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 人気グループ・Hey! Say! JUMPのメンバーであり、ドラマなど俳優としても活躍する中島裕翔。そんな中島が『僕らのごはんは明日で待ってる』以来、6年ぶりに主演を務める映画『#マンホール』が、2023年2月10日(金)より、全国公開される。本作は第73回ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・スペシャル部門に正式招待されることも決定している。

 本作で中島が演じる川村俊介は、勤務先の不動産会社での営業成績はNo.1、上司や同僚の信頼も厚く、さらには社長令嬢との結婚も決まり将来を約束された、超がつくほどのハイスペック男。だが、結婚式前夜のサプライズパーティの帰り道に、酒に酔ってマンホールに落ちてしまう。そんな幸せの絶頂からどん底に転落してしまう男の役に挑む中島に、撮影を振り返ってもらった。

『#マンホール』は「僕の見たこと無い顔がたくさん見られる作品」

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ーー脚本を読んだ感想を教えてください。

中島:タイトルからして「『#マンホール』!?どんな映画だ!?」となり、読んでいくと、どうやらマンホールに落ちて出られないという話で、最終的には衝撃的なラストで…。そのページに関しては戻ってもう一回読み直しました。脚本を読んでいる時点でそれくらい衝撃的でした。テンポがよく読みやすいですし、とにかく色々なことが起こる。1人でずっとマンホールの中というワンシチュエーションで画を持たすことができるかという心配もあったんですけど、ワクワクの方が強かったです。

ーー実際に川村を演じてみていかがでしたか?

中島:最初は普段の自分に近いようなキャラクターだった人が、マンホールに落ちて災難に見舞われ、だんだん人間の本性が出てきてしまう環境になり、その中でかなりのお客さんを裏切るというか…。今までにここまで怖くて暗くて、感情がむき出しになるという役はやってきていないので「こういう毒のある役をやってみたいな」と思っていました。20代最後にこういう役ができて、演技の幅が広がっていく可能性が見えた気がします。とにかく僕の見たこと無い顔がたくさん見られる作品になっています。

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――映画主演は6年ぶりですが、そこに対して期待・不安などありましたか?

中島:それは特に感じなかったです。映画のお話をいただいた時点で嬉しくて、「また映画を撮ることができるんだ」という楽しみ、充実感のある日々を過ごせるワクワクはありました。

――ワクワクが強かったのですね。でも実際演じるのは大変なキャラクターですよね。

中島:そうですね。実感が湧くまでは少し時間がかかりました。「どうやって撮っていくんだろう?」という不安もありました。実際に目の当たりにすると、「こうやって実現していくんだ」と、どこか客観的に思う自分もいたりしました。

ーーほぼ一人芝居だからこそ監督とは他の作品よりたくさんディスカッションしたのでしょうか?

中島:監督はすごく熱い方で、笑顔で無邪気にクレイジーな映画を撮っているという感じで…(笑)、僕はそれについていく感じでした。僕がやった動きに対して、それが効果的に映るようなカット割を監督が考えてくださったりとか。監督自身もこういうジャンル映画は初めてに近いとおっしゃっていたので、お互いチャレンジだったなと思います。シンパシーを感じながら、川村という男がどれくらい疑心暗鬼になるか、嫌な表情をし始めたりするのかという塩梅を二人で話し合いました。嫌な表情、マンホールに落ちたときの体の形、足の痛がり方などは全部監督の言葉によって増幅されていった感じがします。監督はカッパを着て中に入ってくださったんですけど、もうちょっと嫌らしく、ねちっこく、など、とにかく嫌な人間になるようなアドバイスをいただきました。

マンホールのセットでの撮影は「ずっと暗いところで、濡れているし、泥だらけだし、辛かった」

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――暗い穴の中での撮影はどんな気分でしたか?

中島:もちろんいつも通り過ごせるんですけど、陰鬱になりますよね。暗い気持ちになるというか…。この環境に慣れすぎると良くないので、マンホールのセットの気持ち悪さを感じつつ、とにかく脱出してやるんだという強い思いを持てるように、1人の時間には何回もマンホールの穴の上を眺めていました。「こんなに狭いのか、あんなに遠いのか、あの上に地上が待っているんだな」とか考えてセットの力を借りながらやっていました。

――気持ちが滅入ったりすることはありませんでしたか?

中島:ずっと暗いところで、濡れているし、泥だらけだし、辛かったです。だからといって、やりたくないという気持ちにはならなかったです。頑張った分、やりがいがありました。チェックした画を見ても背景がかっこいいし、明かりも綺麗だし、「すごいな、ワンシチュエーションでこんなに魅せることができるんだ」という驚きがあったので、毎回それが楽しかったです。あえて「いやだな」ということを探しておきながら、モチベーションを保っていました。

――特に大変だったシーンはありますか?

