自分の対局よりも、愛弟子の結果が気になるのが師匠というものだろう。8組の師弟により“最強の師弟”を決める超早指し戦「ABEMA師弟トーナメント2022」の予選Aリーグ1回戦・第1試合、チーム鈴木とチーム畠山の対戦が11月26日に放送された。この第3局で、スコア0-2と追い詰められた中、チーム鈴木の梶浦宏孝七段(27)は第1局で敗れていた畠山鎮八段(53)と激闘。なんとか勝利を収めると、控室で見ていた師匠・鈴木大介八段(48)が大きく安堵のため息。持っていた扇子でバタバタさせ、さらには腕組みまでしてみせた。
前年優勝のチーム畠山と、準優勝のチーム鈴木。フルセットの大熱戦は、最終局で梶浦七段が畠山八段に大逆転負けを喫するという、苦い思い出が残っていた。今年はいきなり初戦でぶつかり、鈴木・梶浦師弟はリベンジをテーマに掲げていたが、第1局では手痛い黒星。さらに第2局でも鈴木九段が斎藤慎太郎八段(29)に敗れ、早くも崖っぷちに立たされていた。
後がない状況で第3局に出場した梶浦七段だったが、第1局と同じく後手番の畠山八段が一手損角換わりを選ぶと、梶浦七段は右玉にして金銀4枚を使って、がっちりと囲った。この超早指し戦では穴熊などなかなか王手がかからない堅い囲いが有効と言われており、梶浦七段もまずは自玉の耐久力を高めてからの戦いを選択した。すると序盤は梶浦七段がやや作戦勝ちとなりペースを掴むことに成功。見ていた鈴木九段も「いいね。これは4五を突いて勝ちじゃないの」と余裕のコメントもあった。
ところが中盤に入ったところで畠山八段が粘りを発揮すると、形勢は混沌としたまま終盤に突入。少し前まで微笑んでいた鈴木九段も「えー、ちょっと怖いね…」と冷や汗をかき始めた。壮絶な叩き合いになったが「最後は負けかなと思った」という梶浦七段がわずかに残して辛勝。「勝因はたまたま拾ったような感じです」と疲労感たっぷりに振り返った。すると師匠も、ハラハラ感からどっと疲れが出たのか、控室で扇子を激しくバタバタ。さらにカド番のまま次局、自分に出番が回ってきたことへのプレッシャーからか、太い腕をしっかりと前に組んでうなっていた。
◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)