本に17年間勤務し、現在は交通計画のコンサルティングを行う「ライトレール」社長の阿部等氏だ。阿部氏はリニア中央新幹線について、どのようにみているのか。
「多少、用地買収が遅れても、2027年の開業には間に合うはずだ。本当に用地買収ができなかったら話は別だが。長大トンネルの工事は遅れるが、車両基地工事はそれほど長期ではない。用地買収がどういう状況なのか私は知らないが、車両基地が完成しなくても、夜間はホーム上に停めておけばいい。いろいろ方策があるから、開業が遅れる大きな要因にはならない」
リニア中央新幹線のホームページには、品川・名古屋間は2027年の開業を目指していると書いてある(※9月23日現在)。しかし、静岡県・大井川流域の市長などから、水資源の影響について理解が得られず、実質的に工事が進んでいない。阿部氏は「とにかく長大トンネルは物理的に工事の期間が必要だ」として「最終的にどう判断されるか、私は何とも言えない」とコメント。
「静岡にいく大井川の水が少なくならないように、いろいろな話が出ているようだが、それを最終的にどう判断されるか、私は何とも言えない。直接人命が失われたり、大事故が起きたりという話ではなく、水利権の問題だ。県民の皆さんと知事次第だ」
実際、新幹線における東京・大阪間の移動は2時間22分かかっている。これがリニアになると、約半分の1時間7分になる。リニアは本当に必要なのだろうか。阿部氏は「昭和30年代前半にまったく同じ議論があった」と話す。
「必要ないという声があちこちで出ているが、昭和30年代前半、東海道新幹線を作ろうとしたときに、まったく同じ議論があった。当時、多数決をとったら『いらない』が多かった。『戦艦大和に次ぐ無駄な税金の使い方だ』といった議論があったが、当時の国鉄の十河総裁・島技師長のコンビがとにかくやってのけた。結果として、圧倒的に評価されている。リニアも同様だと思う」
ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「乗客のお金で維持できるなら、リニアでも新幹線でも好きにやればいい。乗客が少なくて税金を払わないと立ち行かない新幹線はいらないと思う」とコメント。
また、阿部氏の説明に、ひろゆき氏は「『ひかり』や『こだま』『のぞみ』といった新幹線の中でも遅い・速いがある。『30分待てる』なら、みんな『ひかり』に乗るはずなのに、乗らない。結局、一番早い『のぞみ』に乗る。『30分でも短縮できるなら高い金を払って乗る』という人は、大勢いる。これは、証明されている。できたらできたで、みんなリニアに乗ると思う」と意見を述べた。
鬼越トマホークの金ちゃんは、「吉本(興業)って関西、大阪にも劇場があるんで、1日で関西に行って戻ってくることがあるんですけど、リニアができちゃうと1日3往復とかやる可能性があるので、吉本的にはよくない」と、移動が増えることを懸念、坂井良多は「大阪のおもしろい芸人が1時間で来られちゃうとなると、東京芸人の仕事がまたどんどん減るんじゃないか」と笑わせた。
23日に開業した西九州新幹線では、30分ほどしか短縮されず、しかも乗り換えが必要となる。これをどのように考えるか。
ひろゆき氏は「もともと需要がある路線なら分かる。東京・大阪は、飛行機も新幹線もバンバン使われる。だから、リニアが作られても乗る。でも、博多・長崎間は、そもそもそんなに人が行っていない。そこまで高い金を払って、新幹線で速くいきたいか。乗客の需要がないと思う」と指摘。
阿部氏は「絶対数で比較すれば、当然、東京大阪間と比べて、福岡長崎間は圧倒的に少ない。でも、全国ベースで考えると、福岡は九州一の都市で、九州の人に移動ニーズがないというのは失礼な話だ」と発言。その上で「ただ、運行の仕方として、もっとうまいコストの使い方があるのではないかと思う。開業式の動画を見て思ったが、今回の新幹線の車両は乗車時間が15〜20分で、せいぜい30分かからない。そのために接客サービス向上といって、わざわざ4列席にした。イコール1座席当たりのコストが高くなっている。そんなことをしないで、編成を短くして、席も『5列席でいいだろう』とやれば、もっとコストが下げられた。そういうことをやらないのがもったいない」と指摘した。
「鉄道を新規に作ることは、ものすごいコストがかかる」と強調する阿部氏。続けて「用地買収してトンネルを掘って橋をかけて線路引いて架線をはる。1キロ100億円オーダーぐらいかかる。100キロ作ると1兆円、500キロ作ると5兆円だ。せっかく明治、大正の先人たちが用地を確保して、在来の鉄道を作ってくれたのだから、そのテコ入れにコストを投じるのが得策だ。東京・大阪といった都市には新規で作る価値はある。ただ、宮崎・鹿児島まで1キロ100億円、100キロで1兆円かけるのは、費用対効果的にどうなのか」と訴えた。
元経済産業省の官僚で制度アナリストの宇佐美典也氏が「阿部さんにズバリと聞きたい。移動には車・鉄道・飛行機がある。鉄道の強みは何か?」と質問すると、阿部氏は「交通システムとしての鉄道は、車と比べて速度、輸送力、安全性、エネルギー消費の少なさ、環境負荷の少なさ、雪に対する強さ、全て上回っている。にも関わらず、自動車が主体になっているのは、鉄道が本来の能力を社会で発揮できていないからだ」と回答。「客が『乗りたい』と思うサービスを鉄道事業者が実現しているか。利用者が乗る・乗らないの気持ちの問題ではなく、生産する側が消費する価値のあるサービスを提供できるかどうかだ」と述べた。(「ABEMA Prime」より)
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