「のどの中に剣山があるような」 秋野暢子さんが約半年ぶりに活動再開 食道がん闘病、放射線治療の激痛でも前を向く“強さ”
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「働き続けたいと思って治療方法を選んだので、今日を迎えられてとても幸せだなって思っています」

 女優の秋野暢子さん(66)が約7カ月ぶりに仕事を再開。テレビ朝日の情報番組『ワイド!スクランブル』のMC・大下容子アナウンサーが話を聞いた。

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 秋野さんのがんが判明したのは去年6月、ステージ3の頸部食道がんなど5つの重複がんだった。

大下アナ:どういう経緯で頸部食道がんという診断に至ったのか、教えていただけますか?
秋野さん:2021年の12月ぐらいから、なんとなくこの辺(のど)が引っかかるな、っていう感じがして。梅干しの種があるような感じ。ただ、(2021年の)11月に人間ドックに行ったり、内視鏡で検査をしたりした時は何もなかった。何だろうな? と思い出したのが最初で、鍼に行ったり、整体に行ったり。それから耳鼻科にも行って、逆流性食道炎かもしれないという判断もあったり、いろんなことを調べたんですけど、わからなくて。段々食べる物が引っかかるようになって、これはやっぱりおかしいなと思って、(2022年6月に)もう一度内視鏡で調べたら、進行性の食道がんだったんです。半年の間に進んじゃったんですね、きっと。

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 人間ドックの翌月から感じ始めた違和感。その理由がわかるまでに半年を要した。

大下アナ:腫瘍マーカーに出るということはないわけですか。
秋野さん:私もびっくりしたんですけど、お医者さまにうかがうと『実は腫瘍マーカーはあるところで判断基準にはなるけど、絶対ではない』と。私はその(出ない)ケースでした。

 1957年、昭和32年に大阪府で生まれた秋野さん。18歳の時にNHKの連続テレビ小説『おはようさん』のヒロインに抜擢された。最近は女優としての活動に加え、健康な生き方をテーマにした本を出版するなど、健康面には人一倍気を遣ってきた。

大下アナ:それ(がんの診断)をお聞きになったときっていうのは、どういう思いでいらっしゃいましたか?
秋野さん:よくテレビドラマとか、自分たちで出てて変な言い方ですけど、『頭が真っ白になって、先生のおっしゃってることがよく聞こえない』みたいな設定ってありますよね。そういうことになるのかなと思っていたんですけど、『これどうやって治すの?』『どうやれば治るんだろう?』という発想にいったので、がんだということで動揺したりとかはなかったんです。

 秋野さんが医師から示された治療法は手術、そして抗がん剤と放射線をセットで行う化学放射線療法の2つ。秋野さんの場合、がんは声帯近くにもあったため、手術をすれば声を失う。一方、化学放射線療法の場合、声帯を残せるが、転移や再発の可能性が手術より高くなる。

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秋野さん:私の場合は当然、しゃべることが仕事です。セリフもそうですし、こうやってインタビューを受けさせていただくのも。しゃべることができなくなるのはとても困るなと思い、先生に『手術は選べないんです。何とか手術をしないで治す方法はありませんか?』とうかがったら、『化学的な放射線治療で、抗がん剤と放射線を使う治療のやり方があるのでどうしますか?』と。この化学放射線治療は効く人と効かない人がいるらしいんです。手術のほうは全部ガサッと悪いところを取っちゃいますから、再発の危険性も少なくなるんですけど。『先生、それにかけてみます』って言って、化学放射線療法を選んだんです。

 そして、去年7月12日から治療が始まった。秋野さんの抗がん剤治療は、24時間投与の点滴が5日間続き、体調の変化を見ながら4セット行われた。

秋野さん:抗がん剤を打つと白血球が減少していき、そうすると(感染症に)感染しやすくなるんです。抗がん剤が終わってしばらくすると白血球がまた上がってきて、そこでまた抗がん剤を始めるんです。落ちてる時に抗がん剤はできないんです。(白血球数が)増えてこない方は次がなかなかできなかったり、ものすごく気持ち悪くなる方もいて、そういう場合は次の抗がん剤ができなかったりするんです。

 そして、もうひとつが放射線治療。秋野さんのがんの上に書かれた十字線は、ここに向けて放射線が照射されるという目印。少しでもずれることは許されないため、顔や上半身を覆う特別なマスクで体を固定するという。

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秋野さん:大体10分くらい機械が動いて、どこに転写(照射)するかっていうのを決めるんです。位置が決まって転写(照射)しますっていうと、1分なんです。(照射中は)何も感じない、痛くもなんともないんですよ。

