10日、ウクライナ全土に大規模なミサイル攻撃が行われた。ロシア側はクリミア大橋を破壊した報復攻撃だとする一方、各国からはプーチン政権に対して批判が相次いだ。
そんな中、今後のウクライナ情勢を左右するかもしれないのが、ベラルーシの動き。ルカシェンコ大統領がロシアとの合同部隊を配備することに合意したと明かした。ベラルーシはこれまで、ロシアと合同で軍事演習を実施したり、攻撃拠点を提供したりしてきたが、戦闘に参加することはなかった。
戦況は今後どう変化するのか。11日の『ABEMA Prime』は専門家に話を聞いた。
■「“一線を越えたくない”というルカシェンコ大統領の強い想い」
在ベラルーシ日本大使館に勤務した経験もある北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの服部倫卓教授は、実際に参戦する可能性は「現時点では低い」との見解を示す。
「ロシアとベラルーシは似たような民族だと思われがちだが、戦争への意識は全く違う。ウクライナとの戦争に巻き込まれたくないというのは、独裁者・ルカシェンコと国民との唯一と言っていいくらいの共通項だ。それを踏みにじって参戦するようなことがあれば、いくら強権的な独裁者といえども立場が持たないだろう。実は2国間では国家統合に関する条約が結ばれていて、“情勢が緊迫した時に合同軍を編成する”という規定がある。ベラルーシ軍がウクライナに行って戦うというよりは、ベラルーシにロシア兵を置くための1つの手立てではないかとみている」
ロシアとしてはベラルーシを引っ張り出したいのか。
「戦争が始まってからずっと要請していると思う。9月と10月の話し合いで、ルカシェンコはプーチンにかなり詰められたようだが、やはり最後の一線、“これは越えたくない”という思いが相当強い。プーチンとしても、ベラルーシは残された希少な同盟国で、ルカシェンコという独裁者がいるからこそついてきてくれる面がある。この戦争に参加することによって、国内の支持基盤を失い倒れてしまうようなことがあれば一大事なので、無理強いもできない」
一方で、懸念もあるという。
「先ほど申し上げたような両国共同の軍事ドクトリンによって、脅威が迫った有事の時には合同作戦本部のようなものが設置されて、ロシアの傘下に置かれるということが書いてある。それが適用されて、ルカシェンコのあずかり知らないところでベラルーシが合同軍に入って動かされてしまうのではないかという指摘もあり、今のところは何とも言えない」
■「ベラルーシが自国を出て攻めていくとは限らない」
ベラルーシが加わった場合、戦況はどう動くのか。防衛研究所主任研究官の山添博史氏は次のように推測する。
「ベラルーシはロシアと何度も合同軍事演習をやっているので、横に並んでやれるぐらいの練度があるとすれば、やはりウクライナも戦力として考えなければならないと思う。一方、ベラルーシは攻め込まれているわけではないので、参戦することにメリットを感じるかどうか。むしろ、ウクライナやリトアニア、ラトビアがベラルーシを攻めてくるということで『自国を守ることはロシアを守ること』と言ってる。その理屈の上での強化と編成なので、自国を出て攻めていくとは限らない」
プーチン大統領は「領土が脅かされることがあれば、国民を守るためあらゆる手段を駆使する。これはハッタリではない」と、核兵器使用を示唆している。
「これは言う時と言わない時がある。今回のクリミア大橋のように『テロリストの攻撃があったので報復する』という時には示唆していない。一方、領土が侵される時には『あらゆる手段を使う』と匂わせるようにしている。最後の手段として持っているということはかなり前に言っていて、“これで引き下がってほしい”という願望がある。我々が恐れすぎるとその願望に乗ることになるので、認めるべきではないが、本当に使うしか方法がなければ可能性は出てくるだろう。ウクライナが押していく展開はまだ続くと思うが、場合によってはプーチン大統領の判断がまずいものになる可能性はある」
(『ABEMA Prime』より)
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