長崎の熱き師弟コンビが、頂点にあと1つだ。8組の師弟により“最強の師弟”を決める超早指し戦「ABEMA師弟トーナメント2022」の本戦トーナメント準決勝第1試合、チーム深浦 対 チーム豊川が1月28日に放送され、フルセットの末にチーム深浦がスコア3-2で勝ち、決勝進出を果たした。前年ベスト4だったチーム深浦は、最終局で佐々木大地七段(27)がチーム豊川・渡辺和史五段(28)との弟子対決に勝利。師匠・深浦康市九段(50)も「弟子がやってくれました」と手放しで褒め称えた。強い心と粘り強さを兼ね備えた2人が、2代目最強師弟の座を狙う。
【映像】決勝への意気込みを語る深浦康市九段・佐々木大地七段の師弟
まさに師弟が助け合っての決勝進出だ。第1局は深浦九段と豊川孝弘七段(55)というベテランの師弟対決に。相居飛車の将棋になると、深浦九段は先手番から得意の雁木を採用すると豊川七段もひるまず、お互いの玉頭から攻め合ったことで、いつ自陣に火の手が上がるかもわからない怖い将棋になった。中盤からペースを握ったのは深浦九段。相手の手厚い将棋に対する警戒心を強めながらも要所を締めて129手で勝ち切った。
続く第2局は変わって、佐々木七段と渡辺五段の弟子対決に。渡辺五段の先手番から相矢倉の将棋になったが、先に佐々木七段が仕掛けたものの、切り返した渡辺五段の玉頭攻めが秀逸。強烈なハードパンチを食らった佐々木七段は粘りを発揮する前に押し切られ、99手で投了した。
改めて第3局からの三番勝負という状況になったところ、第3局では佐々木七段が豊川七段に勝ち、第4局は深浦九段が渡辺五段に負け、決勝進出の行方は弟子同士による最終第5局に委ねられた。
第2局同様、渡辺五段の先手番かつ相矢倉で始まった一局は、両者ともにしっかりと玉を囲う前にお互いを牽制し合うような、一触即発といった展開に。すると渡辺五段の攻めがうまくはまらなかったことをきっかけに、佐々木七段に攻めのターンが到来。渡辺陣に張られていた網を一気に破ることに成功すると、勝機を逃さないとばかりに確実な寄せの手を続けて、ついに決勝への切符を手に入れた。
試合後、深浦九段は「去年は決勝に行けなかったんで、初の決勝で素直にうれしいです」と喜ぶと、佐々木七段も「昨年は準決勝で敗れて苦い思い出があったので、決勝を師匠と戦えてよかったです」と、勝負の最終局を制した安堵感に包まれていた。対局中に気合を入れようと自分の頬を激しく叩き、顔を紅潮させながら戦う深浦九段と、それを見て育った佐々木七段。将棋のことでは厳しいが、盤を離れれば一緒にスポーツを楽し、Twitterを共同運営するほど仲良しでもある。2代目最強師弟となった時に飲み交わす美酒は、やはり2人の地元・長崎の銘酒か。
◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)