刑法の性犯罪規定の見直しに向けて、法務省の審議会が24日に提示した試案。その骨子の1つが、性交同意年齢の引き上げだ。
現在、同意の有無にかかわらず13歳未満に対する性行為は違法で、明治時代に制定されてから変更されていない。一方、自治体が制定している淫行条例では、わいせつ行為の禁止対象は18歳未満で、その整合性が問われてきた。
今回の試案は性交同意年齢を13歳から16歳に引き上げようというもの。ただし、13歳以上16歳未満に関して法律が適用されるのは、相手が被害者より5歳以上年上の場合のみ。これは同年代同士の自由な交際や性交を制限しないための措置だ。
性被害の抑制に対しどれだけ有効なのか、問題はないのか。26日の『ABEMA Prime』は議員と専門家を交え議論した。
■ryuchell「年齢を引き上げて済むような、マルかバツかの問題ではない」
参院の法務委員会で、性交同意年齢について議論を重ねてきた日本維新の会・梅村みずほ議員は「まだ試案の段階なので、幅広い意見を聞いていきたい」とした上で、「国会では必ず性教育とセットにして、『義務教育で社会に出るまでに性に対する正しい知識をつけてほしい』と言っている。中学校3年生までが義務教育ということ、諸外国の平均等も見ると、法律として16歳は妥当ではないかと考えている」と説明。
NPO法人「ぱっぷす」理事長の金尻カズナ氏は「本来は18歳であるべきだと思うが、法律を作るには国民の一致が必要なので、16歳はやむを得ないと思う。ただ、5歳差の要件は到底受けられない。相談では同級生同士の性暴力被害があるものの、なかなか立証が困難で、淫行条例のようなかたちになってしまう。こぼれ落ちてしまう被害が発生するので、16歳に統一していただきたい」と訴える。
タレントのryuchellは「年齢や性の話は、自分の経験や周りの人を軸に考えてしまう。地元の沖縄は、性行為も結婚もみんなすごく早い。だからこそ被害も多いが、よりよい恋愛をしていくために糧にする人たちもいる。5歳差とか、16歳に引き上げたと極端に決めようとしているが、マルかバツかの問題ではなくて、個々のコミュニケーションだ。その基盤となる性教育だったり、性交渉の前にどうコミュニケーションしていくかということをしっかり子どもたちに伝えないといけない。それから制度も変えていくというのであれば理解できる」と自身の考えを述べる。
実業家のハヤカワ五味氏はryuchellに賛同するかたちで、「産婦人科の現場の声を聞くと、『性交渉がなくても結婚したら妊娠するものだと思っていた』という夫婦が相談に来たり、1カ月で1回しか性交渉を持ってない中で『妊娠しない』と相談に来たり、成人であっても性の知識が足りていない。そもそも“はどめ規定”によって学校で性交を説明できない中で、『性交同意年齢を16歳に』と言っても何だ?という話になる。本来、性交で同意が必要なことはもっと前から伝えていくべきであって、年齢引き上げと併せてこのタイミングで変わってほしい」とした。
■性交の同意・不同意「行き着く先は書面だ」
さらに今回、新たに検討されたのが「グルーミング罪」の新設だ。グルーミング罪とは16歳未満に対し、わいせつ目的で騙したり誘惑したり、お金を提供するなどして面会を要求するもので、違反した場合は拘禁刑または罰金刑が科せられる。
一方で、冤罪の可能性を懸念する声もある。梅村議員は「グルーミング罪がいつの段階で成立するのかが大きなポイントだと思う。例えば、単にお菓子をあげただけで罪が成立するわけではないので、わいせつな行為等が確認された段階でこの罪が成立する、振り返った時に伏線だったということが立証されるかどうか。(判断の)幅がどれくらいあるのかはこれからの議論になるが、グルーミングという言葉が生まれて日が浅いにもかかわらず盛り込んだのは、踏み込んだなと。一方、コミュニケーションの一環としてやっていたことが罪になってしまうパターンなど、リスクについても声がこれから聞こえてくると思う」と説明する。
また、大人同士を含めて、性行為を「拒絶困難」な状態にした場合、処罰可能な範囲が今までより広がることも視野に盛り込まれている。しかし、その判断が裁判官によって大きく変わり得ること、「拒絶困難との認識がなかった」という主張を誘引しかねないなどの懸念がある。
同意の線引きについて梅村議員は「行きつく先は書面だ。寝室に紙を置いておくという社会を望むのか、というところも議論の中に入ってくる。国会でこの問題を取り上げてきた身として、やはり体・心・人生が守られることが大変重要だという意識はあるが、不同意性交等罪については消極的なのが本音のところ。相手の心を読もうとして、一生懸命自分の気持ちを伝えようとするのが人のコミュニケーションで、それが紙になってしまった時に、“人間とはいったい何なんだろう?”というところにつながってしまうと思う」と懸念を示す。
金尻氏は「性交は基本的に契約書で縛ってはいけないものだと思う。たとえ契約で縛ったとしても、その日になってしたくなければ“ノー”だ。ごく当たり前のことだと私は思うが、そういったかたちの法律になってほしいと心から願っている」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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