名門高校・秀知院学園を舞台に、生徒会メンバーの恋模様をコミカルに描いた「かぐや様は告らせたい」（以下、かぐや様）。生徒会長の白銀御行と副会長・四宮かぐやのこじれた恋愛関係や、会計・石上優と会計監査の伊井野ミコの反発から始まる仲の進展、１人我が道を行く書記の藤原千花（ふじわら ちか）のエキセントリックな言動が人気のラブコメ作品だ。
この記事では、そんな「かぐや様」のアニメ版メインキャストのうち、かぐや役の古賀葵（こが あおい）、藤原役の小原好美（こはら このみ）、ミコ役の富田美憂（とみた みゆ）を直撃。TVアニメ第３期「かぐや様は告らせたい-ウルトラロマンティック-」（以下、「ウルトラロマンティック」）に続く最新作「かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-」（以下、「ファーストキッス」）の特別上映に際し、シリーズを長く続けてきたことで演技はどう変化したかについて伺った。
――「ファーストキッス」には、かぐやの一面である「かぐやちゃん」や「氷かぐや」が出てくるため、演じている古賀さんは特に大変だったと思いますが、かぐやの演技にバリエーションを付ける上での苦労話などはありますか？
古賀：そうですね、「ファーストキッス」からかぐやちゃんが出てきたということで、原作を読んで「どういう風にやろうかなー」とすごく楽しみにしながら収録させていただいたんですけど、「確かに人ってこういう部分も少しは持ってるよな」と思いながら演じました。かぐやの中にいろんなかぐやがいて、その中でも今回氷かぐやさんがすごく出てくるんですけど、「人間、生きていたらかぐやちゃんみたいな一面だったり、氷さんみたいな一面だったりというのが、ここまでハッキリとはしなくても少なからずあるな」と。
そういった部分がデフォルメされて色濃く出ているイメージを、中の子たちを演じる時は意識しましたね。このようないろんな一面があるからこそかぐやが形成されている……ということを見せたいと思っていたので、「結構はっきり変えたいな」というのはTVシリーズで最初に出てきた時に決めていました。
でもこんなに氷さんがメインで出てくる回はやったことがなかったので、新しい挑戦だなと思いましたし、この氷さんが核心を突いてくるようなシーンがいっぱいあったりするので……。今までのかぐやじゃなくて、会長と出会ったころのかぐやが今回出てくるのがすごく大事なポイントになっているので、そこをどういう風に表現しようかというところで、今回はすごく氷さんの気持ちをメインにいっぱい考えたなって思いますね。
原作も最初からクリスマス編までを見返したりして、今までかぐやの一部として奥に秘めていた氷さんが、思っていたものをどういう風に表に出すのかな、というところをすごく考えて。その結果、今までのかぐやとアプローチが全然違うものになったので、そういった面でも氷さんの思いをたくさん乗せられたかな……と思っています。
――変化という点では、富田さんが演じるミコも石上への態度にも変化があるように思うのですが、演じる上で変化を付けたことや、特に気を付けたことなどはありましたか？
富田：ミコと石上は、TVアニメ第２期・第３期と割とギスギスするとか、何だかんだ「いいところもあるじゃん」と思えるようなところとかも、今まで出てきていましたよね。
先日「奉心祭 in AKIHABARA」というイベントの１日目に、「芝居から紐解く「かぐや様」」というトークショーを、司会の天津・向さんと石上役の鈴木（崚汰／すずき りょうた）くんと私の３人で出演させていただいたんですけど、その時に改めてお互いの芝居についてすごく真面目にお話をしたんです。で、第３期の最終話のキャンプファイヤーの映像を見せてもらうシーンで、石上は普段と何ら変わりないテンションでミコに接してくるんですけど、私的には普通のテンションで来られたからこそ、石上の声がすごく優しく聞こえたという話をしました。
ミコ的にはまだ恋心ではまったくないんですけど、ちょっと石上も柔らかく接してくるようになってきて、今回の「ファーストキッス」でも「このまま俺たちずっとギスギスしていくのか」みたいなやり取りがあったりするので、少なからずこの２人、進展はしていってるのかな……というところがあると思います。
あと、気を付けていることとしては、私はアニメで自分が演じる分しか原作を読まないようにしていて……。やっぱり風の噂で聞くんですよ、先の展開のことは。でも原作を最後まで読んでしまったら、演技が今のミコの心情とブレてしまいそうだな、と。それが怖いので、「かぐや様」に関しては読まないようにしていますね。
――ありがとうございます。最後に小原さんですが……藤原が第３期までと大きな変化はないように思うのですが、何かこれまでの演技とは変化を付けた点や、収録で今回ならでは、ということがあったりはしましたか？
小原：今回ならでは、ということさえないです！（即答） ただ、変わらないというところが難しくて、声優はみんな役と１人１人向き合ったり、ほかの現場を経験したりしてお芝居が成長するから、どうしても少しずつ変わってしまうんですよね。だけど藤原は「変わってはいけない子」代表みたいなところがあるので、変わらない、変えちゃいけないという難しさを常に感じながら藤原と向き合っています。
特にかぐやと会長の心の距離が変わってることについて、藤原は知らないじゃないですか。石上くんやミコちゃんも後輩としてかわいがってて、第３期で「あれ、石上くん、もしかして好きなのかな」みたいに見守っているところもありますけど、藤原としてはそれを知ったところであまり変わらない。かぐやさんたちのことについて彼女は一切知らない、でも中の人である私は知っている（笑）。それを知らないように演じなきゃいけない、という難しさもあるかなって。
知っている私は「あ、ちょっと寂しい」と思っちゃってて、それを感じつつも藤原としてはバーンと出てきて「みんな何やってるんですか、遊びましょー！」と……。一方で私は知らないふりをずっと続けているので、そこが難しいなと。特に今回の「ファーストキッス」ではそこがメインになってくるので、知らないふりしてクリスマス……正月？（笑）を楽しんじゃうぜーみたいな、ギアをバッと入れたというのはありますね。まあ、変わらないからと言っても、それはそれで難しいところはありますよ、ということですね。
古賀は演じているキャラクターの別人格が多数出てきて大変、富田は多少進展はあるにせよまだ変えないように気を付けている、小原は絶対に変えてはいけないので苦労している……お３方ともに、これまで向き合ってきたキャラクターの演じ方に苦心しているさまを語っていただいた。ファンは公開中の「ファーストキッス」の前に、あるいは直後にTVシリーズを見返して、メインキャストの演技の機微に注目してみるのも面白いかもしれない。
『かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-』
12/17(土)より特別上映中
【配給】
アニプレックス
(C)赤坂アカ／集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会
テキスト／リューヤ
「かぐや様は告らせたい」原作漫画
