新型コロナウイルスをめぐる中国の動きが注目されている。中国政府は1月10日、日本と韓国に対するビザ発給を一時停止した。日本が水際対策を強化したことへの対抗措置とみられる。なお日本政府は、中国人への訪日ビザ発行を続けている。
【映像】「感染したことがないなら帰って」 中国の理髪店で客を追い返す
中国国内では「ゼロコロナ」政策からの大転換により、感染拡大が進んでいるとされる。中国研究家でジャーナリストの高口康太氏は、これまでのコロナ保菌者を社会から追い出すような政策から、「むしろ感染した方がいいくらいの勢い」に方針を逆転させたことで、大混乱が起きてしまったと指摘する。
中国のSNSにあげられた動画では、飲食店で客に感染歴の有無を聞き、店員が「陰性は断っている」と伝える様子や、理髪店を訪れた客が「感染したことがない」と話すと、「感染したことがないなら、うつされないように早く帰って」と追い返される光景が伝えられている。
一方、日本国内では、訪日中国人観光客が日本のかぜ薬や解熱剤を「爆買い」。厚生労働省の要請で、個数制限を始めるドラッグストアも出てきている。東京・渋谷の三千里薬局神南店では、エスエス製薬の「イブ」シリーズなどが品切れになっていた。
「ごく一部の商品を中国や海外の方が、まとめ買いして帰ることが増えた。人気のものから、どんどんなくなっている。今年明けくらいには、もうなくなってしまった。仕入れ自体が、ものによっては、止まってしまっている」(三千里薬局神南店・飯高宗久店長)
薬を買って中国の家族に送るという、中国人留学生に話を聞いた。薬を中国国内で購入できるかが心配で、念のため買うのだという。「最近中国人は、私みたいな人は多いと思う」といい、取材の前にも薬局で中国人が大量に買い求める様子を見たと話す。
なぜ日本の薬を爆買いするのか?元々中国では家の常備薬が不足していたと高口氏は指摘する。「中国ではこれまで風邪薬を飲んで、熱を下げてごまかして出かけることを防ぐために、薬局で解熱剤や風邪薬をあまり売らないようにしていた。そんな中、ゼロコロナをやめてみんなが一気に薬を買ったので、あっという間に品薄になった。そこで、元々評価が高かった日本の薬がターゲットになった」
中でも人気なのが、大正製薬の「パブロンゴールド」。中国では定価の4倍以上となる7000円で転売されている。高口氏は「億単位で仕入れた業者がいたという話もあった」と語る。
混乱が続くなか、中国ではコロナをめぐるデマもはびこっている。「お酢が空間殺菌する」「ニンニクが効く」「コロナを和らげるツボがある」「桃の缶詰がコロナの症状を和らげる」などなど。「コロナにはレモンが効く」とのうわさでは、レモンが1箱3800円から7600円に高騰したという。科学的根拠のないデマは、SARS(重症急性呼吸器症候群)の流行時にも、中国農村部などで広がっていた。
どうしてデマが広がるのか。高口氏は、中国国内で起きている「下痢止め薬」の買い占めを例に出しつつ、その背景を考察する。中国では、新たなコロナ変異株に感染すると下痢になるとのうわさが広がり、当局がデマだと否定しても、なお買い占めが続いている。
科学的根拠のない情報を聞いたとき、「こんなデマが急に出るのはおかしい」となりそうなものだが、中国では「デマが当たり前」なのだという。高口氏によると、以前から新型インフルエンザや福島第一原発事故などで、健康をめぐるデマが広がっていたそうだ。
コロナ禍で中国政府は、強力な情報統制によりデマを封じ込めていたが、ゼロコロナ政策からの転換で「昔の中国が吹き出てきた」。科学への不信感もあり、土着的な迷信を信じる傾向もあるのではないか、と高口氏は解説した。(『ABEMA的ニュースショー』より)
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