1票の格差是正のための10増10減を巡り自民党と公明党の選挙区争いが激化している。そもそも10増10減とは何か? なぜ与党同士でモメているのか? テレビ朝日 政治部 平元真太郎記者に聞いた。
――まず、10増10減とは何か?
「投票における『1票の価値に生じた地域差』が根本にあります。前回の衆議院選挙では2倍以上だったことに対し、裁判所はこれを違憲状態としていました。この状態を見直すために選挙区の区割りを変更。5つの都県では10増え、地方を中心に10の県では10減りました。その他にも10の道府県を合わせると140の選挙区が変わります。これによって1票の格差は1.999倍と2倍未満におさまることになります」(以下、平元記者)
――では、なぜ10増10減で自民党と公明党がモメるのか?
「変わる選挙区において『誰を立てるのか』という点でモメているのです。自民党は議員の数が多いため、例えば自民党が議席を独占していた県で4つの選挙区が3つに減った場合には1人溢れてしまうという事態になります。そんななか、連立を組んでいる公明党は選挙区が増える地域に対して『選挙区が欲しい』と自民党に求めているのです。さらに先月、自民党との調整が済む前に区割りに変更があった東京の29区と広島3区に現職を擁立すると突如発表し、自民党は東京都連を中心にこれに対し激怒している状態です」
――なぜ公明党はこのタイミングで東京29区と広島3区で現職を擁立すると発表したのか。
「自民党の幹部に取材をしたところ『公明党に焦りがあるのでは』といいます。というのも、昨年度の参院選の岡山選挙区では自民党の現職が事実上公明党の支援を拒否したうえで圧勝したこともあり、自民党では地方を中心に公明党の選挙協力は不必要ではないかという声があるのです。そうした中で公明党は優先度の高い選挙区を半ば強引におさえにきたという見方です」
――このまま自民党と公明党がモメることによって、次の選挙にどのような影響があるのか。
「今回の公明党の発表を受けて自民党の別の幹部は『その選挙区に自民党の候補を出さないと決めたわけではない。公明党候補を自民党が推薦するとも限らない』と発言しています。つまり、次の衆院選では小選挙区で自民党と公明党それぞれから候補が出馬する可能性もあるのですが、実際には自民党が公明党に譲るのではないかと思います」
――自民党と公明党が緊迫した状態のなか、野党間でもモメている状況なのか。
「選挙区が10減る地方地域は自民党が比較的強い地域が多く、野党にとっては有利に働くともみられています。国会では立憲民主党と維新の会は共闘を続けており自民党は警戒をしていますが、立憲民主党のベテラン議員は『選挙は別だ』と語っています」
――投票をする国民側にとって、この10増10減はどのような影響があるのだろうか。
「今回140の選挙区が変わることで、自分の住んでいる地域の候補者が変わる方もかなり多くなります。選挙ポスターを見ても知らない人が並ぶことで選挙や政治への関心が薄れてしまうのではないかという懸念があるのです」