2023年2月に緊急地震速報が変わる。
これまでの情報に加えて、“長周期地震動”についてもアナウンスされるのだ。
この揺れはどのような性質をもっているのか、我々の行動はどのように変わるのか、テレビ朝日社会部の中尾記者に聞いた。
「大きな地震によって生じる様々な揺れの一つである長周期地震動には
1:揺れの一往復にかかる時間が長く、大きい
2:主に高層ビルが大きく揺らされる
3:震度が小さくても、震源から離れていても大きく揺れることがある
という特徴があり、この危険はこれまでの緊急地震速報ではアナウンスできていませんでした」(以下、中尾記者)
実際どのように揺れるのだろうか?
「東京消防庁の池袋防災館に取材をし、その特殊な揺れを体験してきました。一言でいうと『ゆっくり大きく』揺れます」
恐怖心はどうだったのか。
「瞬間的には東日本大震災の大きな揺れのほうが怖いのですが、長周期地震動は大きく振り子のように振り回されるので、その振動の端までくると、仮にテーブルにもぐってその脚をつかんでいても体がはみ出し、頭を守れなくなるといったリスクがあります。まるで、進んでいる船が突然全速力で逆走するような、それで自分が振り回されるような、普段の生活ではなかなか体験できない揺れを感じました」
小刻みに繰り返される揺れとは全く別物のようだ。
では、具体的に緊急地震速報はどのように変わるのか?
「例えば、東北地方で地震が起きたと想定してみましょう。これまでは岩手県・宮城県では注意を、と報じられ注意喚起されていましたが、そこに震源から離れた東京都、大阪府が加わることがあるのです」
長周期地震動には「震度」のような指標があるのだろうか。
気象庁は、長周期地震動を以下のような4段階の『階級』に分類している。
・階級1 室内でほとんどの人が揺れを感じる
・階級2 物につかまっていないと歩くことが困難。本棚の本が落ちる
・階級3 立っていることが困難。固定していない家具が動く
・階級4 立っていることができず、這わないと動けない。固定していない多くの家具が倒れる」
この我々が十分に認識できていない危機に対して、どのような対策をとられているのだろうか?
「最新のビルは、最新の長周期地震動対策を織り込んで建てられたものも多いですが、築年数が経ったものは制震工事が必要なものもあります。私が取材した恵比寿ガーデンプレイスは東日本大震災の際に天井が落ちたり、エレベーターに不具合が生じたりしたために2022年、屋上に制震装置を設置しました」
後付けでの対策が可能なのだろうか?
「はい。恵比寿ガーデンプレイスの制震装置の場合、仕組みとしてはビルが揺れだすと、上にあるおもりが逆方向に動き、揺れを低減させる、というもの。最大で揺れを半減させることもできるのです」
東京には商業施設以外にもタワーマンションも多いが、高い大きな建物に対策は進んでいるのだろうか。
「まだ十分とは言えませんが、政府と民間が積極的に進めていくことが肝心です」
首都直下型地震や南海トラフ地震など、全国いつどこで大きな地震が起きてもおかしくないなか、私たちはどんな行動をすればいいのだろうか。
「これまでの地震と同じです。基本に則った安全行動をとってください」
つまり、「長周期地震動という揺れ方もあるんだ」という知識を入れつつ、事前の対策として、通常の地震と同じく、家具の固定を進めることなどが重要であり、「非常時にどんなルートで避難して、どんなふうに家族間で連絡を取るか」などといった基本的な防災対策もしっかり立てておく、ということだ。また、高層ビルにはオフィスも多いため、机やコピー機、キャビネットなどが動いてきて、“凶器”になることがある。こうしたものが動かないようにする固定化も大事だ。