日本がフィリピンからの送還を求めていた4人の容疑者のうち、今村磨人容疑者(38)と藤田聖也容疑者(38)が7日に移送され、逮捕された。2人は2019年に起きたそれぞれ別の特殊詐欺事件に関与したとされている。残る渡邉優樹容疑者と小島智信容疑者も、8日にも送還される。
4人は全国で相次いでいる強盗事件との関与が疑われており、犯行の指示役とされるルフィを名乗る人物がいるのかも注目される。事件の解明はどこまで進むのか、かつて海賊版漫画サイト「漫画村」事件でフィリピンから強制送還された星野ロミ氏、元刑事と考えた。
容疑者2人は航空機が公海に入ったタイミングで逮捕された。座席は機体後部、3列席の真ん中で、周囲はカーテンに覆われ、捜査員が座席の両端を塞ぐように座っていたという。
星野氏は自身が経験した送還を振り返り、「最後部の窓側に座らされた。他の客と同じで機内食も出てくるし、ドリンクも頼めた。ただ、炭酸水やアルコールはダメだと。コーラを要求したら押し問答になったが、『他のお客様の迷惑になりますよ』と言ったら注文が通った。公海に入る時に後ろの従業員用スペースに呼ばれて、逮捕状を読まれて逮捕。その後に手錠をつけられて席に戻り、炭酸も頼めなくなった」と明かす。
星野氏は捜査員とは会話ができていたというが、元埼玉県警捜査一課警部補の佐々木成三氏によると、機内での会話内容は「証拠」にならないという。「取り調べでの自供ではないので証拠にならない。ただ僕だったらファーストコンタクトとして、容疑者がしゃべるタイプなのか、黙秘するタイプなのかなどを感じておきたい。ロミさんが会話を交わしたということは、信頼関係を作るための時間だったかもしれない」と分析する。
現地で拘束され、強制送還される時はどのような心境だったのか。「フィリピンで過ごしていた時が人生で一番幸せだったので、捕まった瞬間は“ああ…”と絶望的な思いだった」(星野氏)。
また、送還から帰国をめぐる扱いについて、「人権侵害があったと思ってる。入管施設を出て空港に行く時、飛行機が東京・福岡に着く時、そこから警察署や検察庁、裁判所に行く時など、死ぬほど顔を晒される。その時点では推定無罪のはずだし、まともな精神で裁判や取り調べを受けるのは無理だと思う」と訴えた。
フィリピンのレムリヤ法相は、収容所で容疑者が所持していたタブレットや携帯電話など24台を証拠として日本側に引き渡すと明らかにしている。
佐々木氏は「これらの解析は大きいポイント」だとした上で、「移送の報道があってからスマホを押収するまでには時間があり、その間も4人は一緒にいた。抜き打ち検査で押収したというが、実は定期検査みたいなもの。取られるのを知った上で提出しているので、彼らが使っていたものではない可能性もある。自分のものは誰かに渡していたり、お金とともに警察官に渡したり、そういった証拠隠滅もできる環境下にいた」と指摘。
星野氏は自身の移送について、「フィリピンの情報を発信しているメディアが、帰る飛行機の便をばらした。自分も収容所でスマホを見ていたので、“この日に帰るんだ”というのがわかった」と明かす。
さらに、「月一くらいで定期的にガサ入れが来るが、それもお金さえ払えば見逃してもらえたりする。それでも取られてしまう時はあるので仕方ないが、そういう準備はしていたと思う」と説明。お金の入手方法については、「面会日に外の人から持ってきてもらう。また、マネーロンダリングする業者がいて、仮想通貨を送って10%の手数料を払うことで現金を持ってきてもらう手もある」とした。
日本の警察だけでは調査しきれない部分がある今回の事件。佐々木氏は「ここまでフィリピン警察が協力してくれているが、解明に向けて大切なのはフィリピンの収容所の捜査だ。4人が中にいた時の収容者からも話を聞きたいし、収容所の中で撮られた写真を見れば、“この時にこの色のスマホを使っていた”ということがわかる。そういった情報や資料を警察は集めたいはずなので、2人の移送後、日本の警察が現地当局と一緒に収容所に向かうことはあるのではないか」と推測した。(『ABEMA Prime』より)
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