新型コロナの感染症法上の位置付けについて、政府が5月8日に2類から5類に引き下げる方針を発表した。
屋内でのマスクは原則不要とする案、行動制限はなくなるなど、世間の意識や習慣も変わることが予想されるが、命を預かる現場はどのように受け止めているのか。特別養護老人ホーム「親愛の丘市川」千野哲孝 施設長に率直な想いを聞いた。
まず、リモートワークが難しい介護の現場におけるこれまでの3年間を聞いた。
「感染対策の一環で、県の補助を受けて全職員が週に1回PCR検査と、週に2回の抗原検査を出勤前に実行しています。陽性者を早い段階で割り出して施設に入れない対策を3年間やってきました。ただ、どれだけ検査をこまめに行ったとしても、施設内に新型コロナを持ち込まないというのは非常に難しかったです」(以下、千野氏)
新型コロナが2類から5類へ引き下げられる方針が発表されるなか、高齢者の多い施設ではこの状況をどう捉えているのか。
「行動制限がなくなっても施設利用者は感染後に亡くなるリスクが高い高齢者の方なので、今まで通りのルールを守らざるを得ないと考えています。また、救急車要請をした際に今までは県や保健所の支援があったこともあり、市川市に限らず千葉県内の入院の受け入れ先を探していただいていましたが、それが今後なくなった際に自分たちや、救急隊の隊長が探すと考えると非常に不安です」
行動制限がなくなれば「エッセンシャルワーカーが濃厚接触者になってしまい出勤できない」ということがなくなり、人手不足の解消につながるとされているが、ここにも厳しい介護の現場の声があった。
「経済を回すことも必要なので国全体の流れ(5類引き下げ)は致し方ないと思いますが、介護施設のようにハイリスクな現場もあります。行動制限がなくなったからといって、これまでの保健所で定めた『クラスターになった際の隔離・待機期間』を短縮するのは、新型コロナの弱毒化や今より良い薬などが出ない限り怖くてできないと思います」
新型コロナが5類になるなかで介護施設が政府に期待することとは。
「治療やワクチンに関しての公費負担を一気になくしてしまうと、接種率の低下や軽症の陽性者が病院に行かず、感染したか不明なまま外出し感染を広げるリスクがあります。今後も受診やワクチン接種がしやすい環境を望むばかりです」