歴史的な物価高の影響によって、アメリカで貧困層が増加している。約1割の家庭が経済的理由で食糧不足を経験するなど、貧困世帯が増え続けており、来月8日に迫る中間選挙にも何らかの影響が出るとみられている。
【映像】トランプ氏、脅迫ツイートか 共和党トップに「死の願望を持っている」（投稿画像あり）
現地を取材中のANN・ワシントン支局の小島佑樹記者は「中間選挙の最大の争点は経済だ」と話す。
「アメリカの国民は日々の生活すらままならない状況です。私が利用しているスーパーでも12個入り1パックの生卵が4ドル69セントで、円安の影響もありますが、円に換算すると680円ほど。日本の感覚でいうと高級品のような扱いです」（以下、小島記者）
貧困世帯の増加を受け、アメリカではフードバンク利用者が急増しているという。
「主催によると、新型コロナの感染拡大前、月に3000人ほどだったフードバンク利用者が、現在は多いときで6000人ほどと、倍になっていました。中には小さな子どもを連れている女性もいて、話を聞くと『物価高が1年に渡って長く続いたから、フードバンクに頼らざる得なくなってしまった』と言っていました。きょう、あすの食べるものすら困っている人も多く、バイデン政権に経済支援を求める声も多く寄せられています。タクシーのドライバーも『生活費に困っているから歯医者に通えない』と話していました。共通しているのは、一切贅沢をしていないのに、なぜこんなに生活が苦しいんだ、ということ。そういった不満が国民に渦巻いています」
一方で、コロナ禍から回復し、恩恵を受けている国民も少なくない。
「今のアメリカ経済を評価するのは、とても難しい問題です。コロナ禍から回復して、雇用環境が良くなり、賃金が上がった人もいます。バイデン政権も雇用の増加や賃金の上昇を受け、好景気をアピールしていますが、反して多くの有権者は、経済改善を実感できていない状況です。経済格差は大きく広がっています」
国民の不満が募る中、来月の中間選挙で苦戦を見込まれているバイデン政権。勝機はあるのだろうか。
「バイデン政権は経済だけを争点にすると苦しい戦いになります。ただ、民主党は世論調査で経済に次いで有権者が重視している『人工妊娠中絶』に着目し、戦略を立てています。野党共和党が強い州では中絶を禁止する動きがある中、対する民主党は中絶権を守る動きを取ることで、女性支持者や若者や無党派層の拡大を狙っています。ただ、バイデン大統領が9月28日に行われた飢餓の撲滅キャンペーンで、追悼まで行っているのに、すでに亡くなった議員の名前を呼んだこともあり、来月80歳を迎えるバイデン大統領に民主党内部からも健康を不安視する声があがっています」
対抗馬となるトランプ前大統領（共和党）の動きはどうなっているのか。
「トランプ前大統領は、共和党首脳部との確執が目立ち始めています。共和党上院トップのマコネル氏について、『彼（マコネル氏）は死の願望を持っている』と脅迫とも受け取れる内容をSNSに投稿し、波紋を呼んでいます。共和党幹部のベテラン議員でもあるマコネル氏は、トランプ前大統領の主張に対し、全て肯定的ではなく、共和党内部でまとまりが見られない状況です」
バイデン政権には経済不満や健康不安説、共和党も野党一枚岩ではない状況と、どちらも決め手に欠ける状況のアメリカ情勢。特に上院選挙では両者接戦とみられ、長年アメリカの選挙を分析している専門家も「勝敗予測が難しい」と話しているという。
「中間選挙まで残り約1カ月ですが、勝敗のカギを握る7つの激戦州内も揺れ動いている状況で、いずれにしても僅差になるでしょう。勝機もさることながら中間選挙目前にアメリカ国内の分断は深まる一方です」
