イギリスで先日発売され、すでにベストセラーになっているヘンリー王子の回顧録『Spare(スペア)』。
自身のコカイン接種やタリバン兵殺害など衝撃的な内容となっているが、なぜこれほどまで読者を得たのか。そして、なぜこのような一冊を世に出す必要があったのか、気になるイギリス王室の反応とあわせてANNロンドン支局の佐藤裕樹記者に聞いた。
「イギリスでの発売初日の販売数はハードカバー、電子書籍、オーディオブックの合計で40万部。これはイギリスのノンフィクション作品史上、最速の売れ行きです」(以下、佐藤記者)
『Spare』というタイトルに込められた意味、そして40万部という圧倒的な数字の要因はどこにあるのか。
「タイトルの『Spare』にはスペアタイヤと同じように、『ウィリアム皇太子の予備』という意味が込められています。チャールズ国王がヘンリー王子誕生時に、ダイアナ元妃に対して『後継ぎとスペアが生まれて、自分の仕事を終えた』と話した言葉を伝え聞いたことがきっかけとのこと。その衝撃的な内容とイギリスメディアによる連日の報道も影響し『イギリス史上最も早く売れたノンフィクション本』となりました」
では、どのあたりが「衝撃的」なのだろうか。
「この回顧録にはありとあらゆる暴露があり紹介しきれません。まさに暴露本です。例えば、17歳時のコカイン摂取、アフガニスタン戦争従軍時における25人の殺害、メーガン妃との結婚を巡りウィリアム皇太子から受けた暴力。さらには、チャールズ国王にカミラ王妃との再婚をしないようウィリアム皇太子と共に懇願したことなどが赤裸々に綴られています」
たしかに衝撃的な内容であり、読者が手に取った心情にも頷けるが、なぜヘンリー王子はこのタイミングで高いリスクを背負ったのか。
「あくまで推測ですが、『2020年に王室を離脱してからイギリス王室に負担を依頼している警備費を賄うため』という理由も考えられるかと。いっぽうで『真実を発表したい』という想いも強かったのではないかと予想できます」
これほどまでに大きな反響が国内外から起きているなか、イギリス王室の反応も気になるところだ。
「王室は一切コメントをしておらず、沈黙を貫いています。ただ、ヘンリー王子は一連のプロモーションでかつてチャールズ国王と不倫関係にあったカミラ王妃がイメージアップのためにマスコミと結託していたという主張をしています。つまり、カミラ王妃が自身のイメージアップにつながる情報を世に出してもらう代わりに、ヘンリー王子とメーガン妃の情報をリークしていたというのです。真偽は不明ですが、大きな波紋を生んでいます」
イギリス国民はどのように受け止めているのか。
「本は大人気で同情を寄せられるかと思いきや、実際はそうなっていません。今月9日に発表されたヘンリー王子の支持率は前回より7ポイントも下げ26%と過去最低となっています。また、時を同じくしてチャールズ国王、ウィリアム皇太子の好感度も下がっています」
今後注目すべきポイントはどこにあるのか。
「イギリスメディアによると、ヘンリー王子が出版社と今回を含む本4冊を出版する契約で、2000万ドル、日本円にして26億円を手にするという話もあるそうです。今後書籍が出版されるならその内容も気になりますが、いっぽうでメーガン妃による暴露本というのもありえる話です。そして、これらの出版活動が『今年の5月に控えるチャールズ国王の戴冠式にヘンリー王子が出席できるか』を左右する可能性もあります」