 放射線治療は1日1回で、合計30回行われる放射線の照射だが、終わりが見え始めた20回目以降に喉に激痛が走った。

秋野さん:放射線を当てているので、火傷するんです。焼いてるわけですよね、中のがんを。こっち(外)から当てているので、のども当然焼けちゃうんです。のどの中に剣山が入っているみたいな感じになるんです。お水飲んでも痛い、みたいな。

 痛みは2日ほど続き、パジャマの襟が首の皮膚にあたるだけでもひどいものだったという。しかし、痛みが引いてからは思わぬことが。

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秋野さん:ある時(皮膚が)ペロッて一部めくれたんです。火傷の痕のようにペロッとめくれたら、そこに綺麗な肌が見えた。『やった! これ、めくれたら綺麗な肌になる』って思ったら、実際、首のしわが減ったんですよ。まあ悪いことばかりじゃないなと思って、これは乗り切ろうと。『いずれこれが取れたら綺麗な首になるんだ』と思って、頑張ろうみたいな。

 強い痛みに襲われても秋野さんは、常に前を向いていた。

大下アナ:秋野さんは抗がん剤・放射線治療の始まる前に髪の毛を剃られましたよね。あれはどういう理由で?
秋野さん:髪の毛が抜けると、枕とか病室とかに散らばったりして。私、髪の毛落ちているとちょっと気になるタイプで『嫌だな』と思ったので、どうせ抜けるんだったらと剃っちゃったんです、自分で。
大下アナ:秋野さんの潔さといいますか、もう秋野さんそのものっていいますか。一番支えになっていたものっていうのはどんなことでしょうか?
秋野さん:本当にたくさんありますけど、私がブログで発表していることにいろんな方がコメントをくださって。『同じ治療をしてます』とか『家族がそうです』とか、同じような気持ちの方たちが励ましてくださったりするコメントをたくさん頂戴しました。『あ、自分だけじゃない』って思いました。それがやっぱり私にはとても励みになりましたね。

 闘病の様子をブログで発信したことで、多くの人の励ましや共感の書き込みがあり、それが支えになったと語る秋野さん。一方、40年来の仲である女優の萬田久子さんは、普段見せる秋野さんの強さを気にかけていた。

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萬田さん:“強い女性”っていうイメージはあるでしょうね。涙なんか見せないっていう感じがありますもんね。でも、病っていうのはかなり人間をもろくするというか、心細くなったことがあると思います。損ですよね、何でもできすぎちゃうんです。隙があるくせに隙がないと思われちゃう。それに応えようとしちゃうんでしょうね、きっと。頑張っている秋野さんをみれば見るほど、私は『そんなに頑張らなくてもいいのに』って。

大下アナ:ちょっと頑張り過ぎるんじゃないかと、隙がないとみんなに思われてるんじゃないかっていうふうにおっしゃってましたけれども。いかがですか?
秋野さん:“大丈夫だ”って思っていくって、すごく大事なような気がしています。病は気からと、そればかりではありませんけど、昔から言われてる言葉だし、そういうこともあるような気がするので。そういうふうに思っていたので、“ここで下手したらダメ、気持ち気待ち。頭持ち上げて”っていう感じでいたことは事実です。くよくよして悔やんで泣いててもがんは良くならないので、だったら笑っていようと。“絶対治る”っていうこの根拠のない過信。これって大事だなって思うんですね。

 秋野さんの強さの理由、それは、闘病生活で自分にできることが限られる中、がんに勝つ確率がわずかでも上がればと自らを奮い立たせていたことの表れだった。

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 がんとの戦いがはじまって4カ月半後、その影はなくなった。

大下アナ:5つのがんが見えなくなったっていうことをお医者さまから言われたときはどんな気持ちでしたか?
秋野さん:抗がん剤効いたんだなと思って。先生も驚いてらっしゃいましたね。
大下アナ:先生からも「普段運動をされていたことがいいように作用したのではないか」というお話があったそうですね。
秋野さん:病というのは、体力がなくなっちゃう、気力がなくなっちゃう、これが一番よくない。『秋野さんはずっと運動してきたから、それがきっとよかったと思います』と。私自身の頑張りも当然あったとは思うんですけど、医療従事者の皆さん、看護師さんもそうですし、本当によくしていただいたので。そこは大きな感謝ですね」

※秋野さんが外科的手術を選ばず化学放射線療法を選んだのは、あくまで秋野さんの選択です。患者さんの年齢や状況を考慮の上、医師と相談し治療法を選んでください。

(ANNニュース)

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