日本各地で発生している広域強盗事件にからんで、指示役「ルフィ」とみられる容疑者らが身を置くフィリピンの収容所内で、賄賂が横行していた事に注目が集まっている。世界の汚職や腐敗を調査する国際NGO「トランスペアレンシー・ジャパン」の若林亜紀氏が、日本との違いを説明する。
「日本だと、例えば住民票を取りに行ったり、スピード違反で警察に切符を切られたりした時に、賄賂を求められることはまずない。しかしフィリピンや東南アジア諸国では、いまだに賄賂を求められることが多い。今回のような囚人の場合、看守のような人から求められることもある」(若林氏)
若林氏によると、フィリピンでは賄賂がチップや心づけのような感覚になっており、「日本のような道徳教育がないため、賄賂が悪いと思っておらず、心づけの延長として『もらっていいんだ』と思っている人もいる」という。
世界の賄賂事情は、どうか。「脱北YouTuber」のキム ヨセフさんは、「北朝鮮は全部賄賂で動いていると言っても過言ではない」と評する。
「賄賂なしでは生活できない。北朝鮮ではお酒を個人の家で作るが、そもそも法律では禁止されている。法律の通り罰を与えると数カ月の強制労働だが、賄賂を渡すだけでなかったことになる」(キムさん)
賄賂としてタバコや酒などを渡すほか、北朝鮮では海外製品が貴重なことから、以前は日本のセイコー製の腕時計も高級な賄賂として重宝されていたと、キムさんは説明する。
トルコ在住YouTuberの「アジアねこ散歩ch」さんは、政権交代により近代化した結果、賄賂もなくなってきたとみている。行列のできる観光地で、スタッフが「お金をくれたら裏から通してあげる」と賄賂を求めたニュースを紹介しながら、そうした事案を取り締まる社会になってきたと指摘。加えて、近代化による変化もあるようだ。
「電子マネーの発達で、現金を持ち歩かない。そうした背景から、賄賂が減ってきているのかもしれない。昔から公務員の給料は低く、システムより人間同士の『コネ社会』みたいなところもあり、人間同士の感じでやりくりしてしまう。その中で少額のお金が動いたり、物の受け渡しがあったりする」(アジアねこ散歩chさん)
コロンビア出身の自営業・エミリオさんは、警察の取り締まりを20〜50ドルで見逃してもらったり、刑務所内でも刑務官にお金を渡せば、タバコや携帯電話、テレビも手に入ったりすると話す。
「国はお金を教育に使わないようにしている。教育することで賄賂が悪いことだと、一般人に知られてしまう。会社が国に賄賂を払うことで、税金を安くしてくれたりする。それでお金が流れず、貧富の差は広まっている。昨年大統領が代わり、改革しようとはしているので、望みがないわけではないが、衝突は続いていて安定はしていない」(エミリオさん)
世界各国で取材してきたジャーナリストの山路徹氏(APF通信社代表)は、世界では賄賂が「当たり前」になっている現状を語る。
「100円ライターが一時、非常に人気があった。少額ドル紙幣で10〜20ドルは当たり前。現地の交通事情に慣れてなく、例えばウクライナで昼間に『ライトをつけていない』と警官に止められると、コーディネーターが手続きを省くために『これでおいしいものを食べて。いつもご苦労様』と」(山路氏)
ほかにも、税関で珍しい品をあげると、他の荷物をノーチェックで通してくれるケースなどがあるが、そうした国は総じて「貧しい国」だという。賄賂がないと生きていけない現状から、「断罪できない」ジレンマを抱えながら取材していると、山路氏は語った。(『ABEMA的ニュースショー』より)
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