中島:大変だったシーンは複数あるんですが、雨ふらしはきつかったですね。一度(そのシーンを)撮ったら、それからずっと濡れているので…。毎日濡れていて、まだまだ寒い時期だったので、寒くて寒くて。帰りにシャワー浴びていけるようにと現場に簡易シャワールームを置いてくださったんです。指とかもふやけちゃって。実際に震えているのもそのまま活かしたりもしました。泡に関しては本当に吸い込んでしまって、苦しかったですね。意外と色々なところがアザだらけになったりもしました。でも、僕はそれで“やった感”を感じるタイプなので、『頑張ってる!』と思えました。

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――共演者とのエピソードなどあれば教えてください

中島:実際にお会いできたのは、最初のシーンで永山(絢斗)さんだけなんです。永山さんには「これから大変そうだね」と見送っていただいた感じです。マンホールのセットの現場に来て声入れのシーンをやったんですけど、あのセットを見てドン引いてました(笑)。倉庫全部真っ暗にしちゃうので…。昼食時間は外に出るんですけど、外に出ると眩しくて眩しくて(笑)。それも大変でした。

もし自分がマンホールに落ちたら…「長い手足を使ってなんとか脱出します(笑)」

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――中島さんがマンホールに落ちる川村の立場だったらどうしますか?

中島:まずは「ごめんなさい、マンホールに落ちて出られないです」と事務所に連絡します。もし繋がらなかったら、この長い手足を使ってなんとか脱出するしかないですね(笑)。冗談ですけど、川村がやっていることは全てやるかもしれないです。

――マンホールに落ちてHey! Say! JUMPメンバーに助けを求めるなら誰に求めますか?

中島:とりあえずグループメールに送ります。一人に送るんじゃなくて、とにかくいろんな人に送ります。それか僕もSNSを使いますね。「中島裕翔です。マンホールに落ちました、見てください」ってライブ配信しますね(笑)。

――川村の生への執着は共感できますか?

中島:どうだろう。僕だったら、変に体力を使わないように、冷静に中に座って待ってるかもしれないですね。食べ物もないし、水も汚いし、腹を壊して脱水症状になるかもしれないし、と考えて、ある意味諦めます。でも川村は頭の回転が早くて、どんな状況になっても必ず攻略するんですよね。皆さんには川村に襲いかかってくる出来事を一つ一つのアトラクションのように、没入感を持って楽しんで見ていただけたら良いなと思います。

2022年は個人としてもグループとしても“幅が広がった1年”だった

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ーーマンホールの中で川村が追い込まれていきますが、中島さんが今まで追い込まれた時期はありましたか?

中島:ジュニアの頃は、すごいペースで振り付けを覚えなきゃいけなくて、ちょっと立ち位置とか出るタイミング間違えたら怒られていたので、追い込まれていたと思います。でもあの期間がなければ、デビューしてからもっと苦労していたと思うので、必要な期間だったとも思います。

――2022年を振り返って、いかがでしたか?

中島:個人としてはお芝居の幅が広がった1年でした。『しずかちゃんとパパ』でやった、すごくヘンテコリンで、でもすごく的を得た、視聴者に刺さることばかり言う“道永圭一くん”という役は結構好きでした。今まではスーツを着たり、“できるサラリーマン”、“好青年”というイメージが強かったので。そこから、『純愛ディソナンス』、『#マンホール』と、どんどん見たことがない顔を見せられたのではと思います。「結婚」というワードが出てくる役がもらえるということが、大人にシフトし始めているんだなと感じます。今、ちょうど若いキャラクターも大人もどちらもできる貴重な時期なのかなと思います。
グループとしては15周年を迎えて、改めてファンのみんなに感謝しています。だんだん規制が緩くなってきて、ようやくコンサートでみんなに会えて楽しめる時期が来たので、しっかりアイドル活動もしつつ、ギャップが出せると思います。グループとしてもSNSの開設だったり、新しいことにチャレンジできた1年だったと思います。“映画×音楽”というテーマでアルバムも出したんですけど、色々なアーティストの方に楽曲を提供いただいて、今までHey! Say! JUMPが挑戦したことのないジャンルの曲に挑戦できたり、ライブのステージも新しいことに挑戦できたので、幅が広がったと思います。グループとして話し合う時間も増えました。2022年は15周年ということでお祝いしていただける年だったので、今後はより感謝を伝えるために、ファンのために常に新しいことにチャレンジしてHey! Say! JUMPが飽きないコンテンツになればいいなと思います。

――Hey! Say! JUMPのメンバーで、誰にこの作品が刺さりそうですか?

中島:この映画だからとかではないんですけど、高木(雄也)くん(※高は正しくは「はしご高」)は僕が出ている舞台やドラマなど作品をチェックしてくれています。山田(涼介)さんも「#マンホール面白そうだね」って言ってくれました。「何か元(原作)があるんでしょ?」と言われたので「いや、オリジナルなんです」と答えました。オリジナル作品というのは一つのやりがいになりました。気になってくれているメンバーは多いので、Hey! Say! JUMPのメンバーもみんなマンホールに落としてみたいです(笑)。

――作品が公開されたらSNSを確認しますか?

中島:皆さんがどう思うかは気になります。あとはネタバレしてないかパトロールしちゃうかも(笑)。誰もが騙されるので、観た人同士で驚いてほしい。「あそこ気づいた!?」って楽しんでもらえたらと思います。

――素敵なお話をどうもありがとうございました!

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『#マンホール』
2023年2月10日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか 全国ロードショー

(c)2023 Gaga Corporation/J Storm Inc.

取材・文:斎藤あやか

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