中国・広東省で最大級の航空ショー「国際航空宇宙博覧会」が開催された。軍事展示会としての意味合いも強く、最新のステルス戦闘機の編隊飛行が披露されたほか、新たな兵器なども公開され、注目が集まっている。
実際に航空ショーを見ていたANN・中国総局の北里純一記者は「中国の自信を感じた」と語る。
「通常2年に一度開催される航空ショーですが、2020年の回がコロナで延期になった影響で、今年は異例の2年連続開催となりました。軍事以外にも宇宙ステーションや、民間向けの航空機の展示などがあり、厳しい感染対策にも関わらず会場は多くの人で賑わっていました。対外的なアピールとともに、国内に対して中国の軍事面での成果を誇示して体制への求心力を強めたい狙いもあるようです」(以下、北里記者)
中でも注目度が高かったのは最新のステルス戦闘機「殲20」だという。
「これまでの展示飛行で『殲20』は性能が問われる激しい動きを見せず、エンジン性能に課題があるのではといった指摘がでていました。しかし、今回の展示飛行では、急旋回や急上昇などの繰り返し披露し観客を沸かせ、機体の性能に対する自信を感じました。さらに、今回初めて観客の目の前に機体を停め、整備の様子などを公開した点も注目されています」
ショーでは、用途に合わせて多種多様なモデルが開発される無人兵器もお披露目された。
「初公開された攻撃・偵察ドローン『翼竜3』にも国内外のメディアが注目しました。従来モデルの『翼竜2』に比べ、飛行時間が2倍の40時間に伸び、搭載できる武装も2トンになったそうです。このほか多数のドローンが展示されていたことに加え、地上で使う無人の戦闘車両や4本脚の犬型兵器なども展示してありました。中国は『知能化戦争』という概念のもとで、人工知能をいかに活用できるかが今後の戦争の主導権を左右すると認識しています。無人兵器のラインナップが急速に充実しているというのもこの大方針に沿ったものとみられます。産官学が連携してこの分野でアメリカを追いつき、追い越すことによって、すでに到来しつつある「知能化戦争」時代の主導権を握りたい狙いもうかがえます」
今年2月から始まったロシアとウクライナの戦いでもドローンが大きな脅威であることが改めて認識された。北里記者によると、中国では「ドローンに対抗するための兵器が作られている」という。
「今回は国有企業が開発したドローンを無力化する兵器が初公開されました。この企業が展示していた4つの車両は、相手のドローンとの距離に応じミサイルや機関銃、さらにはレーザーや網を使ってドローンを無力化するといいます。また、中国の兵器は比較的安価とされ、ドローンに限らず軍で使用している装備を輸出用に改修して積極的に海外への販売を進めています。経済力や外交的にアメリカなどから兵器を買えない発展途上国などを中心に調達先として販路を拡大しています。例えば、アメリカからの支援としてウクライナ軍に供与され注目された『ハイマース』という高機動ロケット砲システムがありますが、今回の会場にはこの“中国版”ともいわれる『SR5』が展示されていました。不謹慎な言い方かもしれませんが、中国メディアはこの装備について中国から輸出される兵器のなかでも『人気商品の一つ』だと紹介しています。また、チベット自治区など酸素の薄い高地や重い戦車が走行できない地域に配備されている『15式軽戦車』という最新の戦車がありますが、これを必要に応じて無人兵器としても運用できるように改修した輸出モデルも展示されていました」
一方で、国際的に懸念されているのが中国による台湾侵攻だ。今回の航空ショーは、台湾に向けた“抑止力”なのだろうか。
「これまでもこの航空ショーで展示された新兵器が、前後して台湾周辺での活動が確認されるということがありました。去年の展示ではレーダーや通信の無力化に特化した電子戦機『殲16D』が初公開され、その後台湾周辺での活動が確認されていますし、今年8月のペロシ下院議長の台湾訪問を受けて中国軍が実施した大規模訓練に使用された新型の給油機は今年の展示に登場しました。このように、台湾を巡る軍事作戦で使用される装備が年々充実していく様をこの航空ショーを通じて見せつけることは、台湾側にとって圧力になることは間違いありません。3期目続投を決めた習主席(総書記)は『一流の軍隊を早期に作りあげること』そして『戦って必ず勝てる組織を作る』とという目標を改めて強調していますので、今後も急ピッチで軍事力が強化されることは間違いありません」