イギリスのトラス首相が20日、辞任すると表明した。政権発足からわずか1か月で支持率7%の記録的低さになったトラス政権。
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支持率低迷の理由について、ANN・ロンドン支局の佐藤裕樹記者はこう語る。
「イギリスでも7%の支持率は極めて珍しい数字です。11年前からオンラインの世論調査を行っている会社のデータでは、1ケタ台の支持率を出したのは76代首相のメイ政権末期、EU離脱を巡る動きがあったときぐらいです」(以下、佐藤記者)
なぜ、わずか1か月の短い期間で、支持率がここまで低下したのか。
「大きな要因は、大規模な減税政策に失敗したことです。トラス首相は過去50年で最大規模の減税政策を訴えていましたが、財源への不安から、結果として国債が売却され、株価の大幅な値下げ、対ドルで37年ぶりのポンド安を記録するなど、市場が大混乱に陥りました。しかしトラス首相は、この責任を当時、政策を主導していたクワーテング財務相に押し付けた上で更迭しました」
更迭を行ったトラス首相の行為には、与野党からも反発の声があがっていた。
「トラス首相の打ち出した政策が、結果として失敗の責任を財務相1人に押し付けたことに対し、与党内からも反発が起こっていました。19日にはブレイバーマン内相が機密文書を個人のメールアドレスで送ったとして、責任を取って辞任しました。辞任時に公表した文書の中では『失敗したら辞めないといけない。私のように』とも取れる内容があり、トラス首相に対して批判の声もつづられていました」
佐藤記者によると、ジョンソン政権でも最後は、保守党支持率が23%と低迷していたという。
「最新の世論調査では野党第一党の労働党が51%の支持を得ています。トラス首相の支持率が低いだけでなく、元々保守党の支持率が低いのも、支持率低迷の要因の1つです」
政権発足からわずかひと月半、トラス首相は辞任の意向を表明し、イギリスの憲政史上最短の首相となる。
「トラス首相が柱とした政策もなくなり、メディアでは『トラス首相はいつまで走り続けるのか』といった報道も流れていました。保守党でも1年間は不信任決議ができない決まりがありましたが、議席を増やすために『規則を変えてでもトラス首相を辞めさせよう』という議論がすでに始まっていました」