アメリカのバイデン大統領が就任2年を迎え任期の折り返しに入ったが、現在政権は3つの問題を抱えているという。ANNワシントン支局 梶川幸司支局長はこう語る。
「1つ目のハードルは今年になって浮上した機密文書問題です。バイデン大統領はオバマ政権の副大統領を8年間務めていましたが、当時の機密文書が個人事務所や自宅の部屋、ガレージの中から相次いで発見されたのです。詳細は明らかにされていませんが、CNNはウクライナやイラン、イギリスに関する情報機関の説明資料が含まれていると伝えています。機密文書が発見されたのが中間選挙の6日前だったことから、野党・共和党は政権サイドが選挙への影響を懸念して意図的に隠していたのではと批判を強めています」(以下、梶川記者)
次のハードルは議会運営だ。
「今月初めの下院の議長を決める選挙は揉めに揉め、投票は15回にも及びました。初回の投票で議長が決まらなかったのは実に100年ぶり、10回を超える投票は164年ぶりです。こうなったのは下院共和党の“保守強硬派”の20人ほどの議員が執行部に『造反』したためです。
たった20人の造反議員がなぜ議会を振り回せるかというと、中間選挙の結果、共和党は多数を占めたものの民主党との差は10議席しかない。可決には(原則として)過半数の218が必要なので、5人以上造反が出ると、党の執行部は手も足も出なくなる。執行部は、議長を決めるために、造反議員の言い分を「丸呑み」しました。“保守強硬派”の存在感は増すばかりです。
今後も上院は与党・民主党が多数、下院では共和党が多数という『ねじれ議会』が続きます。それぞれが妥協・調整をしながら超党派で政策を進める必要があります。しかし、バイデン政権の政策に真っ向から反対の“保守強硬派”が様々な抵抗を見せることになれば、例えば(債務上限問題で)夏頃には軍隊などを除く連邦政府の機関が停止する事態さえ懸念されています」
3つ目はトランプ氏を含む共和党の動きと大統領選の行方であり、こちらも目が離せなくなっている。
「トランプ氏は2024年の大統領選に向けて誰よりも早いスタートを切ります。1月28日にサウスカロライナ州で選挙キャンペーンを始めると発表したのです。8772万人のフォロワーを持つツイッターは、イーロン・マスク氏がCEOになった後、トランプ氏の凍結を解除したことから、注目が集まるタイミングで投稿を再開するのではないかと言われています。ただ、去年11月に大統領選の出馬を表明して以来、この2カ月はトランプ氏はやることなすこと空回りしていて、かつての支援者や有力なスポンサーも次々と離れています」
トランプ氏はどのような状況にあるのか。
「ポイントは3つあります。まず、中間選挙不振の戦犯にされていること、議会襲撃事件や機密文書持ち出しで司法省の捜査が進んでいること、そして新たなライバルの登場です」
共和党におけるトランプ氏のライバルと目されるフロリダ州のデサンティス知事。どのような人物なのか。
「デサンティス知事は1月18日に『フロリダ州では永久にコロナ対策をしない』『ワクチンやマスクの義務化をしない』と表明し、日本でもニュースとして取り上げられました。過激な言動や政策、高学歴などから『ミニ・トランプ』『賢いトランプ』とも言われ、年齢も44歳と若く、共和党支持層からの支持が一気に高まっていて、それは世論調査の結果にもあらわれています。
トランプ氏はデサンティス知事を強く意識しています。来週末から、実際の選挙キャンぺーンを始めるのも、機先を制してライバルを封じ込めたい狙いがあります。一方、バイデン陣営としては『デサンティス氏との戦いとなったら自分たちは厳しいのではないか。選挙を争うならトランプ氏の方がよい』と感じているのではないでしょうか」
最後に、バイデン大統領の直近の動きを聞いた。
「当初は2月7日の一般教書演説の前に、再選に向けて出馬表明をするとみられていましたが、機密文書の問題を受け2月7日の後になると見られています。バイデン大統領は本当に大統領選に出馬するのか、その正式表明はいつになるのか。今年のアメリカ政治の最大の焦点になりそうです」
バイデン大統領80歳、トランプ氏76歳、デサンティス氏44歳、2023年の政権と2024年の大統領選に注目が集まる。